2005年4月2日(土)
 


△▼4/2のゼミ▼△


本 日の作品

ストーリー      3
シナリオ       2

出席者: 男 7   女 4


 本当なら桜の季節なのだが、3月になって寒さがぶり返して開花が遅れている。蕾はほころびかけているが、開花とはいえない。(ウーン、どっかのゼミに似 ているぞ…)。
 3月がお休みだったので、早くから作品が送られてきた。その中で厳選した作品を取り上げることにした。(…ウソ。全部です。遅れたエイプリル・フールで した)
 ともかく作品が多くて時間が足りなかさそうだったが、夜の教室があいていたので、急遽、延長することにした。おかげで、終わりの時間を気にすることなく じっくりと充実したゼミができたと思う。




1.梅田作品「桃花夢幻」(ストーリー)

 久しぶりの登場。以前に大分長いストーリーを提出したが、今度はそのときの意見を踏まえてコンパクトにまとめたものである。非常にすっきりしたが、その 分、細かいいきさつが省略されているので、逆に欠点が見えてしまったようだ。
 タイムスリップで戦国時代に行った少女が、自分そっくりな病弱な姫に出会い、その身代わりとなって他国に嫁ぐ。だが、相手の武将はなんと少女の幼馴染と そっくりだった。さてこの二人の行く手に待ち受けるものは…。
 作者の住む町に「蛇喰(ジャバミ)」という奇妙な名前の神社がある。それがヒントになって構想された戦国ファンタジーである。だがファンタジーを作り出 すには、ディテールのリアリティが必要なのだが、それは足りないようだ。もうすこし戦国時代の歴史を学ぶ必要がある。その上で、もっともっと「コミック」 のもつ破天荒さをとりいれたい。また、人間関係が薄いので、「さち」を膨らませて活躍させるといいのではないか。
 作者のまじめさがよく出ているが、逆に、思い切ってイメージを飛ばすようにしてほしい。


2.野竹作品「シトラスの香り」(ストーリー2稿)

 結婚三年目。幸せな主婦に襲いかかった突然の不幸。夫が殺されたのである。その通夜、夫にもらったと同じ香水をつけていた女が現われた。夫には愛人がい たのか? その香水の秘密を探るうち、妻は夫のとんでもない秘密を知る。なんと「女装癖」。それには仲間があって、それをつなぐのが香水「シトラスの香 り」であった。
 妻は、夫の愛人と誤解した女性となぜか結託することになり、彼女と一緒に夫の仇をうつ。
 夫・哲男を殺した犯人は、女装した哲男に惚れていたライバル会社の男であった。妻の許に戻るという哲男を、誰にも渡したくない独り占めしたいと思い殺し たのである。
 女装癖の男同士の愛憎劇という、この作者独特の世界である。それをつなぐのが香水である。この発想はとてもいい。だが、男同士の奇妙な関係にだまされて しまうところがあって、女の方の描き方が足りないようだ。
 夫の秘密を知らされた妻の思いは? なぜ女二人が結託できるのか?そのところをもう少し深めてほしい。
 ストーリーでの検討はこれくらいにして、シナリオにするのがいいだろう。


3.貫目作品「太郎さんからの手紙」(ストーリー)

 本日唯一の新作。作者の創作エネルギーには感心させられる。一読したみんなから、いいお話だ、あったかい、短編小説の味がある、と賞賛の嵐だったが、K さんだけはそうではない。このよさが分からないという厳しい意見だった。それはなぜだろう?
 家出した少女とホームレスの中年男との交流の話である。
 まずは、ストーリー書き方に忠太郎師からお褒めの言葉があった。今までと違って、作者の独りよがりの思い入れがなく人間関係を中心に語っているので、主 人公の気持ちの流れがよく分かり、どういう物語かが自然に浮かび上がってくる。また少女と太郎の間に、もう一人関西弁のホームレスが入り込んでくる。それ が、ある種の味を生み出している。
 さて、そこでKさんの問題提起である。それは、「少女と太郎が簡単に分かり合えるものか」というものである。確かにこれは大きな問題だ。シリアスなお話 だったら、それでは甘すぎる。作者の願望はわかるが現実にはありえない話である。では、どうやってリアリティを持たせるか。Kさんの人間観はなかなか厳し いものがある。だが、そういう人間の厳しさがちゃんと描かれてこそファンタジーが成立するのだと考えると、Kさんの意見は的を得ている。
 作者は、いいお話にしようとしすぎているのかもしれない。そのあたりをもう一度考えることは大事なことである。その意味で、少女はもっと低年齢で 11〜15歳くらい(小学校高学年か中学2年生)が適切ではないかという意見は、傾聴すべきだろう。


4.松原作品「プロポーズ」(シナリオ)

 これまた、賞賛の嵐だった。
 都会で挫折した青年が恋人を連れて田舎に帰る。青年は母親の仕事が何かなかなか言い出せない。というより、なかなか母親に会わせられない。母親は浜名湖 の湖畔のひなびた町のヌード劇場主だった。それだけではない。彼女もまた現役のダンサーだった。そこで青年の恋人を巻き込んでの大騒動が始まる。その渦を くぐりぬけて、二人はめでたく結ばれるのだった…。
 ともかくテンポがいい。展開に引っかかるところがない。うまいのである。作者の持ち味である「ほのぼの」「しみじみ」があふれ出ている。
 優柔不断の青年に愛想を尽かして東京に戻ろうと決心した恋人だったが、思わぬことから舞台に立つ羽目になる。もちろん最初はいやいやだったのだが、舞台 中央に立って観客の視線を集め大歓声を浴びると、不思議不思議、彼女の中に微妙な化学反応が起こる。その不思議な歓びを押し隠し、あくまで青年へのあてつ けと自分をごまかして舞台に立つ。そして、彼に向かって「ドーヨ!」と突きつける。
 百戦錬磨の母親と、人生の辛苦を味わいつくし陰ながら彼女を慕い続ける老照明マンと、人生の苦難の真っ只中にある踊子たち。人生いろいろ、そのかもし出 す世界がとてもいい。
 だが、と、落ち着いて読み直す。果たしてこれで映像化するのに十分だろうか? ちょっと上滑りしているようでもある。ここに読み物とシナリオの違いが浮 かび上がってくる。忠太郎師のいうように、ただストーリーを移し変えるのではなく、人生を深める「シナリオ」を期待したい。


5.高橋作品「湖畔のカフェ」(シナリオ)

 前回も時間切れで十分に検討できなかったのだが、今回も順番がうまくなく、肝心の作者が時間切れになって早退したので検討できなかった。時間がないこと がわかっていれば先にやったのに申し訳なかった。
 作者本人がいなくなったので、シナリオを持ち帰り、あとで作者に意見を書き送るということにした。
 前に指摘された点はシナリオになっても解決はされていない。脇の人物によって過去が語られる。確かに状況は分かるのだが、それだけでは青年と少女の間に 育まれるものがない。状況説明はドラマではない。他人に語らせるのは楽だが、それでは他人に分からないことは描けない。主人公の内部にどうやって入ってい くか、主人公の内実をどうやって明らかにするか。ドラマの基本はそこにある。
 いたずらにストーリーを運ぶことだけを考えずに、少女はどういう人間なのか、青年はどういう人間なのか、きちんと考えることが必要だと思う。


 このほか、Uさんの新作シナリオがあった。これは内なる創造の思いに衝きあげられて一気に書き上げ た作品である。これまでのゼミでやったものではないの で、まずは両講師が預ることにした。



 時間を延長して6時半過ぎまでやったので、充実はしていたがかなりのエネルギーも消耗した。そこでアフター・ゼミはいつものサテンを飛ばしていきなり 「天狗」へ向かった。
 みんな久しぶりのゼミだったせいか、ちょっと高揚しているようで、大いに食いかつ飲んだ。アシモフは一足お先に帰ったので、その後のみんながどんな風に 楽しんだのかは、知る由もない。





次回は、2005年4月16日 (土)


東京芸術劇場5F/NO4会議室
時間は、いつものように、13:30〜17:00

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今までにみんなの書いたシナリオのリス トを整理してありますので、
それもご覧ください。

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