2005年1月15日(土)
 


△▼1/15のゼミ▼△


本 日のテーマ
・自由課題

ストーリー      4


出席者: 男 6   女 4


 スマトラ沖地震とその後のインド洋の大津波は本当にすごい。長い歴史のなかでは、こういうことが過去にもあったのだろう。きっと、それがノアの箱舟伝説 のもとになったのかもしれない。火山の爆発とは違って、単なる水なのに、ものすごいパワーだ。水の力をこれほど見せ付けられたのは初めてだ。
 さて、それに比べて、人間の営みは小さいものだが、しかし、その営みをあなどってはいけない。その営みを豊かにするために、ドラマがあるのだから。

 …というわけで、アシモフの更なる発展を祈って、本年最初のゼミである。新年早々の新人の加入もあって、総勢20人になった。教室に入りきれないのでは ないかと心配したが、どういうわけか、座席数ぴったりであった。
 提出作品は5作品。いずれもストーリーである。だが全部はやれないので、残念ながら貫目作品は次回まわしになってしまった。許されよ。

(事情があってアシモフは初めの2作品の時にはいられなかったので、ゼミのやり取りはクモさんに協力してもらった。ただし、評の部分はシモフの考えなので 誤解のないように)




1.神山作品「みずうみ」

 作者は水が好きである。最初の作品は海が重要な舞台だったし、この間はイルカ研究所がでたた。珍しく前作は、陸上だったからうまくいかなかったのかもし れない(?)。
こんどのも、題名だけが水っぽいが、中身は違う。水の力を信じていなかったか?
 斜面に建てられていて高校というのは面白い。だが校庭が地下にあるというだけで、湖の底にあるわけではない。とすると、はたして傑作になりうるか?作者 は、湖の畔にある学校の話にしたかったそうだが…。
 夫の転勤がきっかけで妻の故郷の母校を訪れる。妻は、夫を車に残して、校舎に入り、昔いた美術部の部室を覗く。そして、そこで会ったのは…。
 いわば、「千と千尋の神隠し」のしかけである。ふと迷い込んだ異次元空間で類まれな体験をする。だが、「千と…」は夢ではなかった。夢でなく異空間を往 復したというのがおもしろかった(実は、あの映画はあまり好きではないけど)。これも妻の夢にしないで創れないだろうかと思った。眠ってしまうのではあま りにも芸がない。
 妻の心の中に長年わだかまっていたものが、思いもかけずに明らかになる。おとなしかった友人Kとの間に何があったのか…。そのことが、彼女の生き方にゆ がみを与えていたのかもしれない。
 いまでは生活に疲れた普通の妻になっているが、彼女にも情熱に胸を焦がした時があった…。その秘密は、しかし、これからも決して夫には明かすことなく生 きていくのだろう。それは、女の持つ本質的な怖さか。あたしの本当の気持ちはあなたには分からないのよ、というラストの妻の冷ややかな視線が怖い。
 「夫婦の関係をもっと観たい」という意見があった。
  しかし、ラストはなかなか鋭い。書きっぷりも実にシャープである。短編の心地よい切れ味がある。いつもながら、ストーリーには引かれる。どんな傑作が生ま れるのかと期待される。


2.小俣作品「人生は甘辛い」

 いかにも皮肉の聞いた題名である。女優を目指す女が引き起こす騒動。
 映画界という業界を扱ったもので、引用されている映画「イブの総て」がドラマのキーワードであろう。
   女優を目指している女が付け人としてついた清純派女優は、主役を演じた映画の相手役と不倫に陥ってしまう。その秘密を知った彼女は、自分を売り出すチャン スとばかり画策するが、結局うまくいかず、女優にはなれない。「イブの総て」のようにはうまくいかないのだった…。
 マネージャーや男優の妻で元女優だった女が出てくるが、それがドラマを面白くしているというよりは煩雑にしているのではないか。女優志願の付き人と元女 優が結託していく話かとも思ったのだが、そうはなっていない。中心軸がしっかりしていないようだ。忠太郎師のいうように、こういうバックグラウンドものを 外部の人間は描くのはとても難しいだろう。人間関係に優先順位をつけてリライトした方がいいだろう、という師の言葉をよく考えよう。
 それに、ラストになって突然、「北村龍平」という実在の人物がでてくるのはどういう意味なのだろうか。
 「この話に出てくる人たちは二流の人たちばかりです。二流ならではの切なさを描きたい」と作者はいうが、それにしては、人生の機微というようなものが 迫ってこないのは、作者が登場人物を高みから見ていてコマを動かすように動かしているからではないか。素材としては、決して新鮮なものではないので、それ ぞれの人間をしっかり書き込む必要があろう。そして、作者が一番惚れているのは誰なのかをはっきりさせたい。作者の思いとは違ってないものねだりかもしれ ないが、しかし、ドラマが観客をひきつける力はそこにあるのではなかろうか。


3.岡作品「ナンギな奴」

 大阪ローカル性を生かした話。前作「リチギな奴」と同じ主人公で、その後というか、別バージョンというか。作者が愛するキャラクターや作品の続編を作っ てみたいな、と思った者もいたようで、おおむね好評だった。
 この男がなぜか宮沢賢治フリークというのが実にいい。偽札とブランド・バッグという小道具がきいている。
 ドラマが時間を区切って進行していくというスタイルは面白い。スピード感があると好評だった。
 借金を背負った中年男が、大金の入ったカバンを手にしたことからはじまるドタバタである。それは、ダンサー志望の主婦のカバンと取り違えられて…。それ に生意気な少年が絡んで、という具合に登場人物は揃っている。
 だが、せっかく面白くなっているのに、ディテールがご都合主義なのが残念である。
 忠太郎師のいうように、カラクリ話は何よりディテールがしっかりしていることが大事なのである。それがいい加減だと、一気に冷めてしまう。小さくまとめ てしまわないで、しっかりとしたものにしてほしい。
 しかし、全体に、作者の目指している人間像がとても「いい人」に思えるという感想もあった。ディテールをつめて書き直すといいのではないか。


4  高橋作品「天国から愛を込めて」

 新人である。独学でやってきたにしてはしっかりしている。芝居が好きでたくさん見ているというせいであろうか。
   交通事故で亡くなった妻が、一ヶ月だけ現世に戻れるという特権を得て、夫のもとに戻る。だが、夫にはその姿は見えない。夫は若い女性が面倒を見ている。早 くも愛人か!と妻は逆上するが、それは愛人ではなく仕事の手伝いをしてもっらているだけなのだ。そして、あるきっかけで妻の姿は女にだけは見えるようにな る。
 それに、夫の仕事が絡んできて会社の手柄争いも絡んで複雑になる。しかも、三人の人間に、アダルトチルドレンとか心的外傷後ストレス傷害などむつかしい 要素を持たせている。だが、こういうカセは必ずしも有効ではない。
 生者と死者が共存してドラマが生まれるファンタスティックな話は好きな者は多いが、亡くなった妻への夫の思い、というより、作者の思いが弱いのでファン タスティックになりきれていない。死んでも死に切れないという妻の強い愛情がベースになっていないと、説得力が薄れる。夫であり妻である男と女の間には、 どんな感情が流れるのか、どんな愛憎が行き来するのかを深く考える必要があろう。そういう意味で、普通の健康な男女の話でいいのではないかという蜘蛛さん の意見に賛成だ。
 せっかく許されて天国から夫のもとに戻った妻が、女性には見えるが夫には見えないという設定でいいのかどうか?
 これはセオリーをはずしているのだが、それがプラスというよりもドラマの進行を妨げている。また、幼少期の虐待の後遺症が残ってい
るという重要な要素を妻ではなく、女に与えているのはどうだろうか。せっかくの設定がいかされないのでは?
 妻と夫とその愛人という、単純だがドラマの基本である三人の男と女の関係を、焦点をそらさずに考え直してみよう。




 アフターゼミは、いつものように5Fの喫茶店。珍しく全員が顔をそろえた。新人Tくんはすぐにみんなと馴染んだようである。じっくりと話し込んでいた。 冷たい雨が降り続いていたので、新年会とはならずに終わった。この中から続々とデ ビューしてくれることを祈って、散会した。
 




次回は、2005年1月29日 (土)

東京芸術劇場5F/NO4会議室
時間は、13:30〜17:00

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