〇自由課題(ストーリー)
1 山室作品「無力のチカラ」
初めてのホームドラマだねと、忠太郎師。高校の英語教師の一家。4人家族の普通の家庭だったはずが、娘がAVビデオに出演していたことが発覚してから、家族の崩壊が始まる。妻も息子娘も、それぞれの生き方をし始める。幸せの価値観の違う家族。父親の教師はみんなに排撃されるが反撃もできず、ただただ無力である。だが、あるとき、教師の人生は急展開する。なんと10年前に愛し合ったことのある教え子と再会、幸せになるのだ。無力の勝利というべきか。
ラストが新しいようでもあり、妻と娘が結託するところに意味をもたせようとしているようだが、だが、ストーリーとしては、それほど目新しいものでもない。こういう場合は、登場人物一人一人がくっきりと描かれる必要がある。そうでないと、凡百のドラマを超えるものがない。
父親が成り行きに任せるのではなく、一度は関係修復に挑戦すべきではないかというパルプくんの意見は説得力がある。
作者は、喜劇仕立てで創るつもりのようだというが、果たしてそれでいいのだろうか。そういう風にはずすのではなく、正面からぶつかるようなドラマを期待したい。力があるのだから、軽くより重くを目指してほしい。決して無い物ねだりとは思わないのだが…。
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2 高野作品「〜EQ(心の知能指数)〜」
(少年篇・頭脳)(少女篇・感情)
ストーリーというよりは、モティーフという段階である。これから考えようとする物語の意味と意図を、思いのままに綴っている。
「イルカに育てられた少年」と「家族に捨てられた少女」の2篇。
少年篇は、5歳までイルかに育てられ、イルかの知能と感受性をもっている少年と彼を導こうとする教授との交流。だが、それは穏やかなものではない。少年を守るため<組織>との危険な戦いがはじまる。そのことを通して、「人の知恵」とは何だったのかを考えたいというのである。
少女篇の方は、「人の中枢にある想いを読み取ることのできる少女」のドラマである。両親の心を読み取った少女の絶望のドラマが始まる。少女には、幼いころの忌まわしい思い出がある。それが原罪となっていて、両親との関係が断絶したのだ。だが、イルカの研究施設にいる大学生と知り合い、イルカと心を通わせるようになる。
前回の「マシンガン」もそうだったが、作者は一貫して理想の人間関係を求めている。人は、他人とどう関われるのかを、しっかり考えようとしている。その姿勢は貴重だ。だが、問題はここからである。設定した状況の中で、どういう物語を紡ぎだすのだろうか。今後が楽しみである。
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3 城ノ口作品「0.04mm」
これは、残念ながら時間がなく、後日回しとなった。だが、次回は作者は出席できないので、各自読んでおくこととし、プリントを配った。この作者らしいウィットとユーモアにとんだ作品で楽しいが、声を出して読まれたくないという作者の気持ちもよく分かる。内容紹介は、ゼミでやってからのお楽しみ。
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