○自由課題(ストーリー)
1 城ノ口作品「2LDK美術館」
とても文章がうまい。これだけで十分楽しめる。
インターネットで見つけた絵の虜になった男。会社を休み、絵の具の幻臭に導かれて“美術館”を訪ねる。そこは立ち並ぶ団地の一室で、2LDKの変哲もない部屋。長い髪の若い女が一人いるだけだった。生まれてから一度も日を浴びたことがないだろう透き通るような白さ。画家の娘であった。“美術館”のお客は一人と限定されている。絵を見ているうちに、男はいつしか眠りにおちてしまう。その日以来、彼は“美術館”に通いつめる。その家には「開かずの間」があり、大きな南京錠がかけてある。そこでは、何が行われていたのか。男は、画家の秘密を知る。画家夫妻は車ごと湖に落ちて死んだ。まだ遺体はあがっていないという。HPのオーナーと出会う。オーナーもまたあの絵に魅せられた人間である。ある日、オーナーは常軌を逸した面持ちでやってきて、画家に会わせろと、狂ったように「開かずの間」に突進した。そこで見たものは…。
いろいろな要素がつまっているが、ミステリアスにしようとして、文章のレトリックに溺れている。シナリオは読むだけものではなく、具体的に映像で描かれなければならないものなのだから、レトリックで遊ばずに、具体的な人間の行動を浮き上がらせてみたらどうか。そうすればもっと人間関係がクリアに見えるはずだし、ドラマが動き出すだろう。過去の名画「血とバラ」や「しとやかな獣」を参考にしたらという、忠太郎師の示唆を生かしてほしい。
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2 小沼作品「直下型恐竜女」
田舎を飛び出して長距離バスで上京してきた女。だが都会生活にもなじめない。ある日、偶然にピストルを手に入れる。だからといって開放はされない。そして男と知り合う。女は男を愛するが、男は女の気持ちを利用するだけ。隣室の女と親しくなる。男のもとに、元彼女とチンピラが脅しにくる。その額は半端じゃない。男が忽然と姿を消す。不安にかられる女に電話。男を助けたいなら金を持って来い。女はパニックになるが、心の奥底の凶暴性が目覚め、恐竜女へと覚醒する。女は指定された場所に赴き、チンピラと元彼女をピストルでぶち抜き、男を助ける。以来、男は女におびえるようになる。そして、新たな事態が…。
いつもの小沼節が横溢した世界だが、主人公が女というのは数少ない。それだけに楽しみだ。だが、身代金の額があまりにも高額すぎて、ドラマのリアリティを無くしてしまっているのが惜しい。自分の作るドラマに斜めでいたいという思いがあるのではないか、という忠太郎師の指摘を忘れてはならない。
一種のおとぎばなしであるゆえに、その要素は一つ一つ具体的で説得力あるものになっていないといけない。日常世界から飛躍するためにこそ、それが一番大事なことなのである。
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アフターゼミの「ロジエ」で、忠太郎師から重大発表がある。桐杏学園が3月一杯でなくなるというのだ。しかも、2月の第1週は予約で一杯。学園側は、できるだけ早くほかに移ってほしいといっているそうだ。来年のこととはいえ、急いで教室探しをしなければならない。現在の受講生は、横浜市が3人、千葉県が2人、埼玉が1人。あとは東京だが、諸条件をクリアする教室がみつかるかどうか、不安が広がる。
そして、後日談。2月からの教室は、池袋の「東京芸術劇場」に決まった。恵比寿を引き払うことには深い感慨があるが、やむを得ない。心機一転、新たな歩みを始めよう。
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