○自由課題(ストーリー)
1 楢崎作品「レット・ミー・トライ・アゲイン」第3稿
アメリカ育ちの青年ジャーナリストが、日本の精神科の女医を取材に来る。実は、彼女は青年の生みの親である。女医はやり手で世界にその名をとどろかせている。だがその娘は母親に反抗してインターネットで女医の病院を告発している。母娘の葛藤に実の息子がからむ複雑な人間関係。
だが、この物語のキイは<対人恐怖症>である。青年もそうだし、少女もその一種の<醜貌恐怖症>にかかっている。こういう視点は楢崎作品の特異なところである。
だが、この医学がらみの母娘の葛藤と、生みの母と息子の出会いという<瞼の母>的な話と、異父兄妹の愛という3本立ての話は、複雑過ぎるかもしれない。そして、その複雑な人間関係を整理しようとするあまり、逆に謎がなくなってしまっている。面白くなる話だけに、ひとつドカンというものが必要だろう。
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2 野竹作品「虚言癖の女」改訂版
6月から完全復帰という作者は、前回に続いての連続登板。リッキーくんは夫に預けて意欲満々。
新人刑事が出会った事件は、不倫の男女の心中事件だった。男は死に女が生き残る。女は男の妻との離婚話が進まず心中を持ちかけられたと証言する。だが男の妻の話では、夫婦仲は良く、愛人の女はストーカーだったという。
本当に心中だったのか。はたまた男の妻の言うことは本当なのか。新人刑事は、二人の女の証言のどちらを信じたらいいのか悩む。果たしてどちらの女がウソをついているのか?
これからが面白くなるところだが、この先どう進めていいのか悩んでいるという作者に、いろいろな角度からアドバイスする。狂言回しの新人刑事の成長物語でもあるわけで、その方に気をとられると、二人の女の中に深く入って行けなくなる。それが難しいところだ。
たいていはヒョンなことから真実が暴かれ、新人は一人前の刑事になるというのが常道だが、その「ヒョンなこと」をみつけるのがやっかいなのである。
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〇特別講義
神崎史土「『復活師』について」
さて、いよいよ本日のメインイベント、神崎氏の登場である。氏は集英社のマンガ原作賞に入選して、「ハイ・ライフ」(講談社)というスノーボートの世界を描いた作品でデビューした。以来、スポーツものを得意としているのだが、今度は医学もの大作に挑み、堂々「マガジン・スペシャル」6月号の巻頭を飾った。
カナダに行ったときに「レザレクション」という言葉を知り、それに天啓を得て、「復活師」を考えた。医学ものは資料代が大変。手塚治虫の「ブラックジャック」を意識したという。第1回は、膝の靭帯を切ったサッカー選手を3ヵ月後のワールドカップまでに<復活>させるという物語である。
まず作品をみんなで回覧し、シナリオと設定の資料が配られ、作品作成のプロセスと苦労が語られた。マンガと映像のシナリオの違いについて経験に即したことや、関心の高いギャラについて、また編集部の好みとか、プロならではの微妙な内幕が話され、あっと言う間の1時間半だった。これからも時々は、ゲストを呼ぶことも考えよう。
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終って、いつもの「ロジエ」タイム。ゼミでは聞き足りなかった神崎氏の話を中心に話がはずんだ。また、日テレにギリギリで応募したというK君の達成感のある顔付きが爽やかだった。
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