○自由課題(ストーリー)
1 こはま作品「色あせた写真(仮)」
こはまくんも久々の登場である。満を持しての作品は、果たして…。
憧れの大学に入った一気(カズキ)は、新歓コンパでビールの一気飲みを強制され、先輩にビールを浴びせて飛び出してしまう。実は15歳違う兄(さとし)が一気飲みで急性アルコール中毒で亡くなっていたのである。以来、一気飲み絶対反対の誓いをたてていた。
兄には4人の友人がいた。(3人の男と1人の女)。アウトドアサークルの仲間である。大学を出て10数年、みんな人生の曲がり角に差しかかっている。4人は久しぶりにさとしの墓に参り、辛い日々を告白、あのころを懐かしむ。
そこに一気も現われる。友人たちは、一番いい時代をちゃんと生きろと励ます。一気も、元気を取り戻す。
作者はもちろんシリアスだと思っているが、喜劇で考えたらどうかという意見が出た。<一気飲みで死ぬ>というのは家族にとっては悲劇でも他人にとっては必ずしもそうではない。<死>というものの重さを考えれば、ドラマにとって、その原因は大事である。どういうドラマになるかが決まると思う。
ありえないシチュエーションだから作者の純粋さが浮かび上がって来て好きだという支持派もいたが、もう一度じっくりと発酵させてほしい。
それから、過剰にセリフを交じえるストーリーはよくない。きちんとドラマを組み立てるためにも、ストーリーとしての密度を深めることが大事であろう。
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2 野原作品「キングダム」
名門高校野球部の寮が放火される。その犯人と目され山に逃げ込んだ2人の少年と、渓流釣りに来て仲間とはぐれたOLとの奇妙な交流。
少年は、名門野球部という王国を崩壊させたいと決起し、再び放火する。一年後、少年刑務所を出た少年は、なぜか砂漠のハイウエイを走るバスに乗っている。
アイディアはとても魅力的だが、最初の発想に止まっているので、少年の思いをもっと突き詰めてみよう。また、OLの人物像もまだ出来ていない。だから、だれが主人公なのかはっきりしないところがある。
この設定だと、年上の女性への憧れや恋も生まれたりして、野球部(王国)への反抗というだけではないう潤いのある物語が展開しそうなのだが…。
OLが山中において行かれるのは男の中の「テストステロ」物質のせいで、その他、いろいろ心理学的に楽しめる作品だというKさん特有の分析が面白かった。
しかし、これもセリフのあるシナリオめいた部分が多く、かえってイメージを貧弱にしている。これは一種の判断停止で、安易すぎる。
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○自由課題(ショートシナリオ)
1 野竹作品「終着駅」
終着駅が始発駅になるローカル線の駅。夢に破れて田舎に帰って来た女と、夢を追って都会に出ようとする少女の二人が出会って…。
発想は必ずしも新しくはない。だが、到着した列車が始発として発車するまでの短い間に二人の人生があらわになるという濃密な時間(ドラマ)が過ぎるので入りやすいという意見があって、好感をもって迎えられた。
とはいえ、女の夢も少女の夢もいささか古さを感じさせるという感想もあたっている。
列車の中だけという舞台劇の雰囲気は悪くはないのだが、外にでる工夫もほしい。それは二人の人生を語る語り方で表現出来るのではないかという意見が説得的であった。
しかし、リッキーくんのめんどうをみながらの創作は素晴らしい。
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提出作品はもう一つ楢崎作品があったのだが、時間切れで次回に回すことになった。
長編シナリオは、コンクールの締め切りが迫っているので、「ロジエ」でのアフターゼミとなった。ここでは、外野さん「絵の具の匂い」の新しいストーリーの提出もあったが、迷い過ぎているので一番最初のストーリーラインに戻すようアドバイス。本人もようやく納得したようなので、今後に期待したい。。
次回も忠太郎師が仕事なので、特別講師として神崎史土氏にご登場願うことにした。
神崎氏はWゼミの先輩で、講談社マンガ原作賞に入選して新進のマンガ原作者として活躍中である。その創作の秘密を語ってくれるので、楽しみにしていてください。
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