○自由課題(ストーリー)
1 小沼作品「バカな町とストレンジャー」
婚約がパーになったOLが旅に出て、とある海辺の町で降りて、崖から飛びこむ。が、若い兄弟に助けられてしまう。
そこは何もない退屈な町。住人も変なやつばかり。その人間関係に巻き込まれて追っかけあっているうちに、過去がふっ切れ、「少しいい女になって東京に戻って行く」。
発想はいい。出てくる者も作者の鬱屈した思いを体現している人物ばかりで、興味を引かれる。無職の青年、不登校の少年、スナックのママ、警察官、喫茶店のウェイトレス、脳に障害のある女、食い逃げする小学生等々、登場人物は多彩である。どこか寺山修司の世界を彷彿とさせるところもあるが、未整理という感じの方が強い。
人物の比重・濃淡でドラマが決まる、という忠太郎師の言葉を胸に、もう少し考えてみよう。
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2 野竹作品「始末屋」
「いわゆる専業主婦」が、閉塞感からの脱出を図ろうとアルバイトを始める。それが、「始末屋」。
依頼者の要求に応えて何でも始末する。そのことに今までにない快感を覚えるようになる。しだいに彼女の快感はエスカレートして行き、遂には最高・最大の「始末」を…。
「始末屋」の社長が最初に「人の始末」を口にしてしまうのはどうか。主婦の欲求がしだいにエスカレートしていくというのが、オーソドックスな展開ではないか。女がどこまで非情になれるかというのがテーマだとすると、心理劇だから、じっくりと落ち着いて進めるのがよいと思う。
リアリズムではなく喜劇タッチでやるべきか、という意見もあったが、現実の世界で殺し屋を雇っての夫殺し事件が頻発している以上、十分にシリアスで行けると思う。(ただし、好き嫌いは別)
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〇課題「絵」(ストーリー)
1 黒田作品「ある理想郷」(仮題)
久々の長編。以前に出した課題「絵」に応えた作品である。
ある画廊の主が今は亡き天才画家の絵を未亡人から預かる。それはブリューゲルのような絵だったが…。
これだけでは何の変哲もないのだが、そこはそれ短編の名手。ちゃんと仕掛けが施されている。
画家と未亡人は、74才も年が離れている。それはいかに未亡人が若く、魅力的・蠱惑的かを思わせる。画廊主と画家は長い付き合いなので、未亡人が画家のもとに来たときから良く知っている。というより、そのときから密かに愛していた。だから、画家に頼まれていた夫人の肖像画を売らずに、隠し持っている。そこに預かったブリューゲル風の絵を並べて置いておくと…。
この絵にどんな秘密があったのかは大切なことなので、ここでは伏せておこう。だが、とても想像力をかきたられる。エピソード、人物、構成を膨らませて、ちょっと怖いけど楽しい、というような世界を創り上げたい。
これは、外野作品「絵の具の匂い」に触発されてできたものだという。こういうように、お互いが響き合って新しい作品が生れてくるというのはうれしい。
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アフターゼミは、恒例の「ロジエ」。久しぶりのTさんと見学のSくんも交えて、話が弾む。
また、Kくんからは、前にゼミでやった「ポンコツな時間」のシナリオ第1稿の提出があった。5月末の日本テレビのコンクールを目指す意気込みである。これは、ゼミではなく個別的にやることにした。しかしこうやってゼミでの検討作品がシナリオ化されていくのは、これまたうれしいかぎりだ。
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