ハンドメードパイプの楽しみ 
P
art 6

マウスピースの製作

マウスピースの製作法の掲載希望が有りましたが、旋盤使用など
専門的になるので、今までUPしないで居ました.
最近、自作する方がかなり多くなった様なので参考になるだろうと
UPする事にしました。

マウスピースはパイプにとって欠かせない大事なパーツです、
ダボの精度が悪ければ、すぐにゆるゆるになり、咥えているパイプ
の本体が抜け落ちてしまう様になります。
煙道の構造が悪いと、たばこが辛くなり舌も荒れ、折角のパイプが
宝の持ち腐れと云う事も良く見かけます.
形もほんのちょっとした事でパイプ全体のバランスが変わり、
そのパイプへの愛着も大きく違ってきます。
ビットの厚さ形状、材質による口当たりなどもたばこの喫味に
大きく影響します。
この様な重要なマウスピースだからこそ、その出来の良否が
ハンドメードパイプの良さを表現出来る大事なポイントとなります。


    マウスピースの材料

マウスピースの材質はエボナイトが主で、まれにアクリル樹脂が使われます、
エボナイトは天然ゴムが原料で万年筆の軸、ボーリングのボールなどに使われます、
ハンドカット時の加工性が良く、僅かな弾力性が咥えた時の噛み心地を良くしています、
加熱により曲げ加工も容易で、磨くととても深みの有る艶がでます。
欠点は時間とともに茶色く変色する事、強く噛むと噛み傷が出来る事ですが
変色は磨き直すと100年経った物でも元の艶を取り戻します。
アクリル樹脂は近頃、マシンメードに多く採用されていますが、放置しても変色せず、噛み傷
も付き憎いのですが、歯当たりがコチンとしてエボナイトに一歩譲る気がします。

マウスピース用材料としてのエボナイト、アクリルは20mmから30mmの丸棒を使用します。
写真、1
専門店ですでに成型されたエボナイトの既製品も入手出来ます、ただし、
ダボ径が限定され、材質も型成型用に配合されたもので良質の物が有りません、
出来合いと云っても外形はブライアーと一緒に削って仕上げる必要が有ります。
写真,2

           

写真、1                                                                                          写真,2


    マウスピース構造の種類

おおまかに分けてマウスピースのダボ部分の構造は三種類有ります。

1.擦り合わせ(パラレル)

マシンメードでは一番多い形です,シャンクとダボを合わせ、隙間が無いようにお互いの接触面を
ぴったりと合う様にして、シャンクとマウスピースを一緒に削り、擦り合わせるので、こう呼ばれて
います、シャンクからマウスピースに掛けて一体に流れる線が出せるのが特徴ですが、永年
使用するとか、暖かい内に抜き差しにより、ダボ穴を広げ緩みが起きる弱点が有ります.
擦り合わせダボ形式のパイプは喫煙後モールを通して掃除し、いちいちダボを
抜かないようにしましょう、ダボを抜いての掃除は1年に1回もすれば充分です。
(写真3.4)

                           

写真3                                                                        写真4

2.テーパーブッシュ
ダボ穴、ダボに2度程度のテーパー角を付けたもの、
マウスピースの抜き差しが簡単でとても扱い易い構造です、
永年使用しても緩むことが無くデザイン的に嫌で無ければ理想的な構造と云えます。
テーパー状のダボを押し込むと楔形の形状でテコの原理でダボ口の部分に
非常に大きな力が掛かる為、通常はダボ口に金属製のリングを入れて補強します。
写真5、6


                   

写真5                                                        写真6

3.ニ段ダボ
ちょっと見、テーパーブッシュの様に見えますがダボ穴が2段になっている
パラレル構造のもので、金属リング不要のブッシュタイプの構造です。
擦り合わせ構造より狂いが少なく緩みも少ないのが特徴です。
特注のカッターで2段目の穴を明けます。
写真7.8


         

写真7                                                      写真8


ここからは製作の実技をお見せします、擦り合わせの
マウスピースのパイプを一本完成させて見ましょう.


     ダボの旋盤加工

標準的な7.8mmのパラレルダボの切削例をお見せします。
マウスピースのダボの切削だけなら3万円台の旋盤でも
充分使えます,
でも、パイプ作りにはいろいろと旋盤が活躍出来る
用途が沢山有ります、後悔しない様に購入時に
充分ご検討下さい。
ダボはパイプによりいろいろな寸法が作れます
ダボ穴とダボも寸法の関係はPart3を参照してください。

必要長さにカットした丸棒エボナイトを旋盤チャックに固定
写真9


右片刃バイトでダボ穴内径7.8mm用に径7.85mm長さ13mmを
狙い少しずつ切削していく。
写真10


マイクロメーターで測定しながら7.85mmに仕上がる様に注意深く切削,
目標寸法に仕上がったところ。
写真11


次は続けて煙道明けの為のセンタードリルでダボ先端に穴明け
写真12


続けて煙道径3mmロングドリルで貫通の15mm手前まで穴明け、
写真13


さらに続けて1.5mmロングドリルで煙道を貫通させる
写真14

       リップ部の煙道スリット加工

煙道を通り、たばこの煙は口腔内に入って来ます,
この際の煙が細く集中して早いスピードで舌に当たるとたばこの味は辛く感じ
舌も荒れる事になります、
そこで煙の出口の構造が大事になります。


1.5mmの貫通孔を1.8mmのドリルの刃で広げてやります。
ハンドドリルでドリルの刃のサイドを使い切って行きます,
下の写真の様にマウスピースを左手で固定し、ドリルを手前に
引きながらドリルを下げながら広げて行きます.
180度廻して反対側へも切れ目を入れます.
写真15.16.17

                

写真15                                                      写真16                                                       写真17

写真の様にこのままでは切り口が汚いので細い平やすりで修正します、
写真20が仕上がりの状態です。

                  

写真18                                写真19                     写真20

これで準備完了です,いよいよパイプ本体に装着して成型に入ります。
ページを替えて続きを説明します

次ページへ続く