【バングラデッシュ・レポート】
その2   「高所恐怖症の人の心中」  
  
  2/3の前日の夜、「Sさんの出版を祝う会」に出席(8:00pm)して、
その足で「あの俳優のNさんの家に前日泊」したのです。なんだかおかしくって敷
かれた客間の布団に入って、妻と笑いました。
 だって俳優の家に知人として泊まるなんて、なかなかないことでしょ。
 
 成田空港で俳優Nさんがとてもいらいらし始めたのです。そう、彼は自分で搭乗手
続 きをしたことがないのです。いつもマネージャーが全部してくれるのですから…。
それと「俺は、飛行機に乗る前に一杯やらないと駄目なんだ!」と叫ぶんです。みん
な知らなかったのです。娘(新婦のk)さんも知らなかったのです。
彼が、「高所恐怖症」だって言うことを…。「俺は、高所恐怖症なんだー」ってわめ
くのです。みんな、笑いをこらえておたおた。そこで、私が引率して空港のバーに入
りました。「ここは、前回ニューヨークに行ったときのバーだ。」と言って、水割り
を頼みました。私は、朝の7:30に生ビールを注文。いやはや、つきあいとはいえ、
飲めない私、参りました。
 
 でも、高所恐怖症ってことは、想像もつかない気持ちでいるんだと思いましたよ。
俳優のNさんの振る舞いをとっくと観察しました。周りの人々は「Nさんさんだ」
って顔をして見ていますから。結構ご機嫌になっての搭乗でした。飛行機の中では、
水割りを5つもテーブルに並べてのドリンカーぶり。怖いんだろうな。あの、けつ
がフワーっと持ち上がったり、落っこちたりする感じが。すぐ眠り始めてしまいま
した。素敵な方です。



■その3


 「あのインディジョーンズの映画の世界に飛び込んだ」

   

 ダッカ空港に着き、大きなカバンを持って到着ロビーを出たとたん、世界は一変し
てしまいました。真っ暗に近いダッカ空港。連合赤軍が乱射事件を起こしたぐらいし
か知識はありません。足がすくみました。だって、鉄格子の向こうから大勢の手が
「ヘルプ!」と叫んでいるように真っ黒な顔、顔、顔。それを、警棒を持った警察官
が、ばしばしでっかい声を出してぶん殴っているではありませんか。
喧噪と騒音。ああ、どこかで見た光景。映画のインディジョーンズの場面。逃げるよ
うに走りました。尻を触られたり、荷物に手が伸びてきます。迎えが来ている車まで
走りました。
 
 新婦が叫びます。「ドント、タッチ!」見ると荷物を持ち上げて、取り上げようと
しているバングラデシュ人がいます。「ノーノー!」。顔を見て「アー!」なんとそ
の男は、新郎Sの弟だったのです。抱き合って謝る姿。
「しょうがねーよなー」と笑ってしまいました。

 物乞いの少年が、裸足で私の周りをうろつきます。よく見ると手には日本の十円銅
貨。これと同じものをくれと言っているようです。迎えの人が「シット!」とか口を
ならして追い払います。距離をとっては、また寄ってきます。拳を振り上げて追い払
います。何回か続きました。這々の体で車に乗ります。
 
 Nさんが「この車?」って言います。それは、日本のハイエース・ワゴンのぼろ車。
乗り込んで、空港ゲートへ。ゲートって言ったって、バーにひもが着いていて手で上
げ下げしている。前の車がまごまごしている。新郎がいきなり降りてって、でっかい
声で「なにまたもたしてんだ。バッカヤロウ。」確かにそう聞こえた。ベンガル語で
はない。慌ててゲートのひもを離した。
 それで、通過した。走り出した車の中で
Sに「今のは、日本語だよね。」「ここで日本語なんてわかる奴はいないですよ。」
だって。なんでも驚かすことが重要だってことだった。真っ暗な道路を揺られながら
Sの兄の家(ここが常駐宿泊地)に向かったのです。                        
                                 Ken