『ピアノの『音色』あれこれ』 第三回 「古典期その1〜楽器の進化とともに」〜前編〜

                                        國谷尊之

古典期の作曲家として特に名高いハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン。
彼らの作品には共通点がある一方で、それぞれ強い個性も感じられます。

「音色」の印象のちがいも、3人の特徴を味わい表現する重要なポイントだと
いえるでしょう。

これから2回にわたり、古典期のピアノの音色について考えていきましょう。

まずは、当時の楽器の事情についてです。

ピアノが発明されたのは1709年。
イタリアのクリストフォリが発明したこの楽器は画期的なものでしたが、
まだ音色が鈍く、タッチも重いという印象だったそうです。

しかし、その後の進歩はめざましいものでした。

古典派のころは、まさにピアノの性能が年々大きく改良されていった時代なのです。

◎ハイドンの鍵盤作品・・・ピアノが音楽史の表舞台に登場

1732年生まれのハイドンは、長らく鍵盤作品をクラヴィコード又は
チェンバロのために書いていました。


「フォルテピアノのための」と初めて書かれたソナタは1780年に出版されましたが
それ以前の作品にもピアノを思わせる強弱記号がちらほら見られ、彼がピアノを
想定して作曲したのがいつ頃からだったのか完全には明らかになっていません。

実はこれより前の1778年にフンメルによって編集されたハイドンのソナタ集に
「フォルテピアノのための」という表示があるそうですが、これは楽譜の売れ行きを
考えて出版社が勝手に書き加えたようです。

ピアノの価値が次第に上がっていく様子がうかがえます。

その後1788年に、ハイドンはシャンツ製のピアノを購入し、大変気に入ったと
言われています。

ある夫人に宛てた手紙の中に

「このソナタ(Hob.XVI/49)は・・・・感情が豊かです。
残念なのは奥様がシャンツ製のピアノをお持ちでないことです。
この楽器なら倍の効果が得られるでしょうに・・・」

と、書いています。


                    続く

(このエッセイは株式会社プリマ楽器様発行の情報誌「NEWS88」にて、連載させていただいたものです。)

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