僕は同人誌は読んでいないのですが(入手できないし)、〈真夜中の天使〉〈翼あるもの〉
〈終わりのないラヴ・ソング〉と来て、よし、じゃあ次はグインをネタにしてやろうとか、
その次はヴァレリウス×ナリスだとかいうふうに進むというのは僕にはわかる気はします。
常に一般的な価値観へのアンチ・テーザを出しつづけるという、それがあのひとのアナーキ
ズムなんだろうな。なぜイシュトヴァーンがグインの手を跳ね除けたのか、それと同じこと
だと思う。
まあ最近のグインの展開がこうなっているのはどうしてだろう、と考えるときに、作者がナ
リスが死ぬのがいやだからだとか、やおいだからだとか、同人の影響があるからだとか、い
やただ長く引き伸ばしたいのだとか、そういうことは凄く単純でわかりやすいですよね。な
にしろ百万文字の展開を1行で説明できるのだからたいしたものです。しかし、しばしば忘
れられがちなのは、ひとの頭のなかってやつは常にそうわかりやすくはいかなかったりする
ものだということでしょう。
「新世紀エヴァンゲリオン」が流行ったとき、その衝撃的な最終回について散々「GAIN
AXの手抜きだ」「庵野が投げ出したんだ」と騒がれたことを思い出します(いまでも一部
では騒いでいますが)。世界は常にわかりやすい動機を求めている。これはたぶん凄惨な殺
人事件が起きるとマスコミがすぐに「動機当てゲーム」を始めるのと同じ理由なのかもしれ
ません。ひとは、決して納得できないものを納得できないままに放り出しておけない生き物
なんですね。