ようやく「千里眼の瞳」の改作「メフィストの逆襲」「岬美由紀」を読みました。
「千里眼の瞳」では、次のように思いました。
北朝鮮スパイの李秀卿は日本語も英語も達者だが、社会認識がかなり遅れて(狂って?)
いる。言葉はその社会と密接に結びついているので、これはありえない状況である。
つまりSFとして設定された部分はかまわないが、それ以外の部分で矛盾があると、違和
感が生じる。特にこのシリーズは、そのような心理の微妙さを題材にした話であって、その
齟齬が物語に影響を与えるはずである。
日本の欠点を正確に知り、とっさにそこを突くことができるほどの能力の持ち主が、日本
の良さが判らず、北朝鮮の欠点に気付かないことがあり得ようか。
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今回の改作では、このような疑問がかなり薄まりました。加筆された300枚は、メフィス
トのダビデを登場させ、狂言回しをさせていますが、「千里眼の瞳」の矛盾を改めることが
最大の眼目ではなかったか、と思います。
わたしは、細かく比較する気はありませんが、この矛盾は気にならないほどになり、素直
に小説を楽しむことができました。