<トリポッド・シリーズ> について
以下は、かっての「史仙の本棚」に掲載された「忘れえぬSF」から、一部修正・加筆したモノです。

その昔、立ち読みながら読んだSFで、未だ忘れられない作品があったりする。
立ち読みというのは、その作品が年少者むけに刊行されていた体裁だったもので、なんとなく買いそびれて
しまったためである。ただ、今となってはそのことを後悔している。
正確なタイトルも、作者名も忘れてしまったその作品は、侵略テーマでたしか「三本足シリーズ」とかいってた
記憶がある。3巻完結。

第1巻では、主人公の少年が生活する世界がまず紹介されている。
一見前近代の世界。
なんとなくイギリスか、フランスあたりの片田舎の風景.
べつだん異常なことはみられない。
ただ、ときたま目撃される「三本足」と呼ばれる巨大な歩行機械を除けば、だけど・・・。
村の大人たちはその「三本足」になんら違和感を感じていないらしい。村の住人はある年齢になると、「三本
足」により頭部にキャップを装着してもらうことになっている。地方によって呼び方は異なるが、それを「戴帽式」
という。それがいわば成人になったあかしらしいのだが・・・。

そんな生活になんとなく釈然としないものを感じている人間として、主人公の少年は描かれている。紆余曲折
の結果、(痴呆をよそおった謎の浮浪者の誘いもあり)少年は村を出奔し、海を渡り、大陸上陸。
旅の途中、同様な想いをもつ少年たちとの出逢いを経て、「白い山脈の麓」に辿り着く。
そしてそこで、ついに「三本足」の正体、そして頭に装着するリングの謎を知るにいたるのである。

「三本足」とは100年以上昔、この地球を侵略し、征服した異星人の子孫だったのである。地球人の反抗を武
力制圧した彼らは、生き残った小数の生存者たちにマインド・コントロールするためのリングを装着、新たに生
まれてくる子どもたちにも一定の年齢になると同様な処置をすることを強制した。
やがて月日は流れ、往時を直接に知る者が死に絶えると、自分たちが異星人に支配されていることすら知らな
い人間社会が成立してしまったのである。

むろん、いかなる状況でも小数の例外はいるもので、かって異星人と闘った人々の子孫らしい集団が、世界各
地でレジスタンスを続行している。この物語の主人公の少年たちがたどりついたのは、その拠点のひとつで、ど
うやらスイス・アルプスらしかった。
少年たちはこのポイントで、かっての世界の歴史の真実を教わり、異星人から地球を奪還する闘いに参加する
決意をする。

第2巻では総反攻にでるために、敵のデータを収集するため異星人の棲む巨大ドームシティに潜入する少年の
活躍が描かれている。かくして敵の実体を把握した人類側は、全世界の同志を語らい、総攻撃を開始すること
になる。

第3巻にいたって、激戦の末、ついに人類は地球を奪還する。が、勝利したあと、戦後処理を話し合う席上、早く
も仲間割れが始まり不穏な空気が暗示されて物語は終わる。

すべて、これでハッピー・エンドとなってないところにこの作品と著者の奥深さがある、と僕は感じたのだが・・・。

 で、こうして長々とストーリーを紹介したのだが、どこにそんなに魅力を感じたかというと、この作品世界の人々
は、いうならば、「歴史を奪われた人たち」なのである。自分たちの出自も、世界の成り立ちの由縁も知らず、収
奪される不当さにも疑問を抱くことのない人たちなのだ。そういう人々が自分たちの正当なポジションを発見し、
自分を再発見していくために苦闘するストーリー、そしてそこに生まれる感動。それこそがこの物語の心髄なの
だと思う。

100年以上歴史を奪われた人々がどんな世界をつくっていくのか、本シリーズはいうならば今流行のシミュレー
ション小説の先駆的作品なのかもしれない。ただ本作品が、大半が駄作のそれらと一線を画するのはひとつの
異世界を創造した力量と、それが生んだ感動なのではないか。そんな気がする。    (1998,4/29 記)
                     

 ・・・てなことを3年ちかく昔、とあるパソコン通信の掲示板に書き込んだことがある。HDを整理していて、「へぇ、
こんなこと書いてたのか」って懐かしく思い出した。。
「歴史を奪われる」ということ。
或る意味で、これほど悲惨なこともそうはないと思う。

清水義範氏の初期のソノラマ文庫に、「禁断星域の伝説」なる作品があるけども、これは宇宙に移住した人類の末
裔が、その出自を知り、歴史をとりもどす物語だった。
その作品中、登場人物の一人が「歴史ってのが、どれだけ大事なものかよくわかった。知らないと、目の前のことさ
え理解できないのだから」とうぶやくシーンがあって、妙に記憶にのこった。

で、ここに上記の作品、延々と再録させてもらったのは、この作品の作者と正確なタイトルをどなたかご存じないだろ
うか、と思ったからです。自分でも検索してみるつもりですが、ご教示くだされば幸いです。
                    史仙 拝
追記

てなことをかいてから、幾星霜(?)
らいむさんという方から「三本足」について、貴重な情報を頂くことになった。
グイン・サーガのサイトの参加者で、その縁でこの拙いHPに目を通していただいたようなのだ。

以下は、そのらいむさんからの情報です。(2001,8/19)

<3部作になってて、
   一巻 鋼鉄の巨人
   二巻 銀河系の征服者
   三巻 もえる黄金都市
  と、なっております。
  その昔、高校(いや、中学かな?)の図書館で一巻を読んで、
  どうしても続きが気になって 本屋さんで2,3巻を買ったんですね。
  あの頃、少年向けのSFとしては、内容がハード(?)で私にとっては衝撃的で
  したね。確かに、最後は三本足をやっつけて、自由な人間の世界をとりもどすん
  だけど単なるハッピーエンドでは終わってないし・・。
  学研 ベストブックス 著 ジョン・クリストファー 訳 亀山龍樹
  挿絵は 武部本一郎さん。
  この人の挿絵、すごく好きでした。(一部中略)>

で、以下は、上記の後日談(?)となります。
2004年10月頃だったでしょうか、ハヤカワ文庫のサイトで、こんなアナウンスを見つけました。

<ジョン・クリストファーの「トリポッド」シリーズ。

    ディズニー映画化
   異星からの侵略者に立ち向かう
    少年たちの驚くべき冒険!
      装幀/西島大介

  11月上旬 SF『トリポッド 襲来』 ジョン・クリストファー/中原尚哉訳>

 あ、コレがかの<三本足シリーズ>のことだったら嬉しいな!と考え、「ダメ元」でもと、ハヤカワさン
へ問い合わせのメールをおくってみました。
 そんな僕の質問にもご丁寧に応えてくれた早川書房営業部の方!感謝します!!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「トリポッド」の書店での発売は11/8頃を予定しております。
 またこのシリーズは同じ「3本足シリーズ」で、以前学研から児童書として
@「鋼鉄の巨人」 A「銀河系の征服者」 B燃える黄金都市の3部作として
刊行されていましたが、今回はのクリストファーが1988年に新たに書いた
シリーズ前史を付け加えた4作を出版します。
11月刊の「トリポッド 1襲来」は日本初紹介のシリーズ前史にあたります。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ご承知のとおり、2005年、新装なった「トリポッド・シリーズ」全4巻は完結した。
   トリポッド 1 襲来 (2004年11月刊)
   トリポッド 2 脱出 (2005年 1月刊)
   トリポッド 3 潜入 (2005年 3月刊)
   トリポッド 4 凱歌 (2005年 5月刊)



トップへ
トップへ
戻る
戻る