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Research Note

まだまだ数え方の勉強とフィールドワークは続きます。
このページでは、試行錯誤の数え方調査記をご紹介しています。

大相撲の懸賞金 いかめし2尾 アワビ1頭? いなり鮨 柳之御所資料館 キリン「1塔」 築地場外市場 貨幣博物館 上野動物園 ロボット犬実験

大相撲の懸賞は「1個、2個」?

大相撲の懸賞は、かける時には「1本、2本」ですが、力士に手渡される時は祝儀袋に入っているので「1封、2封」と数える習慣があります。ある日、新聞記事に「横綱は、36個の懸賞束をわしづかみにした」という記述がありました。

私は懸賞金を「個」で数えるのには少し違和感を覚え、新聞社の編集局に確認したところ、「『封』という数え方は一般の読者には知られていない面もあり、『個』を使いました」とのこと。「金一封」などの言い方で定着しているとはいえ、いざ数が多くなると「封」は分かりにくいという判断のようです。「1個」の用法は、ますます広がっていることが分かりました。(2009/10)

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いかめしの数え方は「1尾、2尾」?


旅行で立ち寄った、お土産屋さんの「いかめし」にびっくり!品物に驚いたのではなく、数え方にびっくりしたのです。だって「2尾入」と書いてあったのだから。

イカは、私がこれまで調べた範囲では「1杯」または「1匹」、2匹同時に釣れた時には「1荷(いっか)」と数える例しか採取できませんでしたが、「尾」でも数えることがあるのですね。尻尾がないイカに「1尾、2尾」とは、これイカに?北海道地方でカニ1杯を「尾」で数えるのと同じ理屈でしょうか。(2009/9)

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アワビの数え方は「1頭、2頭」?

私は貝類はあまり得意ではないのですが、新しいアワビの単位に出会った感激で、思わず30頭級の煮込みアワビ料理を注文。サイズはちょっと大きめのシイタケくらいでした…。

 アワビの数え方。私はこれまで、生きているアワビは「1匹」、食用アワビは「1個」や「1杯(殻の形が盃に似ていることから)」と数えることは知っていました。しかし、何やらアワビにそれ以外の数え方があるらしい、ということを先日行った中華料理のレストランで知った時は驚かされました。

 メニュー表を見ると「干しアワビ24頭、30頭」の文字があるではありませんか。「え?!アワビって『1頭』と数えるの?」確かに、これまでの数え方調査では、珍しい昆虫や生物学的に貴重な個体は「頭」で数える用例が見つかっています。アワビも高級食材。専門家の間では「頭」で数えているのでしょうか?気になって店の人に聞いてみたところ、これは「頭級とうきゅう」なる干しアワビの大きさを表す単位だということでした。数え方とは違うもののようです。

干しアワビは、天日に干す際に1斤(600g)入る枠にいくつ入るかで頭級が示されます。例えば1個20gの干しアワビだと、600gの枠に30個入るので「30頭級」、1個30gの干しアワビだと枠に20個入るので「20頭級」で表します。頭級が小さくなるほど大きな干しアワビということになりますね。 (02/2006)

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稲荷鮨が大流行!

数え方調査の最難問となりつつある、江戸前の握り鮨の数え方。今回はその手がかりを探しに東京都江東区にある深川江戸資料館に足を向けました。

地下鉄大江戸線と半蔵門線の通る清澄白河駅から歩いて3分、江戸時代の街並みを思わせる商店街の一角にこの資料館はあります。と言っても、展示はかなり大掛かり。江戸時代の庶民の町並みを再現した実物大の町並みのセットが展示されていて、昔の人が使った部屋や道具を目の当たりにすることができます。

そして、ありました。これが鮨を売っていた屋台です。江戸時代、鮨は「はこずけ、すし」と書いた行灯を立てた屋台で売られていたそうです。これは稲荷鮨の屋台です。青いキツネののぼりが見えますね。当時、まだ新興宗教だった稲荷信仰が広まるにつれ、稲荷鮨は庶民の間で大流行したのだとか。昔は稲荷鮨に飯に限らず、豆腐がらなども具として入れ、醤油とワサビを付けてこんな風に食べていたそうです。(右側の竹の皮に包まれているものはテイクアウト用。) 稲荷鮨は「一ツ八文也」と、「つ」で数えていたことが資料に書かれています。

で、肝心の魚介類を使った江戸前の握り鮨についてですが、残念ながら今回も収穫がありませんでした。(10/2005)

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義経も使った?印章の数え方:平泉町柳之御所資料館

 中尊寺で有名な岩手県平泉町にある、柳之御所資料館を訪れる機会がありました。ここは平安時代末期、藤原氏が造った政庁跡である柳之御所遺跡から発掘された歴史的資料が多数展示されています。奥州平泉の栄華を裏付ける様々な遺物の中に、国内初の印章が展示されていました。 
印章
 平成11年の調査で、井戸の中から銅で鋳造された印章が1顆
(1点のこと)出土しました。印章には楷書で「磐いわさきむらいん」と刻まれ、凹みには朱肉が残っています。穴の開いてない紐ちゅう(つまみ)の側面には、目印の「上」の字も刻まれています。(以下略)
 この説明文では、4.7センチ四方の小さな印章を「顆」で数えていました。「へぇ、『1顆』で数えている例は初めて見た!」と感激しました。これまで「顆」という数え方が実際に使われている用例に出くわしたことがなかったからです。
 数え方の謎を解き明かすには、前後の説明文の文脈も重要な手がかりになります。私は印章の説明文を何度も読みました。そして「穴の開いてない紐(ちゅう)(つまみ)の側面には、目印の「上」の字も刻まれています。」と書かれている部分にヒントがあるような気がしました。展示されている印章には指先でつまみあげる程度の長さ3.7センチのつまみが付いています。
 「つまみ」は「つまむための部分」、すなわち人間が人差し指と親指(場合によっては中指も)を使って指先で物を持ち上げる時に触れる部分であるということです。私達が日頃、認印などに使う細長い形をしている印鑑とは異なる形です。私は直感的に「顆」という数え方は、人間がつまみあげる程度のものを数えるのではないかと思いました。ビーズや豆、丸薬といった物は確かに丸くて粒状のものはつまみあげるのに絶好の物体だったのですね。
(02/28/05)

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英語にもいろいろある、群れの数え方:BNC(British National Corpus)

日本語で生物を数えるとき、原則として「1匹」「1頭」「1羽」といった数え方をします。これらは生物の大きさや種類に応じて、比較的機能的に数え分けることができます。
 実は、英語でも、生物が群れをなしていると、その群れを集合名詞(collective noun)を使って表現するのです。日本語の数え方(助数詞)とは多少機能が違って、群れになっている生物の特徴などを比喩的に表現するものがたくさんあります。どんなものがあるか興味がわいたので、BNC(British National Corpus)や英語辞典のCD-ROMで検索してみたところ、こんな表現を見つけました。

英語の集合名詞の例

直訳すると…

意 味

a tower of giraffes

のキリン達

キリンの一群

a pride of lions

誇りのライオン達

ライオンの一群

a scoop of pelicans

すくいのペリカン達

ペリカンの一群

a murder of crows

殺人のカラス達

カラスの一群

a shiver of sharks

震えのサメ達

サメの一群

 キリンの首は塔のように高いので、その群れは"tower"、ライオンのオス達は誇り高い雰囲気があるので"pride"、カラスの群れに至っては"murder"などといったように、生物の特徴を集合名詞で巧みに表現しています。英語は、助数詞が発達してない言語だけに、このような集合名詞でことばの‘ひねり’を効かせているのかもしれません。(09/05/04)

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魚介類の数え方調査:築地場外市場

 ラジオの生中継で築地場外市場に行ってきました。活気あふれる朝の市場で、私が様々な魚介類の数え方を紹介するという企画でした。

 番組では、私が馴染みの市場の店を案内するという設定でしたが、実は築地に足を踏み入れたのはこれが初めて。予め、前日にも築地に行って、鮮魚店の値札に表示されている数え方をチェックして回りました。店先で私が「すみません、どうしてタコは『1杯』と数えるんですか?」と聞くと、「さあねぇ。数え方のことなら、そういえば、この間、本が出たから、それで調べたら?」と言われて、嬉しいやらがっかりするやら…。

 別の店では「ホヤ1ツ」の表示があり、「ホヤは『1ツ』で数えるんですか?」と聞いたら、「『1個』でも『1匹』でもいいじゃないか。商売には関係ないよ」と言われました。なるほど、数え方は商売道具として必要な範囲で発達するんだと教えられました。面白いことに、翌日その店の前を再び通りかかると、「ホヤ1個」と表示が変わっていました。(8/29/04)

魚やエビ類は「1本」「1尾」が主流ですが、タイやヒラメなどは「1枚」とも数えていました。イカ・タコは「1杯」、貝類は「1個」「1枚」。

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握り鮨「1貫」のルーツを探る:貨幣博物館

 握り鮨は「1貫」「2貫」と数えることは、皆さんご存知だと思いますが、なぜ「貫」で数えるのかは、未だ多くの謎や俗説が残されています。拙著『数え方の辞典』には、江戸時代の握り鮨は"紐を通した穴あき銭1貫分の大きさとほぼ同じだった"(p. 155)と記しました。ところが、穴あき銭1貫分(銅銭1,000枚)を紐を通すと実に1.3メートルにもなり、とても握り鮨の大きさにはならないのです。ならば、なぜ「貫」が鮨の数え方となったのか?

 この疑問は、私にとっても大きな課題でありましたし、出版後に読者の方々からもご指摘を頂戴したため、先日、東京・日本橋にある貨幣博物館に行ってきました。学芸員の方にもご協力を頂きながら、鮨の数え方と貨幣の関係について資料を調べて頂いたり、「貫」と鮨との接点の可能性を探ってみたりしましたが、今回は残念ながら確固たる情報を得られませんでした。俗説の域を出た、鮨の数え方に関する古い文献などがお手元にありましたら、ぜひご教示下さい。(08/23/04)

東京日本橋にある貨幣博物館に展示されている江戸時代の銭貨。
紐に通してある銭1本で100文(=「ひと結い」)。つまり、1貫分の銭はこの10倍。巨大な握り鮨になってしまう可能性が。

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動物園のスタッフは、動物を全て「1頭」で数えている:上野動物園


猛暑でコウテイペンギンは
冷房室に避難

  雑誌の企画に便乗し、上野動物園に動物の数え方の調査に行ってきました。上野動物園は明治15年(1882)に開園した日本で最も老舗の動物園。当然、動物に関する古い資料もたくさん保管されています。今回は、その貴重な資料を拝見できる絶好の機会とあって、数え方を研究している身としては、パンダやキリンなどには目もくれず、宝の山の資料室に直行しました。

 私が一番興味があったのは、本当に動物園のスタッフは展示・飼育されている生き物を全て「1頭」で数えるのかどうか、ということです。飼育課の方にお話を聞くと、確かに動物園では生き物全てを「頭」で数えていて、その由来は英語の"head"にあるということが分かりました。(場合によっては、"individual"を訳して「1個体」とも数えることもあるのだとか。) だから、昆虫のチョウも「1頭」と数えるのだと納得させられました。 
 貴重な資料を読むにつれ、動物園での生き物の数え方は単純明快であることに気づかされました。鳥類は「1羽」、鳥類以外の動物・昆虫は全て「1頭」で数えていて、「1匹」という数え方は鳥獣類をまとめて数える際にのみ、便宜的に使われているようです。ちなみに水族館で展示・飼育している生き物は全て「1尾」と数えるだということです。

 取材スタッフの中からは、「ひょっとすると明治時代には、軍隊の影響が強く、生き物も『陸・海・空』に分類して数えたのではないか?」といった仮説も出て、一同数え方談義に花を咲かせました。(8/10/04)

明治15年に開園した上野動物園に保存されている動物に関する資料。詳細な記述が目を引きます。(写真はサルの説明)

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 ロボット犬の数え方は5年間で変化

1999年に登場した犬型ロボット。発売当初は「1点」「1台」と数えていましたが、次第に動物と同じ「1匹」と数えるように。

 テレビの情報番組で、日本語の数え方の特集コーナーがありました。

 このコーナーでは、昔ながらの数え方を残しているマグロや提灯、箪笥の数え方についての映像を交えた詳細なレポートで、数え方由来や理由の説明、そしてそれを子供達へどのように伝えていくか紹介していました。

 コーナーを制作するにあたって、スタッフの方ともいろいろお話をする機会がありました。私が「日本語の数え方には伝統的な文化を反映する部分と、新しい物が出現した時に数え分ける柔軟な部分があります」と説明し、ロボット犬をどう数えるかの研究の話をしました。その後、番組を見ると、なんとロボット犬を多くの人に触ってもらい、その数え方をインタビューしているではありませんか。

 ロボット犬に実際に触れた人に「これは何と数えますか?」と聞くと、実に7割の人たちが「1匹」と数えていて、もはやロボットではなく、ペットとしてロボット犬が浸透しつつあることが示されました。私がロボット犬の数え方の調査を始めたのが1999年ですので、わずか5年間で、ロボット犬は機械からペットの仲間へと加えられてきていることになります。数え方には多くの情報が含まれていることが、改めて確認できました。(7/11/04)

2004年の実験では「1匹」で数える人が7割超。

ヒト型ロボットは、いつ「1人」になるか期待しています。

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