中部地方の赤帯入場券を鑑定
(幹線・連絡線・支線の鑑定)

手持ちの赤帯入場券を見ていたら、中部地方の主要幹線「高山本線」、高山本線と中央本線の連絡ルート「太多線」そして高山本線の支線「越美南線」の発行枚数に面白い傾向があるのに気が付きましたので、デタラメな鑑定をしちゃいます。鑑定に用いるのは昭和39年から40年にかけて発行された赤帯入場券です。

1.高山本線の鑑定

左の42枚は、昭和40年時点で入場券を発売していた全38駅の赤帯10円券で、昭和40年6月から7月にかけて発行されたもの(一部の駅は、昭和39年5月から9月)。以下のリストは、駅名(発行日、乗降客数*):印刷時期、券番の順に示したものです。

長森(S39.9.1とS40.6.12,乗降客数:652人):名古屋3期、#0838、#0904 ⇒ 9ヶ月半の間に66枚発売されたことになりますが、こんなに少なかったのか、疑問も残ります。
那加(S40.6.12,1268人):名古屋3期、#7564
蘇原(S39.5.28とS40.6.12,1636人):名古屋3期、#0958と#1172は別ロット?
各務ヶ原(S40.6.12,538人): 名古屋3期、#0667
鵜沼(S40.6.12,7804人): 名古屋3期、#3553
坂祝(S40.6.12,1116人): 名古屋3期、#1392
美濃太田(S40.6.12,8016人): 名古屋3期、#5221
古井(S40.7.18,2490人): 名古屋3期、#6460
中川辺(S40.7.18,1834人): 名古屋3期、#8163
下麻生(S40.7.18,790人): 名古屋3期、#5498
上麻生(S40.7.18,1140人): 名古屋3期、#4297
白川口(S40.7.18,1484人): 名古屋3期、#7220
下油井(S40.7.18,572人): 名古屋3期、#1658
飛騨金山(S40.7.18,1786人): 名古屋3期、#7317
焼石(S40.7.18,334人): 名古屋3期、#2019
下呂(S40.7.18,2602人): 名古屋3期、#0516
飛騨萩原(S40.7.18,2388人): 名古屋3期、#7570
上呂(S40.7.18,480人): 名古屋3期、#4001
飛騨小坂(S40.7.18,1008人): 名古屋3期、#3781
渚(S40.7.18,62人): 名古屋2期、#0664
久々野(S40.7.18,762人): 名古屋3期、#4937
飛騨一ノ宮(S40.7.18,408人): 名古屋3期、#3590
高山(自 S40.4.5×2枚,7270人):名古屋3期、#6116、#6124
高山(A S40.7.18): 名古屋3期、#5448
上枝(S40.7.18,184人): 名古屋3期、#1422
飛騨国府(S40.7.18,692人): 名古屋3期、#1778
飛騨古川(S40.7.18,2312人): 名古屋3期、#3398
飛騨細江(S40.7.18,492人): 名古屋3期、#5204
角川(S40.7.23,780人): 名古屋3期、#5083
坂上(S40.7.18,692人): 名古屋3期、#3847
打保(S40.7.24,268人): 名古屋3期、#1978
杉原(S40.7.18,252人): 名古屋3期、#2896
猪谷(S40.7.18,918人): 名古屋3期、#0265
楡原(S40.7.18,496人): 名古屋3期、#5165
笹津(S40.7.18,1278人): 名古屋3期、#5029
越中八尾(S40.7.18,3256人): 名古屋3期、#1893
千里(S40.7.18,894人): 名古屋3期、#1608
速星(S39.9.4,2346人): 名古屋3期、#6934
西富山(S40.7.18,824人): 名古屋3期、#1248

渚駅が名古屋10円2期券以外は全てが名古屋3期券。乗降客数のわりには発行枚数が多いことに気がつきます。渚駅の乗降客は僅か62人なのに、2期券だけで664枚も売れていたのです。しかし、1期券を1万枚売り切った後に2期券へ切り替えたと考えるのは不自然です。おそらく、1期券は千枚程度印刷し、売り尽くす前に2期券に切り替えたのでしょう。本線ともなると、いつまでも古い様式の1期券を使うことはなかったようです。
高山本線で一番貴重と思われる入場券は昭和37年4月に無人化された禅昌寺駅の券。入場券買い占め隊が活躍する2年前のことなので、推定発行枚数は多くても数百枚。残存枚数はもっと少ないことでしょう。

*:「国鉄全線全駅 読み乗り2万キロ総ガイド」1979年、主婦と生活社

2.太多線

高山本線・美濃太田と中央本線・多治見を結ぶ太多線は、支線のわりに乗降客数の多い路線で、乗降客の80%が定期券利用客だそうです。高山本線に比べると、乗降客数に対して入場券発行枚数は少ないようで、これまでに分かってきた仮説「定期券利用客が多い地方ローカル線の赤帯入場券発行枚数は少ない」がある程度、当てはまるようです。

広見(S40.6.12,3920人): 名古屋3期、#2482
姫(S40.6.12,1262人): 名古屋1期、#0148
根本(S40.6.12,1798人): 名古屋3期、#0058
小泉(S40.6.12,3134人): 名古屋3期、#0385

3.越美南線の鑑定

越美南線(現、長良川鉄道)は美濃太田駅から終着駅の北濃までを結ぶ高山本線の支線。左の14枚は、昭和40年6月19日時点で入場券を発売していた全14駅の赤帯10円券で、すべて昭和40年6月19日発行。

加茂野(820人): 名古屋3期、#0416
関口(1054人): 名古屋3期、#1429
美濃関(1012人): 名古屋3期、#4861
美濃市(1298人): 名古屋3期、#8897
美濃立花(214人): 名古屋2期、#0037
美濃下川(284人): 名古屋2期、#0369
苅安(676人): 名古屋1期、#0107
深戸(282人): 名古屋1期、#0058
美濃相生(344人): 名古屋1期、#0083
郡上八幡(1978人): 名古屋3期、#6921
美濃彌富(460人): 名古屋1期、#0089
大中(260人): 名古屋1期、#0056
美濃白鳥(2246人): 名古屋3期、#4441
北濃(540人): 名古屋3期、#0911

名古屋3期券の7駅(加茂野、関口、美濃関、美濃市、郡上八幡、美濃白鳥、北濃)は、加茂野と終点の北濃を除いて乗降客数は千人以上。一方、名古屋1期券の5駅(苅安、深戸、美濃相生、美濃彌富、大中)の乗降客数はすべて千人未満であり、「乗降客数の少ない地方盲腸線の中間駅は鉄道ファンに不人気な駅」なので、やっぱり入場券の発行枚数は異常に少ない。越美南線の赤帯入場券は、この他にあと3駅で発行されといわれています。無人化時期が昭和35年だったという美濃洲原、木尾(昭和31年12月20日美濃洲原から改称)そして美濃山田の赤帯入場券発行枚数は皆無とは言えないものの、残存枚数は限りなく零に近いことでしょう。もし、所有している人がいるとすれば、それは鉄の古老に違いない。