勝手に鑑定「単なる乗車券」

特急券の場合は”特急列車”が、また、入場券の場合は”駅”が、切符鑑定の重要なポイントですが、その他の乗車券の場合は、どうなんでしょうか? 単なる乗車券には、いろんなバリエーションがあるので、対象を片道切符に限定したとしても、一つの側面だけで鑑定するのでは不十分となってしまいます。次に示すような いろんな観点からチェックする必要があるかもしれません。

 ・発行日と券番。
 ・切符の様式(常備片道、地図式、矢印式、相互式、金額式など)。
 ・乗車区間(鉄道路線、発駅、着駅)など。

1.発行日と券番

数字の並びが良い日に切符を買いに行った経験をお持ちの収集家は多いのではないでしょうか? 鉄道会社によっては、その日にわざわざ縁起切符を発行することもあるくらいだからね。そんなわけで、”語呂の良い日の切符”は、切符鉄ちゃん達に大人気かと思いきや、さにあらず。高額鑑定を期待して、例えば、
Go!Go!Go!Go!(55.5.5)券を切符屋さんに持ち込もうものなら、非常にヤーナな顔をされ、高値買取どころか、引き取り代金を請求されかねない雰囲気に襲われるかも。じゃあ、Go!Go!Go!(5.5.5)ならどうか? これがもし、「綱島から横浜・高島町ゆき」の片道切符なれば、同じく、完全なる可燃ゴミと鑑定されることは必定也。また、切符の素人 chabin にとって垂涎の的であるナンバーワン切符や一万番券にしても、収集家の人気は今一つらしい。
ということは、発行日と券番は、特別な場合(例えば、駅の開業初日に発行されたナンバーワン切符など)を除いて、鑑定結果に大きな影響を与えないらしい。

2.切符の様式

三丁目の夕日の時代には、乗客思いのとても親切な片道切符がいろいろとあったけれど、”供給側第一、庶民は二の次”の市場原理主義推進により、「乗客に不親切、鉄道会社には親切」な金額式が切符市場を席巻してしまった。切符鉄ちゃんの好みは人様々ではあるけれど、その味気なさゆえ、金額式切符が一番不人気であるのは間違いない。その他の様式はどうなんでしょう?
それでは、簡単なアンケートにご協力を。以下は、同じ駅が発行した様式の違う片道切符3組。切符鉄ちゃんのあなたは、どちらがお好みですか?

A1.吹田駅発行・両矢印式 B1.鶴見小野駅発行・相互式 C1.仙台駅発行・常備片道
A2.吹田駅発行・地図式 B2.鶴見小野駅発行・地図式 C2.仙台駅発行・地図式

切符屋さんの評価は、圧倒的に地図式が優勢ですが、地図券以外の方がいいという収集家だっているかもしれません。

3.乗車区間

廃止、買収、改称などによって、失われた鉄道路線や駅の切符は、思い出をいつまでも残してくれる貴重な忘れ形見。入場券ほどではないけれど、今もなお、根強い人気があるとか。そんな片道切符を少しだけご覧下さい。

(1)廃止私鉄の切符

播州鉄道 T12播丹鉄道に譲渡 篠山軽便鉄道 T14篠山鉄道(S19廃止) 玉南電鉄 T15京王電気軌道と合併 多摩湖鉄道 S15武蔵野鉄道と合併
三河鉄道 S16名古屋鉄道と合併 博多湾鉄道 S17西日本鉄道と合併 宇部軽便鉄道 S18国有化 豊川鉄道 S18国有化
尾三バス S18名古屋自動車と合併 三国芦原電鉄 S19休止 宇佐参宮鉄道 S20大分交通に統合 国東鉄道 S20大分交通に統合
松金電車 S30廃止 草軽電鉄 S35廃止 秋保電車 S36廃止 西大寺鉄道 S37廃止
宮崎交通 S37廃止 浜松鉄道 S39廃止 尾道鉄道 S39廃止 大分交通宇佐参宮線 S40廃止

切符屋さんの店頭で、廃止私鉄の切符にお目にかかる機会は少なくなりましたが、ネットオークションや入札誌では今もなお、大変な人気者。中には1万円を越す高額で取り引きされる券もあるとか。切符屋さんに買い叩かれないよう、くれぐれも ご用心。

(2)廃止、改称駅の切符

廃止や改称によって、50年以上も昔に その名が失われた国鉄の駅はそれほど多くありませんが、しかし、それら全駅の入場券を集めようとすれば、とてつもない労力と経済力が必要になるだけでなく、いくらお金を積んでも見つからない駅もあることでしょう。一方、下表に示す 失われた駅を記した「単なる乗車券」は、入場券に比べて ず〜っとお手軽な値段で手に入れることができるようです。

神奈川 S3廃止 牛込 S3廃止 岩国 S4麻里布に改称 両国橋 S6両国に改称
程ケ谷 S6保土ケ谷に改称 亀ノ瀬東口 S8廃止 飯田町 S8旅客営業廃止 江尻 S9清水に改称
宮島 S17宮島口に改称 大淀 S17南宮崎に改称 大宮町 S17富士宮に改称 万世橋 S18廃止
安房北条 S21館山に改称 三津内海 S21安浦に改称 御油 S23愛知御津に改称 大貞 S27東中津に改称
備後十日 S29三次に改称 三日市 S31黒部に改称 大原市場 S31甲賀に改称 沼垂 S33旅客営業廃止

「切符を発行した駅(発駅)でなくっちゃ、失われた駅の切符とは言えない」という高齢で律儀な切符収集家の間では、廃止改称駅が着駅になっている切符の人気は今一つ。が、しかし、着駅の方が大きい字なので、視力が落ちてきたお年寄りには着駅の方がいいかもね。

(3)無人駅の切符

無人駅発行の切符は、意外と人気がなくて、入場券よりも遥かにリーズナブルなお値段で手に入れることができる。

中舞鶴 S38.2/1無人 越後田中 S45.12/21無人 美濃赤坂 S46.5/1無人 京口 S47.2/1無人

無人化後も、ご近所のタバコ屋さんが切符を委託販売してくれる場合が多いからかも。一方、無人駅ゆきの切符の多くは単なる可燃ゴミ。切符屋さんから邪険にされることは間違いない。