5.小本線の鑑定

 幸運にも、宇津野が終着駅だった頃の鉄道統計年報(S27〜29年度)に小本線(現、岩泉線)各駅の入場料金が記載されています(下表参照)。これを手掛かりにして、当時の小本線各駅における入場券の発行枚数を鑑定してみましょう。

駅名 入場料金(円) 残存赤線入場券
S27 S28 S29 合計 発行時期等 発行日付 券番
岩手刈屋 17/6/25開業、47.2/6無人 1,070 730 1,750 3,550 10円仙台3期 S39.3.12 3424
岩手和井内 17/6/25開業、61.4/1無人 210 250 440 900 10円仙台3期 S39.3.12 1191
押角 19.7/20開業、47.2/6無人 10 150 100 260 10円仙台初期 S34.1.6 0071
宇津野 22.11/25開業、32.5/16廃止 110 220 680 1,010

(1)岩手刈屋駅

 昭和29年度の年間発行枚数は175枚也。S39.3.12に発行された仙台印刷10円3期券の券番=3424が正しいとすれば、昭和30年代後半は、年間約1000〜1500枚が発行されていたと推定されます(仙台3期券は遅くとも昭和37年には発行されているため)。ローカル線の中間駅としては、発行枚数の多い人気駅だったようです。

(2)岩手和井内駅

 昭和20年代後半には、岩手刈屋の1/3から1/5程度の発行枚数で、やや不人気な駅でした。S39.3.12に発行された仙台印刷10円3期券の券番=1191が正しいとすれば、昭和30年代後半も、岩手刈屋の1/3程度の枚数が発行されていたと推定されます。入場券の発行枚数が年間約300〜500枚といえば、普通の駅になっていたんですね。

(3)押角駅

 S34.1.6発行の仙台印刷10円初期券の券番が0071で、しかも赤鉛筆のチェック入りなので、10円券の発行枚数は以下の通りとなります。

 @S27〜S29年度の3年間に26枚(年平均:約9枚)
 AS30.4.1〜S34.1.5迄の3年9ヶ月間に44枚(年平均:約12枚)。

 これにより、S27年4月から宇津野が廃止されたS32年5月迄の5年間に押角で発行された10円券は50枚前後(年平均:約10枚)と鑑定できます。宇津野に終着駅の地位を奪われたその時から、押角は不人気な駅になってしまったのかもね。

(4)宇津野駅

 10円券の発行枚数は、S27年4月からS30年3月末迄の3年間に101枚を記録していますし、入場料収入も年々増えていましたので、S30年度以降の記録はありませんが、S29年度よりも多くなったと考えるのがリーズナブルです。従いまして、廃止前2年間(S30〜31年度)の発行枚数は200枚くらいだったと推定してもおかしくありません。と言うことは、10円券の累積発行枚数は約300枚也。これならば、今もなお、入場券が生存していても不思議でないかも。風聞によれば、この駅の入場券は、入札で過去最高額を付けたとか。 独断と偏見と見た目による chabin の全く当てにならない予想では、昭和29年度迄に発行された券ならば仙台印刷初期券、昭和30年度以降に発行されたものならば仙台印刷初期券か1期券と思われますが、当たるもハッケ、当たらぬもハッケヨイヨイ?