旅客取扱をしていた信号場
列車の行違いや待合せのみを行うために設置された信号場は、旅客の乗降を取り扱いません。しかし、昭和20年代以降、一部の信号場では、旅客乗降の取扱が開始され、乗車券を売ったり、手荷物を扱うようになったと言われています。旅客を取り扱う信号場は、鉄道統計年報の駅別旅客取扱収入表に記録されているので、信号場毎の運賃収入や旅客雑収入や入場料金が分かります。駅年表様のHP を頼りに、旅客取扱をしていた信号場を調べてみましょう(下表参照)。
信号場名 | 旅客取扱信号場の変遷 | 旅客雑収入と入場料金の記録 | 注 |
中央本線・新府 | ・S24.11/5旅客乗降取扱開始 ・S47.9/10廃止→停車場 | S24〜32迄旅客雑収入有、S27〜30の入場料金=4230円 | * |
中央本線・池田 | ・S26.3/1?旅客乗降取扱開始 ・S27.4/1廃止→古虎渓停車場 | S24=14円、S25=134円、S26=281円の旅客雑収入 | # |
中央本線・東塩尻 | ・S24.10/1旅客乗降取扱開始 ・S58.7/5旅客乗降取扱廃止 | S24〜32迄旅客雑収入有、S27〜30迄の入場料金=0円 | |
中央本線・北府中 | ・S27.7/1旅客の乗降を取り扱う ・S31.9/1廃止→停車場 | S27〜30迄旅客雑収入有 | |
舞鶴線・中筋 | ・S25.3/1?旅客乗降取扱開始 ・S26.9/1廃止→真倉停車場 | S24=25円、S25=220円の旅客雑収入 | |
東北本線・高久 | ・S26.4/1?旅客乗降取扱開始 ・S39.9/1廃止→停車場 | S24〜28、S32〜38迄旅客雑収入有、S37〜38の入場料金=80円 | * |
上越線・井野 | ・S23.12/25旅客乗降取扱開始 ・S32.12/20廃止→停車場 | S24=242円、S25=77円、S26〜28=0円の旅客雑収入 | |
奥羽本線・金岡 | ・S25.1/15?旅客乗降取扱開始 ・S27.2/25廃止→北金岡停車場 | S24=41円、S25=160円の旅客雑収入 | |
奥羽本線・前山 | ・S21.8以前 旅客乗降取扱開始 ・S26.3/1廃止→停車場 | S24=1008円の旅客雑収入 | |
羽越線・神山 | ・S26.4/1?旅客乗降取扱開始 ・S30.1/20廃止→停車場 | S24〜28迄の旅客雑収入合計=1649円 | # |
羽越線・中浦 | ・S26.4/1?旅客乗降取扱開始 ・S28.7/1廃止→停車場 | S24〜27迄の旅客雑収入合計=565円 | # |
羽越線・今川 | ・S24.4/1旅客乗降取扱開始 ・S62.4/1廃止→駅 | S24〜38迄旅客雑収入有、S34〜38の入場料金=5240円 | * |
羽越線・東酒田 | ・S19.4/1旅客の乗降を取り扱う ・S33.12/25廃止→停車場 | S24〜S29迄の旅客雑収入合計=4061円、S31の旅客雑収入=1100円 | |
陸羽西線・高屋 | ・S26.3/1?旅客乗降取扱開始 ・S27.2/15廃止→停車場 | S24=50円、S25=152円の旅客雑収入 | # |
信越本線・平原 | ・S21.4/1旅客乗降取扱開始 ・S27.1/10廃止→停車場 | S24=7329円、S25=4572円の旅客雑収入 | |
信越本線・長鳥 | ・S21.---旅客乗降取扱開始 ・S28.12/25廃止→停車場 | S24〜S27迄の旅客雑収入合計=3279円 | |
信越本線・東光寺 | ・S26.4/1?旅客乗降取扱開始 ・S28.7/1廃止→停車場 | S24〜S27迄の旅客雑収入合計=773円 | # |
鹿児島本線・西里 | ・S22.---旅客乗降取扱開始 ・S29.12/10廃止→停車場 | S26=25円、S27=10円、S28=75円の旅客雑収入 | |
長崎本線・本川内 | ・S19.---旅客乗降取扱開始 ・S27.6/1廃止→停車場 | S24=778円、S25=742円、S26=598円の旅客雑収入 | |
函館本線・仁山 | ・S18.---旅客取扱開始 ・S62.4/1廃止→駅 | S24〜28、S34〜38迄旅客雑収入有、S27/28/35/36の入場料金=0円 | |
函館本線・姫川 | ・S26.5/19旅客取扱開始 ・S62.4/1廃止→駅 | S24〜28、S34〜38迄旅客雑収入有、S27/28/35/36の入場料金=0円 | # |
函館本線・桂川 | ・S19.9/30旅客の乗降を取り扱う ・S24.9/27廃止→仮乗降場 | S24〜28、S34〜38迄旅客雑収入有、S35/36の入場料金=0円 | |
函館本線・北豊津 | ・S19.7/1旅客の乗降を取り扱う ・S62.4/1廃止→駅 | S24〜28、S34〜38迄旅客雑収入有、S35/36の入場料金=0円 | |
函館本線・新本別 | ・S20.6/1設置 ・S24.8/1廃止 | S24=1円の旅客雑収入 | |
函館本線・渡島沼尻 | ・S20.6/1旅客の乗降を取り扱う ・S62.4/1廃止→駅 | S24〜28、S35〜38迄旅客雑収入有、S27/28/35/36の入場料料金=0円 | |
室蘭本線・旭浜 | ・S18.9/25旅客の乗降を取り扱う ・S44.9/20廃止→仮乗降場 | S24〜28、S34〜38迄旅客雑収入有、S35=0円/S36=970円の入場料金 | * |
室蘭本線・小幌 | ・S18.9/30旅客の乗降を取り扱う ・S42.10/1廃止→仮乗降場 | S35〜S38迄の旅客雑収入=0円、S35の入場料金=0円 | |
室蘭本線・陣屋町 | ・S25.12/1?旅客乗降取扱開始 ・S28.7/15廃止→停車場 | S25=112円、S26=552円、S27=1600円の旅客雑収入 | |
根室本線・西庶路 | ・S26.4/1?旅客乗降取扱開始 ・S27.3/5廃止→停車場 | S24=1641円、S25=1911円の旅客雑収入 | # |
標津線・泉川 | ・S25.10/1?旅客乗降取扱開始 ・S27.3/25廃止→停車場 | S24=287円、S25=240円の旅客雑収入(S26は泉川駅として45円計上) | # |
旅客乗降取扱開始時期と旅客雑収入記録との間に若干の差が見られる信号場もありますが(#)、上表に載せた殆んど全ての信号場では 乗車券を売っていたと考えられます。さらには、10円以上の入場料金を記録している以下の信号場(*)では、なんらかの形で入場券を発行したのは明らかです。
(1)中央本線・新府信号場
新府信号場では、穴山駅の出札窓口「○B」の入場券が発行されたと言われています。穴山駅より十倍も不人気な新府信号場の入場券ではありましたが、それでも昭和27年から30年迄の4年間に423枚の入場券が売れていました。同じ頃の飯田線や深名線のチョー不人気駅に比べれば、実に立派な記録ですよね(下表参照)。
旅客雑収入(円) | 入場料金(円) | 残存10円券 | ||||||||||||||
S24 | S25 | S26 | S27 | S28 | S29 | S30 | S31 | S32 | S27 | S28 | S29 | S30 | 印刷時期 | 発行日付 | 券番 | |
新府 | 120 | 245 | 940 | 700 | 2,700 | 1,865 | 1,095 | 1,505 | 1,295 | 440 | 2,050 | 990 | 750 | 新潟4期 | S40.5.26 | 1063 |
(参考) | ||||||||||||||||
穴山 | 7,259 | 8,562 | 17,378 | 13,591 | 11,150 | 11,455 | 11,090 | 9,580 | 11,035 | 12,490 | 10,860 | 11,100 | 10,510 | 新潟5期 | S40.5.26 | 5877 |
(2)東北本線・高久信号場
信号場時代末期の昭和37、38年度の2年間に10枚の入場券が、また、駅に昇格した昭和39年度には17枚の入場券が発行されていました。駅昇格3ヶ月前のS39.6.9に発行された赤一条硬券入場券の駅名は、他の信号場と違い、堂々の「高久」になっています。券番=0286は入場料金の記録と比べて少し多いような気もしますが、昭和30年頃には新潟印刷場は3期券に切り替わっていたらしいので、この様式の券が昭和30年頃から売られていたと考えても不自然ではないかも。
旅客雑収入(円) | 入場料金(円) | 残存10円券 | |||||||||||||||||
S24 | S25 | S26 | S27 | S28 | S32 | S33 | S34 | S35 | S36 | S37 | S38 | S39 | S37 | S38 | S39 | 印刷時期 | 発行日付 | 券番 | |
高久 | 467 | 526 | 648 | 642 | 595 | 370 | 630 | 425 | 365 | 240 | 240 | 315 | 770 | 20 | 80 | 170 | 新潟3期 | S39.6.9 | 0286 |
(3)羽越線・今川信号場
越後寒川駅の2番出札窓口扱いで 今川信号場の30円入場券が発行されていたのは有名な話ですが、実は その10年以上前から、年平均100枚の入場券が発行されていたのです(下表参照)。昭和24年度から旅客取扱収入の記録が残る今川は、昭和25年度以降、毎年1000円以上の旅客雑収入を計上し続けた人気の信号場で、昭和34〜38年度の5年間の入場料収入も5240円に達していて、不人気駅も真っ青の商売繁盛ぶりだったようです。chabin の独断と偏見と見た目による大胆な鑑定結果は、「越後寒川駅の出札窓口○B扱いの赤一条10円券として発行!」 となりますが、ひょっとすると、越後寒川駅○A窓口発行の赤一条10円券が今川信号場の切符かも?
旅客雑収入(円) | 入場料金(円) | 残存10円券 | ||||||||||||
S33 | S34 | S35 | S36 | S37 | S38 | S34 | S35 | S36 | S37 | S38 | 印刷時期 | 発行日付 | 券番 | |
今川 | 1,540 | 1,579 | 1,250 | 1,680 | 1,855 | 2,725 | 1,240 | 850 | 1,130 | 930 | 1,090 | |||
(参考) | ||||||||||||||
越後寒川 | 17,677 | 20,120 | 21,610 | 24,470 | 28,945 | 30,800 | 16,750 | 19,280 | 22,580 | 26,240 | 28,610 | 新潟5期 | S41.7.30 | 0277 |
(4)室蘭本線・旭浜信号場
昭和36年度、旭浜信号場の入場料金に970円が記録されています。ミスプリントかもしれないので、念のため、駅別旅客取扱収入表に残された旭浜信号場の収入記録を以下に示します。もし、これがホントーなら、長万部駅か静狩駅の A番?か○B番?出札窓口発行の入場券97枚が この世に出たかもよ。
旅客雑収入(円) | 入場料金(円) | |||||||||||
S24 | S25 | S26 | S27 | S28 | S34 | S35 | S36 | S37 | S38 | S35 | S36 | |
旭浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10 | 0 | 0 | 1,480 | 40 | 60 | 0 | 970 |