2.相模線の鑑定

 以前、続デタラメ切符鑑定団で首都圏の駅の鑑定をした時、相模線では一部の駅を除いて、赤線入場券の売れ行きが非常に悪いことが分かりました。その後の調査で、昭和37年に無人化された宮山駅と倉見駅の各々昭和36年と37年発行の東京印刷10円2期券が奇跡的に残されていることも分かりました。まだ赤線入場券の生存を確認できていない社家、門沢橋、入谷を含めて、三丁目の夕日の時代に無人化された相模線幻の5駅の入場券発行枚数に迫りたいと思います。
 以下の表は、鉄道統計年報(東京支社)管理局編に記録された昭和36〜39年度の相模線各駅の入場料金を示したもの。

相模線 入場料金(円) 残存10円券
S36 S37 S38 S39 合計 印刷時期 発行年度 券番
北茅ヶ崎 30 40 180 160 410 東京2期 S40 68
香川 50 20 160 190 420 東京1期 S40 79
寒川 690 730 960 1,370 3,750 東京6期 S40 769
宮山 37.10/1無人 20 20 40 東京2期 S36 19#
倉見 37.10/1無人 20 40 60 東京2期 S37 不明
門沢橋 37.10/1無人 20 0 20
社家 37.10/1無人 10 0 10
入谷 37.10/1無人 10 0 10
相武台下 180 280 280 410 1,150 東京3期 S40 328
下溝 10 40 170 80 300 東京1期 S40 51
原当麻 70 70 230 170 540 東京6期 S40 119
番田 70 50 190 140 450 東京2期 S40 89
上溝 70 120 340 260 790 東京2期 S40 193
南橋本 150 150 350 660 1,310 東京6期 S40 256

 上表から、昭和27年から35年迄の各駅の赤線入場券発行枚数を鑑定してみましょう。

(1)香川、下溝(東京印刷1期券)

 @香川<36*
 A下溝<20*
 
 *=(残存10円券の券番−1)−S36〜S39入場料金合計÷10

(2)北茅ヶ崎、番田、上溝(東京印刷2期券)

 東京印刷2期券は10円への値上げ後、1年以内に登場していますが、この3駅の不人気さから考えると、運賃改定後に設備した1期券を1年以内に売りつくして追加発注したものとは思われません。おそらく、各駅間で、入場券の発注時期に数ヶ月の違いが生じ、10円券は2期から設備した駅も多かったと考えるのが自然かも。戦時中に国有化された青梅線でも、一番不人気だった石神前と白丸の10円券は東京印刷2期券しか確認されていないんです。と言うわけで、香川・下溝と同様に、S27年度〜S35年度の発行枚数は

 @北茅ヶ崎<26*
 A番田<43*
 B上溝<113*

(3)宮山、倉見(東京印刷2期券)

 券番を確認できないけれども、北茅ヶ崎などと同じ理由で、2期券しか発行されなかったと考えられます。S27年度〜S35年度の発行枚数も、香川や北茅ヶ崎などと同じくらい少なかったと思われます。お持ちの方は、裏面の券番を確認してみて下さい。

#:「S36に発行された宮山駅入場券の券番は0019」との情報を頂戴しました。S37に2枚の発行なので、宮山の10円券は21枚か22枚しか発行されなかったことになります。鉄道統計年報も券番も、とても正確だったことがわかりますね。教えて下さった方、どうも有難うございました。

(4)門沢橋、社家、入谷

 無人化1年前に入場券が1枚も売れなかった幻の駅。2年前の発行枚数も、門沢橋が2枚、社家と入谷は1枚しか売れていません。門沢橋は、S27年度〜S35年度の旅客雑収入が比較的多いので、20〜30枚は発行されたかもしれないけれど、社家と入谷は三丁目の夕日の時代の頃まで、チョー不人気駅だったので、2桁に達していなかったかもね。
 ところで、上表には、全ての駅でS36年度の入場料金が10円以上記録されています。もしかすると、今や高齢で高名になった若き日の入場券鉄ちゃんが 49年前のある日に各駅1枚づつ購入したのかもしれません。そうであれば、同じ発行日付を持つ入場券が、各駅1枚づつ奇跡的に残されている可能性はゼロではないかもよ。

今回の鑑定方法も、chabin の独断と偏見と見た目に基づく イイカラカンなものですので、全く信用できません。が しかし、鑑定に使用した切符は全て実在の入場券です。また、入場料金に関する記事も、鉄道統計年報に従って 忠実に表現したものであり、真っ赤なウソではございません。