足尾線・原向駅の鑑定

 昨年のネットツアー2009 「無人駅の入場券発売状況(関東編)」では、開業以来の無人駅とされる原向駅にも入場券を売っていた時代があり、その無人化時期を昭和35年3月1日と鑑定しましたが、今回、戦前から昭和39年までの足尾線各駅の駅別旅客取扱収入が明らかになりましたので再鑑定します。

 下表は、昭和4年から16年迄の原向駅における入場料金の記録と年平均入場券発行枚数(5銭券に換算)を示したもの。

駅名 入場料金 合計 枚数/年
S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12 S13 S14 S15 S16
原向 52 41 46 25 29 28 36 42 26 26 25 43 45 464 714
(参考)
相老 3 6 5 3 4 2 2 7 6 9 47 72
大間々 27 21 18 12 11 11 10 15 19 22 29 46 33 274 422
上神梅 3 1 1 5 8
水沼 4 5 3 3 2 2 1 2 1 2 6 3 9 43 66
花輪 17 17 13 10 8 7 9 6 4 11 8 11 14 135 208
神土 10 4 2 1 1 1 3 5 27 42
沢入 24 16 20 14 16 20 15 21 20 19 22 32 43 282 434
通洞 512 411 503 383 485 513 588 654 477 518 484 496 423 6,447 9,918
足尾 123 99 120 64 74 83 78 79 47 43 41 70 56 977 1,503
間藤 179 161 208 120 122 134 142 168 123 107 94 136 106 1,800 2,769

 この表から、原向は毎年500枚以上の入場券が売れていた普通の有人駅だったことが分かります。戦前は、相老、水沼、神土が原向の10分の1、上神梅は100分の1しか売れていなかったわけで、赤線5銭入場券に関しては、この4駅の方が原向よりも希少かもしれません。残念ながら、入場料金が記録されている戦後の鉄道統計年報は、昭和37〜39年度の3年分しか見つかっていないので、原向の5円券や10円券の発行枚数は鑑定不能です(下表参照)。

駅名 入場料金 残存10円入場券
S26* S27* S28* S32* S33* S34* S35* S36* S37 S38 S39 印刷時期 発行日付 券番
原向 1,545 1,251 863 495 225 110 80
(参考)
相老 592 665 1,195 2,557 2,905 1,475 1,536 2,250 1,560 1,880 2,010 新潟5期 S40.11.5 1908
大間々 2,769 4,035 3,675 2,785 2,930 2,625 1,675 2,925 1,600 1,000 850 新潟5期 S40.10.27 2940
上神梅 271 348 241 250 205 295 270 110 40 30 10 東京1期 S40.12.27 0101
水沼 360 437 141 340 340 530 250 490 70 70 90 東京2期 S40.10.27 0123
花輪 872 1,200 825 1,055 780 580 1,230 500 160 140 280 新潟5期 S40.9.12 0416
神土 1,491 5,560 332 316 170 285 80 50 70 60 110 東京1期 S40.10.27 0110
沢入 1,364 2,050 1,070 830 830 1,005 1,000 620 530 700 760 新潟5期 S40.10.27 1030
通洞 8,026 10,570 15,060 11,770 11,515 12,765 12,990 12,805 15,420 18,550 10,780 新潟5期 S40.10.27 8474
足尾 2,188 1,319 4,875 4,691 4,681 2,710 3,355 2,560 2,350 2,470 1,550 新潟4期 S38.1.5 3200
間藤 502 1,215 1,055 685 895 1,215 1,040 755 600 580 600 東京2期 S33.10.13 0493
*:S26〜S36は旅客雑収入

が しかし、この表を使えば、原向については次のような鑑定ができるかも。

(1)無人化時期はS35年3月1日ではなくて、S35年度内のS35.4.1〜S36.3.31迄の間だった。
(2)5円券は発行された可能性が高い(沢入と同じ位の枚数が売れたと考えてもよさそう?)。
(3)10円券はS26年度後半から数十枚は発行されたと推測されるけれども、S33年度以降は不人気駅になり、殆んど売れなかった?

なお、東京印刷10円券が残されている上神梅、水沼、神土、間藤の4駅は、以下の点で、入場料記録と券番とは良く符合します。

◎上神梅:戦後は足尾線で一番不人気な駅。S40.10.27に入場券買い占め隊が数十枚買い占めた2ヶ月後でも、券番=0101なのだから。
◎水沼:赤線10円券時代は、上神梅、神土の次に不人気な駅。S27年度からS39年度迄の間に毎年10枚前後売れていたらしい。
神土:戦前と同様、上神梅の次に不人気だった駅赤線入場券を入手できたのは、入場券買い占め隊のお陰かもね。
◎間藤:S33.10.13発行の東京10円2期券の券番=0493なので、S27年頃から毎年60〜70枚程度売れていたようです。


以上の足尾線入場券をご覧になれば、これまで未回答だった入場券についての常識問題「第7問 場違いの入場券を探せ!」の答は自明の理。(9)赤帯入場券10枚セットの場違い券は、山陽本線相生駅の入場券でした。