9.その他 北海道の駅の鑑定
下表は、昭和40年頃までに廃止、無人化された北海道の駅で、昭和30年代の鉄道統計年報に入場料金が記録されているもの。石炭輸送で栄えた路線と、そうでない路線とでは、入場券発行枚数に桁違いの差が見られます。
駅名 | 入場料金(円) | |||||
S31* | S34* | S35 | S36 | S37* | S38* | |
瀬棚線・茶屋川 36.6/1無人 | × | 560 | 250 | 10 | ||
幌内線・幌内住吉 33.8/5開業、40.5/1無人 | 2,970 | 3,070 | 2,240 | 1,480 | 4,750 | |
歌志内線・文珠 36.2/10無人? | 7,310 | 7,310 | 6,330 | 16,780 | ||
手宮線・色内 37.5/15廃止 | 14,210 | 17,085 | 19,500 | 18,070 | 2,540 | |
手宮線・手宮 37.5/15廃止 | 9,955 | 16,780 | 13,900 | 14,700 | 1,640 | |
富内線・豊城 31.8/15無人 | 10 | |||||
池北線・川上 37.10/1無人 | × | 70 | 110 | 10 | 0 | |
名寄本線・豊野 34.6/1無人 | 150 | 10 | ||||
湧網線・北見平和 29.1/1停車場、35.9/25無人 | 70 | 25 | 30 | |||
湧網線・二見ケ岡 36.4/1無人 | 10 | 100 | 0 | |||
相生線・上美幌 37.4/1無人 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
根北線・越川 32.11/10開業、37.4/1無人 | 170 | 90 | 30 | |||
(参考) | ||||||
興浜北線・豊牛 | 100 | 20 | 0 | 30 | 40 | 20 |
渚滑線・下渚滑 | 170 | 50 | 0 | 0 | 10 | 10 |
*:S31、S34、S37、S38は旅客雑収入 |
(1)瀬棚線・茶屋川駅
S20年代後半も 旅客雑収入が500円未満の不人気な駅だったけれど、無人化1年前のS35年度には25枚が発行されているので、生存の期待が持てそうです。が しかし、入場券に限らず、この駅で発行された実券は見かけることもレアな切符のようです。
(2)幌内線・幌内住吉駅
開業から7年足らずで無人化された幌内住吉は、S35〜36年度の2年間に531枚の10円券が発行されていました。このペースならば、推定累積発行枚数は約2000枚で、今もなお、かなりの枚数が生存している模様。
(3)歌志内線・文珠駅
文珠の営業記録には2つの疑問点があります。一つは、S30年代に かなりの入場料収入がありながら、10円券の実券が見当たらない点で、あと一つは、無人化日がS36.2.10と言われているのに、S36年度に1678枚もの10円券が発行されている点です。でも、S27年度以降、年間の旅客雑収入は6000円以上を記録しているので、10円券は5000枚以上発行されたと考えてもおかしくありません。そのため、かなりの枚数の10円券が生存しているかもね。
(4)手宮線・色内駅と手宮駅
切符屋さんの評価では、手宮は時々出現するけれども、色内はめったに出ない希少券で、風評による出現確率(?)は10対1なんだとか。が しかし、S35、36年度の営業記録は
全く その逆で、【色内=3757枚】 VS 【手宮=2860枚】。しかも、S26年度以降の旅客雑収入で 色内が手宮に負けたことは1度もないんです。従いまして、「10円券の発行枚数は
色内の方が多かった」と、切符屋さんとは正反対の鑑定をするのがリーズナブルかもよ。
(5)富内線・豊城駅
S20年代後半から旅客雑収入も少なく、チョー不人気だった豊城ですが、10円券発行の可能性が全くなかったわけではありません。S27年度=115円、S28年度=20円、S30年度=150円の旅客雑収入を計上していますから、数枚程度は発行されたかもしれません。
(6)池北線・川上駅
S29年度が2915円だった以外は、旅客雑収入が少なかった川上。茶屋川よりも10円券が残っている可能性は低そうです。でも、無人化前の2年間に12枚発行されたのですから、生存の可能性はゼロでないかも。
(7)名寄本線・豊野駅
入場料金の記録が残されていないので断定はできませんが、10円券が発行された可能性はとても低いと思われます。同じような環境にあった興浜北線・豊牛や渚滑線・下渚滑の10円券が 昭和35年頃まで、殆んど売れていなかったからです。
(8)湧網線・北見平和駅と二見ケ岡駅
北見平和はS35年度に10円券3枚が発行されたので、もしかして数枚が生存しているかもしれません。一方、二見ケ岡の10円券は発行されたかどうか、非常に微妙です。むしろ、戦前(S10〜16年度)に入場料金=19円を記録しているので、5銭券の方が生存している確率は高そうです。
(9)相生線・上美幌駅
S27.4.1〜S31.3.31迄の旅客雑収合計が僅か30円だった上美幌。上表でS31年度以降も収入は殆んどなく、10円券が発行された可能性は非常に低いと思われます。天理参考館に開業初日のNO.1券が収蔵されていますが、探すならば、渚滑線・下渚滑のような戦前の5銭券の方がよいでしょう。S7〜16年度の10年間に940枚が発行されているからです。
(10)根北線・以久科駅と越川駅
秘境日高三股のHPに展示されている越川の10円券がS34.3.21発行の券番0015なので、越川の累積発行枚数は27枚以上、42枚以下と鑑定できます。S32、33年度の営業記録がないため、以久科の発行枚数を鑑定するのは困難ですが、終着駅・越川よりも多くなかったと考えるのが自然でしょう。開業初日に数枚から10枚程度売れた後は、1枚も売れずに無人化(S33.8.20)を迎えたのかもね。