第2回 縦書き切符の巻


古来より、縦書きだった日本語だが、硬券切符に関しては、鉄道開業当時から、横書きが用いられた。
横長の看板などを除けば、横書きの文章など存在しなかった時代に登場した横書きの乗車券は画期的だったに違いない。江戸時代の通行手形は勿論のこと、明治時代の人力車の切符も縦書きだったのだから。

左の切符は、東京鉄道(後の東京市電)が発行した見開き式の特別乗車券で、通用は明治41年1月31日限り(?)。上が外側、下が内側のパスポートライクな切符。一部(「注意」)の記述は横書きだが、他はすべて縦書きである。

縦書きの硬券切符は非常に少ない。初期の硬券入場券の一部に縦書き券があったといわれているが、その殆んどは博物館か、高齢で高名な収集家の手元にあり、お見せすることができません。
代わりに、札幌鉄道局が発行した赤線二条の特別入場券は如何でしょうか?
戦前に発行されたこの切符は、特定の駅用ではないらしく、もしかして、出征兵士を送る関係者のためかもね。



以前、「一発退場! ホワイトカード」でご紹介した精算済出場券は、大東急時代の小田急新宿駅で昭和18年7月11日に発行された数少ない縦書き切符。B型よりも、縦横とも約1ミリ小さいサイズ。裏面は何も印刷されていない。





エドモンソン型の硬券も縦に使えば、縦書きの日本語に十分適合できるのだけれど、どういうわけか、縦型切符はとても少ない。横書き文化の欧米でさえ、縦型切符はかなり使用されているのだから、日本語の特性を生かしていないのは、もったいないかもね。