第1回 右書き切符の巻

古来より、日本語は右書きだったので、鉄道創業当時の明治から大正初期までは、鉄道切符も右書きだった。左の切符は、乗車券収集家から画像を提供してもらったもの。「いはぶち(岩淵)」は現在の富士川駅。明治30年発行と思われる上・中・下等時代の乗車券。鉄道局、鉄道庁時代に発行された実券はほとんど残っていない。

左は、明治31年8月29日に京都で発行された鉄道作業局時代の無地紋の乗車券。鑑定の結果、「きやうと」は京都だとすぐに分かるが、「れほさか」が「おほさか(大阪)」だったとは!



左は、明治44年3月29日に京都で発行された帝国鉄道庁時代の網目模様の乗車券。「しんばし」ではなくて、わざわざ「志んばし」としたのかよく分からない。帝国鉄道庁時代は明治40年4月から明治41年12月までとされているが、鉄道院時代になっても、残った帝国鉄道庁時代の券を利活用していたようだ。

英国で発明された鉄道乗車券は、当然グローバルスタンダードの英語標記の左書きだった。日本の鉄道切符が右書きに変わったのは大正8年とのこと。変更当時は相当抵抗があったと思われるが、昔も今も、強き者にはすぐに巻かれてしまう弱い日本の平民にあっては、あっという間に巻かれてしまったようだ。