「さけ」



いつの間にか僕は
こうして仲間と酒を囲み
忙しい日常を忘れるようになった

忘れられる時間を求めていた

過ぎた時間は
いつも後悔の連続だが
ふと気づくとその時間が
心地良かったと思える

そんな風に感じていた


過ぎ行く時間

気がつけば空を見上げる事も
星を見ることも忘れていて
夜も朝も同じように時間が過ぎ
少しずつ大人になっていた


僕は
そんな夢のような現実を
ただ避けていた
見ていたくない現実から
ただ逃げていた
目をそらしていたんだ



見えないオトナ
変りたくないジブン

変わりゆく大人
見えていく自分


いつもこの二つに縛られ
現実を少しずつ受け止め
ジブンの周りに柵を張る

そしてオトナになる自分


それが嫌だったんだ
だから僕達は酒を飲んだんだ


後悔した過ぎた時間
それは
自分が成長出来なかった
時間だと思うから
自分の成長を認めない
時間だと思いたいから

だから仲間と酒を飲んだ


僕達はオトナになりたくなかった


極々素直に単純に

ただ子供でいたい
それだけだった


極々普通に単調に

僕達は作業をはじめた

いつまでも
自分を忘れないように


僕は僕の柵を
彼は彼の柵を
彼女は彼女の柵を

ためらいながら
惜しみながら
自分であるために

僕は彼の柵を
彼は彼女の柵を
彼女は僕の柵を

望みを持って
前を向いて
仲間であるために




壊し始めた





#004 2002.3.10 「さけ」



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