interview vol.17  「公団住宅再考」  2008/09

倉田さんは、以前公団のマンションに住んでいたそうですが?
倉田 1960年代に建築された公団住宅が気に入っています。
  当時は白亜の公団とも言われ、
  流行のダイニングキッチンのスタイルが若者の羨望の的となりました。
  私が住んでいたのはずっと後の1990年代で、
  バブル崩壊後も装飾偏執路線をとっていた都市住宅公団が、
  自ら「目鼻を付けた豆腐を並べたようなつまらない住宅郡」と、
  言っていた頃ですが、
  その画一的で無駄のない、いつまでも古くならないデザインが気にいっています。
  全戸真南向きで冬至日でも1階の住まいに陽が入るようになっていて、
  低層でエレベーターなどなく、隣棟間隔に余裕があり今ではたっぷりした緑が成熟しています。
  住宅の間取りもコンパクトでこじんまりまとまっていて、
  3室が南向きの部屋で水周りを含め全ての部屋が風通し良く計画されています。
  狭い部屋を飛び出して道路で遊んでいる子供たちの声も聞こえてくるのも微笑ましい限りです。
ただ、古いと寿命が気になりますね。
倉田 コンクリートの寿命は60年と言われていますが、
  同潤会アパートのように70年から80年経つものもありますし、
  建物が建て替えられる理由も利便性や経済的理由、設備の老朽や住宅規模など、
  別の要素による理由が多いのが実情です。
  また、
  築40年前後の団地の場合、入居者に高齢者多く、
  建て替えの話もなかなか進まないのが現状です。
  私の住んでいた団地も、
  入居当時すでに建て替えの話がありました、
  床面積の上乗せ分を分譲して自己負担0%の試案も示されましたが、
  築後の人口密度の上がった住環境への不安や、
  引越しの煩わしさや仮住まいの費用負担などもあり、
  2割ぐらいの人は反対していたと思います、
  もっとも今では自己負担0%というわけにはいかないでしょうが、
  取合えずメンテナンスをしながら現状維持しています。
なかなか簡単には建て替え出来ないのですね?
倉田 建て替えがうまくいくには、
  立地が良いなど将来的に土地の価値が高い事や、
  敷地がゆったりしていいて容積に余裕がある事、
  自治会がしっかりしていて健全な区分所有者で構成されている事、
  などが上げられると思います。
  管理費を滞納している人に建て替えの資金が調達出来るとは思えません。
なるほど。
倉田 しかし、建物の管理がきちんと行われていれば、
  共用部分の設備等も再整備されているでしょうし、
  専用部分は所有者がある程度自由に手を入れられるわけですから、
  立地や環境は新築では考えられない好条件の所が多いと思いますので、
  建て替えるまでもなくそれぞれの住戸の生活に合わせたリフォームによって、
  快適さと、新築にはない落ち着いた理想的な住まいが出来ると思います。
  環境に対する関心が高まってきた昨今、
  社会的にも、建て替えでエネルギーを無駄に消費するより、
  古いものの良い所を見つけて大切にしていこうという方向に、
  社会も変わっていくのではないでしょうか。
   

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