ツムジ・リミックス3

 

B

 4人が迷って、途方に暮れていた時、その早朝の湾岸通りを、とあるプロダクションの社長が仕事明けで走っていました。
 涙目になりかけていた4人を見つけると、プロダクションの社長は「お前達、なぜか目がクソ輝いている。」と何も知らないままきっぱり言い、ささっと自分の車に乗せました。
 こうして4人組は社長の事務所がある街まで来たのです。
 4人はまだ陸の言葉が良く分かっていなかったため、とりあえず迷っていたところを助けて貰ったのだと思い、移動中も、事務所に着いてからも、「あなたは親切だ」「あなたは親切だ」「あなたは親切だ」をひたすら連呼しました。
 一人が「あなたは親切だ」と言っては、また黙り込み、数十秒たつと、今度はまた違う一人が「あなたは親切だ」と言って、黙る。
 それは4人が知っていた陸で通じる唯一の言葉で、家出同然で海を出る前にそれぞれの親達に教えて貰った大切な言葉でもありました。
         
 これによって気を良くした社長のおかげもあって、4人組は目的もなく陸に上がってからわずか2時間半でデビューが決定しました。

 進む     TOP