サンタ・クロースは悩んでいる。資金が底をついたから。今年は事業の失敗により、子供たちにあげるプレゼントを買う資金が無くなってしまったのである。 「世界中の子供たちが私を待っている。待っているのだ。くそったれ。どうすればいい」 うろうろし始めて一時間ほどたった時、彼の足はぴたりと止まる。彼はある考えを思いついたから。 「ある子供の家から、おもちゃがひとつ無くなる。他の家の子供にそのおもちゃがプレゼントとして、届く。それを繰り返せば・・・・」 彼は最低な考えを思いついてしまう。かわいそうな老人は、なおもつぶやき続ける。 「おもちゃがひとつ無くなったところで、子供は馬鹿だから気づかん。私が負担するコストも・・・・ゼロ」 彼はつぶやきながら、自然と笑みがこぼれてしまう。 「こんなんじゃ、目立つよね」 そう独りごちて、おもむろにカラースプレーを取り出すと、いつもの衣装に噴射。執拗に何度も。 「メリークリスマス」 黒いサンタ・クロースはそう儀礼的につぶやいて、一軒目の煙突に素早くもぐりこむ。 終 |