「一発」シリーズ第2弾   KEEP!
                            き い い ぷ


試合開始の笛が鳴った。

矢嶋 「オッケー、永島ぁ。キープしろ。そのままキープ!キープ!」

永島 「え?いきなりキープするんですか。もうちょっと徐々にやっていった方が・・・。」

矢嶋 「いいんだよ。ここら辺で1回やっといた方が、あとが楽だから。ほらっ!ちゃんとキープしないと取られるぞ!」

永島 「ちょっと1回、そっちに渡していいですか。お客さんもだんだん飽きて来てるみたいだし。」

矢嶋 「馬鹿野郎!いいからキープすんだよ。もっと腰を使え。そうそう、いいね。おっ、何だよぅ。そんなキープもできんのかお前。」

永島 「はい、ちょっと前に親父から習ったもんで・・。」

矢嶋 「そうかぁ。そうなると、そっちもいいなぁ。捨てがたいよな、両方。」

川島 「いいからよぅ。がつんと決めちまえよ、そろそろ。一発で決めるって言ったろ、お前さんは。」

矢嶋 「いや、もうちょいキープした方がいいんすよ、今は。川島さんのやり方はちょっと古いんすよ。みんな言ってますよ、古いって。」

川島 「なんだとこの野郎!おいっ、どうなんだ古いのか、永島!お前もそう思ってるのか!」

永島 「そ、そんなことないっすよ。大丈夫ですよ。」

矢嶋 「そんな事言ってるくせに、現に今お前はキープしてるじゃねえかよ!いい子ぶるんじゃねぇよ!」

 こんなんじゃ、今日の試合も一発で決められることは無さそうだ、と永島は確信した。


  内輪もめにうんざり