フレンドリー大冒険 第五話


 ハリーは撃たれた肩を押さえながら、打開策を考えていた。銃撃は休むことなく続いている。ボブが口を開いた。

 「このラジオって全国ネットだろ。ってことは、いきなり俺達はイングランド全土のお尋ね者になったの?俺達、もう犯罪者ですか。」

 頭が混乱しすぎているのか、ボブの言葉の最後は敬語になっていた。ボブはいきなり机の上のマイクをつかむと、マイクに向かってわめき出した。

 「おい!聞いてるか、ブラウジーニ女王!俺達が何をしたっていうんだ。ジェシカなんて、撃たれて鳥みたいに、それこそハクトウワシみたいに吹っ飛んだんだぞ!お前、剣を返せばすぐにすむ話じゃねぇか、馬鹿!」

 そこまで言ったところで、ボブの持っていたマイクが一瞬で撃ち抜かれ、粉々になった。ボブは悲鳴を上げながら、急いで床に伏せた。

 「ボブ、無事か?」

 ハリーが声をかける。

 「ああ、なんとかね。これ以上余計な事を言わせないようにって撃ったんだろ。ところで、俺達って何の罪で犯罪者になるんだ。」

 「女王暗殺計画を立てたとかそういうのだろ。狙撃の話をした直後に銃撃が始まったし。そういう話が出るのを待って銃撃するつもりだったんだろうな。」

 「ちくしょう。汚い奴らだ。もう泣きそうだぜ、俺。トイレに行きたいし。それにしてもどうすんだ、これから。」

 「応戦しよう。」

 「えっ?」

 突然のべスティの一言にハリーとボブは固まった。

 「僕は銃を4丁持ってる。こんな時のためにいちおう持ってきておいた。使おうよ、銃。」

 ハリーはなかなか銃を受け取ろうとしなかった。

 「どうした。撃ち方が分からないのか。俺が教えてやろうか。」

 ボブが声をかける。

 「いや、これを使うとさらに罪が重くなるんだな、と思って。」

 「でも死ぬよ。撃たないと。正当防衛だし。しょうがないよ。」

 「そうだな、正当防衛なんだよな、いちおう。」

 「そうそう、正当防衛。」

 ハリーとボブはべスティから銃を受け取ると、跡形もなく砕けた、スタジオの窓に向かって銃を撃ちまくった。マイクの赤い光もすでに無い真っ暗なスタジオに、銃撃による光の点滅があわただしく巻き起こった。ハリーは自分の家の前にあった壊れた街灯を、ぼんやりと思い出した。もちろん、思い出しながらもきちんと銃は撃っていた。ハリー達から撃ってくる事など予想していなかったのだろう、スタジオの外ではたくさんの人が立て続けに後方に吹っ飛ばされていった。
 ハリーにもその黒い人影は見えており、確かにボブの言う通り、ハクトウワシのように見えた。ハクトウワシがどんな鳥なのかは知らないが、たぶんあんな感じなのだろうと思った。ハリーは、ボブが自分と同じように、ジェシカが吹っ飛んだ時の様子を「鳥のようだった」と捉えていた事に関して、やはり友達同士は性格も似るのだと再認識していた。それとともに、友人のジェシカが死んでしまったという事実も思い出された。
 今ごろになって、その悲しみがハリーを襲っていた。ハリーは正当防衛と復讐という二つの理由で銃を撃つことにした。ある意味で二丁拳銃だ。ハリーは、奥歯をぎりぎりと噛み締めながら銃を握り直した。

 ガスンガスンぎりぎりガスンぎりガスンぎりぎりぎりガスン

 8月19日午後11時25分、ハリー・シュトルンツル、ボブ・ディッキ―、べスティ・ドゥの三名は殺人犯デビューした。