5月の。2006。

5月22日 22:23 「お犬様」
とある曇りの日に、犬を飼っている友人のお宅を訪問した。犬種はミニチュアダックスフント。

普段、犬との接触が皆無なので、観察する事にした。

まずは遠慮なく隅々まで眺め回す。ジロジロという擬音が部屋にこだまするくらいに丹念に、観る。
妙に長い胴体に、短い足。長細い顔。変な犬、としみじみ思う。

机の上にメジャーがあったので、犬の眼前まで引き出して先っちょを細かく揺らす。そして頃合を見てボタンを押し、しゅるしゅるっと回収する。
全然反応がない。とても不快な気分。三度、四度と繰り返したのだけど、ちらっと横目で見るくらいの反応しかない。少しくらい気を使ってはしゃいだ振りでもしてくれればいいのに。

そのくせ、僕がホットドッグをもしゃもしゃとやり出したら、途端に擦り寄ってきて、僕の顔とパンを交互に見ながら体を震わせ、「くふんくぅん」と甘えた声で鳴き出した。なんて羞恥心のない奴だ。当たり前だけど、僕の友人の中にだって、こんなに食い意地のはった者は居ない。

僕はここぞとばかりに「あぁ、うまい」を連呼しながら見せ付けるように咀嚼してやった。
飼い主の「なんて大人気のない人でしょう」という視線を無視して、僕は空っぽになったパンの包み紙を犬の前でひらひらさせた。

そして、しだいに薄れていく意識の中で思った。全くもって飼い主には向いていないと。