国立新美術館 別館

 六本木の青山霊園側に国立新美術館があります。ガラス張りの壁が波のようにうねった曲線 を持つ特徴ある外観の建物です。館内は天井までの吹き抜けになっていてこれまでに 見たこのとのない空間がありました。逆円錐型のものが立っていて上がレストランに なっています。展示エリアは3層構造で、この日はゴッホ展や日展が開催されていました。 ちなみにこの建物の設計者は黒川紀章さんです。コンセプトは「森の中の美術館」ということで、 館内にはミュージアムショップ・レストラン・カフェなどがあり親しみのある美術館となっています。

 この場所にはもともと旧陸軍の第一師団歩兵第三聯隊(連隊)の兵舎がありました。 1928年(昭和3年)に建設された建物ですが戦後は一時在日米軍に接収され、その後 東京大学の生産技術研究所として利用されていました。2001年(平成13年)になって 研究所が駒場に移転した後に解体され、現在の美術館が建設されたのです。

 兵舎は地上3階、地下1階の4層構造で、旧陸軍としては初の鉄筋コンクリート造の 兵舎建築なのだそうです。美術館の建設にあたって全てを取壊さず、一部を保存し美術館の 別館としたものです。表面はそのままに、また裏面は新美術館と調和するように配慮されています。
 別館の中には歩兵第三連隊兵舎に関連する資料(兵舎時代の写真、図面、模型、 調査報告書、記録映像)が展示されているそうですが残念なことにこの日(土曜)は入れませんでした。 開館は木曜、金曜のみです。

 この旧歩兵第三連隊兵舎は国立新美術館館内のフロアにミニチュアの模型が 展示されていました。上から見て「日」の字型の構造になっています。正面左手のわずかな部分 が残されたことがわかります。

 六本木ヒルズや東京ミッドタウンに代表される六本木周辺はかつては軍の街でした。 さらに遡れば伊達家や萩藩毛利家の大名屋敷があったといいます。
 大日本帝国陸軍の連隊のひとつ、歩兵第三連隊はこの地を駐屯地にしていました。 二・二六事件にも関係のあるところです。戦後、駐留米軍の街となりましたが、米軍住居 のあったところは防衛庁の建物となり、現在の東京ミッドタウンとなっています。
 
(2010年12月)



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