九段下ビル



 靖国神社のある九段坂の下、首都高5号線をくぐったところ(千代田区神田神保町、 爼橋(まないたばし)バス停)に付近の様子とはちょっと異なるこのビルが忽然と現れます。 1927年(昭和2年)に関東大震災後の復興事業として建てられた鉄筋コンクリート3階建て共同ビル、 九段下ビルです。

 1、2階が店舗とオーナーの住居で3階が賃貸アパートとなっているそうです。 たたんだ店もあるようですが、ビルとしてはまだまだ健在です。残念なことに改修作業のためか、 単なる危険防止のためか、壁にネットがかけられていました。


(2006年5月)


 平成23年12月5日、このビルの壁に解体工事を開始する旨の通知文が張出されました。 一部はすでに解体されていますが年明けから本格的に始まり、3月末までの工期です。 80年あまりの歴史に幕を閉じますが、このビルの最後の住人である画家の方と若手のアーティストたちにより 「さよなら九段下ビル」と題した作品展が催されました。ビル東側3階がアトリエとして開放され、 このビルの内部を見学する最後の機会となりました。

 入口から鉄棒の手すりのあるコンクリートの階段を上がって3階まで行くと狭い部屋が三つありました。 無骨なコンクリートの壁の部屋に作品がいくつか展示されています。塗料の経年劣化による亀裂や剥離も見られます。 この紋様でさえも築約80年の時が作り出した造形として作品の一つになっていました。
 部屋の外のベランダからビルの裏側も見られましたがかなりの廃状態です。 そして屋上にも出られました。
 


(2011年12月)



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