・・・ 川越市にある廃なもの・・・ 
(西武鉄道安比奈休止線)

 西武鉄道に安比奈休止線というのがあります。西武新宿線の南大塚から分岐して安比奈新田までを 結んでいたといいます。文化の日にその線路跡をたどり歩いてみました。

 (2005年11月記)

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 まずは「安比奈」の読み方ですが、いくつかのサイトを見ていると 「あいな」という場合と「あひな」という場合が出てきます。どうやら地名を言う場合は「あいな」で、 路線名を言う場合は「あひな」のようです。
 西武鉄道安比奈(あひな)線は、西武新宿線南大塚駅から入間川沿いの安比奈駅へと走る3.2kmの 貨物線でした。採取した砂利を運搬するための貨物専用線であったのですが長いこと休止されたままとなっています。 そして復活の見込みや必要性はまったくなさそうです。
 開通はかなり早く大正14年ということで、その後、昭和24年に電化されました。以後、 入間川の砂利運搬路線として使われましたが、砂利採取が禁止されたため昭和42年に休止路線になったといいます。 なお、休止扱いということで鉄道施設は殆ど撤去されず、以後ずっと放置されたまま残っているような状態です。 ひところ、新宿線の車両基地を作る計画があって、南大塚付近の土地買収などがあったようですが計画は消え、 皮肉にも廃墟路線のまま残りました。

 所沢方面から向った場合、南大塚の駅に入る寸前に錆びた線路の分岐があります。 この分岐はホームの左側を通過してどこかに向かおうとしているのですが、 ホームを出るかどうかというところで切れてしまいます。

 ホームからあがって、改札を出たところから見下ろすと途切れた線路の先に続きの線路が見られます。
 しかし、それとは別にその右手にコンクリート枕木の、長さにして20m位いしかない線路があります。 これが一時、車両基地として復活しようとしたなれの果てなのかと思います。

 休止線は左にゆるくカーブしながら国道16号線に向かっています。架線は木製の電柱に 片持ち梁方式で支えられ、形として残っています。

 国道16号線を横切るところでは、線路は段差のないようにきれいに埋められていました。 架線もそのまま道路を横切っていました。(車の交通量が多いため、ここを渡るには少し遠回りして 歩道橋を利用するのが無難です。)

 国道を横切った後も少しカーブが続いて、住宅地の間や、駐車場の脇を抜けたあとはまっすぐの 直線になります。「線路内立入禁止」(西武鉄道)のようなたて看板がありますがこの付近の人は無関係に 利用しているようです。庭木が張り出していたり、花壇や菜園になっているところもあります。

 もうひとつの道路を横切ると、小川があって、その上に朽ちたガードが見えるのですが これまた右手のほうに少し遠回りして近づくしかありません。そしてこの場所からは畑の中の一直線で、 はるかかなたの林に向かって伸びています。
 線路自体は野の草に覆われてしまっているのですが、片側の電信柱が延々と続くさまはまさに牧歌的です。

 これは、先の小川を渡ってすぐのところにある鉄橋です。線路上を歩いてきてこの鉄橋に差し掛かると、 腐りきった枕木が目に入ってとても歩いてわたる気はしません。(たぶん危険なのでやめたほうが良いです。)
 幸いにも鉄橋の下に水はなく、踏みあともついているので問題ありません。

 途中、農家が2〜3軒あるものの、のどかな田園地帯の中をひたすらまっすぐに約1km、 線路は細い道路を横切って雑木林の中に入って行きます。
 ここいらあたりが一番の見所なのだそうです。たしかに西武鉄道安比奈線を代表して一枚選べとなれば ここになるだろうと思いました。

 雑木林を抜けて道路を一本渡ったところでまた鉄橋になります。先ほどのものより短いのですが、 状態はまったく同じで今にも崩れそうな状態です。このあと緩やかに左カーブしていきます。

 カーブの先は入間川にかかる八瀬大橋に向う県道の高架部分に突き当たってしまいます。 仕方がないのでこの右手に迂回して反対側に抜けます。
 このとき、ほんの一瞬でしたが、懐かしい秋の草むらのにおいを感じました。 忘れていたあの子供のころのバッタを追いかけて遊んでいたころのにおいでした。

 県道を抜けた先は引き続き線路が残っていますが、もうここまで来ると架線はなくなって 電柱だけになっていました。しかも草におおわれています。モトクロスの練習場のようなところを過ぎ、 水道のパイプラインをくぐったところでポイント切り替え機を発見しました。

 起こしてみようとしましたが、できませんでした。
 このあたりから線路はいくつかに分岐し、駅構内に入っていったようです。

 背の高い草に覆われていてよくわからないのですが、複数の線路をまたぐようにしてかけられた架線の支柱が 複数本あります。このあたりが安比奈駅のあったところだと思います。
 あたり一面は草に覆われ、見通しも悪く不法投棄も多そうな物騒な雰囲気です。 この先も少し歩いてみたのですが、最後の電柱を見たあとはこれといって何も見つけられませんでした。 (車止めなどがあるらしいのですが未確認です。)

 ことのついでに次の駅(本川越)まで足を伸ばし、 小江戸川越の蔵造りの町を訪ねてみました。

 川越の城下町として、江戸のたたずまいを残した蔵造りの町並みが残されています。 観光資源としても整備され保存状態も良いようです。蔵造りの商店のほかにも昭和の雰囲気漂う店先が いくつか見られました。その一方でシャッターをおろした店や建物もあったのは残念です。

 これは川越のシンボル、「時の鐘」です。江戸の昔から市民に時を知らせてきました。 今でも一日4回、鐘の音が鳴るそうで日本の音風景百選になっているとのことでした。

 もうひとつ、川越のお祭りを彩るものはこの山車です。実物はなかったので川越まつり会館の壁に 描かれたものを写しました。とてもきれいです。


 西武安比奈線は休止線となっていますが、活用される気配はまったくありません。もし、 入間川の河川敷に一大レジャーランドでもできれば・・・、と思うのですがそれでもいまどきは困難でしょう。 また不思議なことにどの地図を見てもこの線路の存在は不明確で正確な位置はつかめません。 次回はGPSを用意して確認したいと思います。

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