御用済みの朽ちた教会があった
内部には第二次世界大戦終結以降の住民の記録資料が散乱
ルーマニアがまだ王国だった時代のものだ
キリル文字の入った石碑の十字架はもっと古く、
第一次世界大戦頃のものか
30年前、大洪水に見舞われ住民たちは、
少し離れた土地に村の集落を再建した
神様を祭る祭壇も新しい教会へ移され、
モヌケの殻となったこの教会は荒れ放題
不思議なものだ
ひび割れた壁のイコンも当時は大切に磨かれたことだろう
今は大陸の風がヒューヒューと吹き抜ける
この夏、かつて水害にやられた土地は、
皮肉なことに干ばつに泣かされていた
馬車が通ると蹄鉄が乾いた土を削り、
風がその砂埃を舞い上がらせる
さらに風は容赦なく、
耳にバリバリという雑音を叩き付けてくる
シャラシャラ、シャラシャラン・・・
ふと気付くと川のせせらぎのような音がする
乾いた大地に水はないはずだ
教会前のポプラの木か・・・
葉擦れの音が風の流れに乗って耳に届いたのだった
この村に到着して間もなく、この場所へ出向いた
あなた方は、この写真を見て住民を想うと
何か切ない感情を抱くかもしれない
けれど
荒廃して見える土地と、住民たちは相反するのだ
この後、私は、出会った村の人々の
『 豊かさ 』 とのギャップに驚くことになる