圧電ブザーの大音量ドライブ

　大音量で
　圧電ブザーを鳴らす　

２００６年　９月　３日(日)

■圧電ブザーを鳴らす　　
　圧電ブザーとは時計、携帯ゲーム機、家電等に内蔵されている、アラームや電子音を発生させる部品。簡単に鳴らすことができますので、ネット上を探せば色々事例を入手することができます。ところが、防犯用などで大音量が必要なときのドライブ方法は探してもなかなか見つかりませんでした。そこで、今回は圧電ブザーの大音量ドライブについて解説します。　　右写真　圧電ブザーの外観

■防犯ブザーのしくみ　　
　最近小学校の通学では、安全を確保するため、児童には全員防犯ブザーを持たせております。防犯ブザーは少し大きめのキーホルダー状で危険を察知した時、本体に差し込まれているピンを抜くと大音量でアラームが鳴るものです。とにかく、すごい音量ですが、この防犯ブザーの発音体にも圧電ブザーが使用されております。
ただ、今までのようにマイコンのポートからの直接ドライブではこのような大音量は発生できません。これには高い電圧(５０～８０Ｖｐ－ｐ)のパルスを圧電素子に加える必要があります。ですが、あの小さいボディと電池でどのようにして高い電圧を発生させているのでしょうか。これは次の項で解説します。

●市販の防犯ブザー
　ある日、落として運悪く、車に轢かれて壊れてしまった防犯ブザー。これを分解して中を観察することにしました。中にはコイル、トランジスター１個、抵抗数本とチップオンタイプのＩＣが基板上に樹脂封止されておりました。封止されて型番などがわかりませんので、チップの詳細は不明ですが、たぶんパルスを作り出しているものです。コイルは３端子のもので、これは２つのコイルを電磁的に結合し、磁気エネルギーを効率よく伝達するためと思われます。コイルはφ８ｍｍほどのドラムコアで０．１ｍｍほどの細い銅線が大量に巻いてあり、たぶん数百ｍＨと容量の大きいものです。
右写真　コイルの外観

大音量ドライブの秘密はこのコイルにあります。チップの発振により、トランジスタを経由してコイルの一次側をドライブします。これにより、２次側には昇圧した電圧が発生します。ここに圧電ブザーを接続することにより、大音量が得られるようです。後はいかに昇圧するパルスを作るかで、音量と消費電力がきまります。　
右図　コイルの回路図

■防犯ブザーの製作　　
●圧電ブザー
圧電ブザーはメーカー／型番によりの発振周波数が若干変わります。ピークの発振周波数はデータシートで確認するか、実際に周波数を振って（加えて）一番音量が大きくなる周波数を探します。
一般に３～５Ｋｈｚのはずです。

●圧電ブザーの入手について
まず購入する時ピークの発振周波数がわかること。ドライブ電圧（耐圧）はなるべく高いものを選択。
ドライブ電圧は大きいもので一般に入手できるのは３０Ｖｐ－ｐでしょう。購入される圧電ブザーのメーカー、型番、サイズにより音量が左右されます。現状私は次のものをお奨めします。
●販売パーツショップ　
　「マルツ電波」　京セラキンセキ製　KBS-27DB-3A　
　
●昇圧コイル
　今回のようなコイルの自作はとても大変なので、コイルは市販のもので代用します。
これにはマイクロインダクター２個を使用しますが、磁気エネルギーを効率よく伝達させるため同じ方向に密着させて実装します。コイルには極性がありますので間違えないように接続します。
以上の条件通りに実装しなくても音はなりますが、大音量にはなりません。

●昇圧波形
　波形は次のように音の波を発生させる、３～５Ｋｈｚのデューティ５０％の方形波に対しＬＯＷ期間は昇圧パルスとして、２０Ｋｈｚのパルスをのせます。
　昇圧パルスのデューティはＨＩ１：ＬＯＷ３のＨＩが３０％にしましたが、これは３０％以下となるような、パルスのほうが昇圧の効率もよく消費電力も少なくなるからです。
　次に、発振周波数は固定よりも、周波数を変化させることにより、音に変化をもたらせます。
　これは耳障りな音を発生させて、結果周囲に知らせることができます。また、人間は歳を取るにつれて、高い周波数が聞き取れなくなりますが、これも周波数を変化させて周囲の人に広範囲に知らせるためなのです。今回は３～５Ｋｈｚの間を７段階で変化させております。

●電源
　防犯ブザーはボタン電池２個又は４個で６Ｖの電源で動作するように作られております。
この電圧では大音量は得られませんので、先ほどの解説のように昇圧パルスと発音パルスを合成したパルスでコイルならびに圧電素子をドライブします。
発振源には外付け部品が少なくなるようマイコンを使用しますが、マイコンのＶＤＤは５Ｖです。しだかって、６Ｖの電源から、ダイオードを経由してマイコンのＶＤＤに供給します。
これでも少し高めの電圧ですが、動作時は電池の電圧降下もありますので、問題はありません。
又、このダイオードにより、電池の逆接続も防止できます。

●回路図とソフト

　・防犯ブザー
　　携帯用として、小型に製作するとよいでしょう。　
　　ソフト　　「emg_alarm.asm」　「emg_alarm.hex」
　　回路図　「emg_alarm.pdf」

　・防犯ブザー　衝撃センサー付き
　　窓ガラスなどに付けて使用する事を前提として製作
　　ソフト　　「shock_alarm.asm」　「shock_alarm.hex」
　　回路図　「shock_alarm.pdf」
　
■圧電ブザーの規格外使用について　　
　この回路とソフトでは圧電ブザーに８０Ｖｐ－ｐ以上のパルスを加えております。もちろん規格外の使い方ですが、実際販売している防犯ブザーもたぶん、オーバードライブしているはずです。
このような使い方でどのように、劣化が早まるのか、故障するかはまだ、わかりませんが、今までの経験上、不具合が発生したことはありません。

NO IMAGE

小型ケースに収めた
防犯ブザー

防犯ブザーの内部

　・

画像をクリックすると実サイズの画像がご覧になれます。