ラミネートベニヤの説明

ポーセレン・ラミネートベニヤとは、歯牙のエナメル質の表層のみを比較的薄いセラミックシェルにてカバーする補綴処置の名称です。通常略してラミネートベニヤと呼びます。その適応症としては、まずテトラサイクリン(抗生物質の一種)の影響やエナメル質形成不全症等による変色歯の審美的回復が有ります。すなわち第一選択肢であるPMTCやホワイトニング治療による漂白効果が期待できないような歯を白くする場合に用いる事が比較的多いです。その他として、神経を抜いてある前歯(失活歯)の変色の強い場合も対象となります。その術式としては、歯牙のエナメル質の表層を約0.5ミリから0.8ミリくらい切削して、そこに0.5ミリくらいの歯の形をした薄いセラミックシェルを貼り付けます。失活歯で変色の著しい場合は、1ミリ以上切削する場合もあります。セラミックシェルの色や形態は、患者さんの希望と相談して決定します。変色の著しい歯の場合は、歯の濃い色をマスキングする為に多めにオペーク色を付けますので、やや白っぽい単調な色に成り易いです。但し変色や虫歯の少ない歯の場合には、オペーク色を減らして自然な透明感のある白さが出し易いと思います。また別の適応症としては、矮小歯と呼ばれる奇形の歯の形やある程度の歯の空隙を埋めて自然な形態に直す事が可能です。但し、矯正治療が必要なほどの不正咬合はこの方法では無理です。また、ラミネートベニヤは非常に薄い物ですので、外力には比較的弱いと言う欠点が有ります。歯軋りのある患者さんやボディーコンタクトのあるような激しいスポーツを現役でやっている患者さんには向かないと思います。まずは、歯牙の変色の程度や咬合の状態を診査して、治療方針を立てるべきだと思います。比較的軽度の歯牙変色であれば、ホワイトニング治療の方がコストパフォーマンスは高いと思います。以下に、当院での症例を紹介します

これは、左上1番の神経の除去されている失活歯の術前の状態です。外傷による失活歯なので、周辺の歯牙よりもかなり変色が進んでおります。本人の希望もあり、ラミネートベニヤにて治療しました。
上記の歯を形成した状態です。変色が強いので、1ミリ以上エナメル質を削除しております。この場合は、薄くすると変色している歯質が透過しやすいので、やや厚めにラミネートベニヤを設定しました。もちろん、形成・印象後には日常生活に支障の無いように仮歯を装着します。約1週間から10日前後にて、技工所より仕上がってきます。
上記の患者さんにラミネートベニヤを装着した画像です。周辺の歯牙と比べても自然な仕上がりになっております。やはり前歯部においては、金属を使わない補綴物の方が歯肉マージンの退縮やブラックマージンの出現は少ないようです。
次は、上顎前歯部の空隙歯列の患者さんの症例です。この方は、矯正治療よりもラミネートベニヤを選択されました。4本の前歯の幅径を拡大する事によって空隙を埋めます。矯正治療をする時間の無い患者さんには、短期間で治療可能な選択肢となります。最短コースで行けば、3〜4回の通院で可能です。
上記の患者さんの術後の画像です。この場合は、歯冠長と幅径のバランスが一番重要なポイントになります。模型上で何度かサンプルを作ってカウンセリングする事が必要です。歯牙の切削量はそれ程多くは必要有りません。少し歯面が膨らむのが嫌な患者さんは、少し多めに切削すれば解決できます。
上顎6前歯のラミネートベニヤによって完成された、40代の女性のスマイルラインです。口元に自信が戻れば、自然と歯の見える笑顔が生まれます。歯の治療によって、患者さんの豊かでハッピーな人生が演出されると私は信じています。

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