リスク社会論第3回
科学技術におけるリスク
/多数性というリスク
2009年10月21日
志田基与師
前回まで(科学技術におけるリスク)のまとめ
科学や技術につきもののリスクとは以下のようなものである(順不同)。
(1)科学や技術は仮説であるということによって、本質的に不確定である(事実や真実であると証明することはできない)。同じ専門の中ですらリスキー。
(2)パラダイムの与える拘束は、先入観や偏見という形で、われわれを系統的に誤りに導くことがある。これは「官僚主義」の病理とよく似ている。科学技術は人を利口にも馬鹿にもする。
(3)専門分化は、互いに他の専門分野の知識や技術を「真理」として前提にせざるを得ない以上、きわめてリスキーである。これに対処するためには「教養」が必要である。
(4)「教養」はそれ自体専門的職能となることもある。
多数性というリスク
1.政治革命と産業革命
18世紀の後半から起きた、産業革命と政治革命は人類の文化(ここでは人々の暮らし方、という意味)を激変させた。
(1)たとえば産業革命は;
農耕社会 → 産業社会
自家生産 → 消費財の購入 (商品経済)
自宅(周辺) → 通勤 (職場と住居の分離)
家内労働 → 賃金労働と不払い労働の分離
家族従業者 → 専業主婦・子どもの誕生
職業の世襲あるいは徒弟制度 → 学校による教育 (「青年期」の誕生あるいは「自分探し」)
われわれが「古き良き時代」として懐かしむコミュニティや家族の情景は、ほんのついこの間できあがったものである。
余談であるが、「大量死」のリスクも産業革命と同時に発生する。 → タイタニック 第一次世界大戦
(2)政治革命は;
景気の安定、失業の撲滅、福祉社会の実現が政治上の課題となる。
公正で公平な社会 → 学歴/試験の二重性 → 不安定雇用 → 「二世現象」「文化資本」
透明で予測可能なルールへの渇望と、ルールの機能不全によるリスク。
2.類似による連帯から有機的連帯へ
(1)環節社会と高度な分業の社会
(2)アノミーとアノミーの諸類型
(3)準拠集団と相対的不満
(4)「囚人のジレンマ」と「しっぺ返し戦略」:信頼
目に見える「仲間」から目に見えない「仲間」との連帯/リスク
3.不確実なコミュニケーション
(1)通じているのか? どうすれば通じるのか?
(2)文脈
以下次回
参考文献
ガルブレイス『不確実性の時代』講談社文庫
デュルケーム『自殺論』岩波文庫
デュルケーム『社会分業論』講談社学術文庫
ベック『世界リスク社会論』
マートン『社会理論と社会構造』みすず書房
『岩波講座リスク』
志田基与師(個人HP)