「んしょ。」 夏美は、廃墟と化した北スラムに、紙袋に入ったたくさんの食料を持って行こうとしていた。 バノッサが魔王になってしまった時、カノンがオルドレイクに殺されかけたとき、夏美はとても悲しんだ。 自分が原因で、バノッサや、カノンが、もう二度と戻らないと思ってしまった。 けど、皆、まだあきらめるなって、きっと助かるって励ましてくれた。 「今日は、バノッサ、起きてるかな。」 夏美はそう呟いた。 「うん、今日はきっと目を覚ましてくれてるよ。」 バノッサから魔王をひきはがすのは、至難の業だった。 カノンは、クラレットの召喚術によって傷は治り、三日後には目を覚ました。 一日かけて、魔王をバノッサから、引き剥がすことが出来た。が、バノッサは眠ったままだった。 「こんにちわ、カノン、いる?」 「いらっしゃい。昨日のよる、バノッサさんが目を覚ましたんですよ。」 カノンは、夏美にいった。 「ほんと?」 「今は、まだ眠ってますが、じきに目を覚ますと思いますよ。」 「じゃあ、あたし、朝ご飯作るね。」 夏美は、台所へ向かった。 「じゃあ僕は、バノッサさんの様子を見てきますね。」 トントントン、と調子のいい音が聞こえ、おいしそうな匂いが漂ってきた。 「お姉さん、バノッサさんがおきましたよ。」 「え?」 夏美は、バノッサがいる部屋へ走っていった。 「おはよう。」 バノッサは、ぶすっとした顔で言った。 「バノッサ・・・、やっと起きたんだ・・・。」 夏美はバノッサをぎゅっと抱きしめた。 「お、おい、はぐれ野郎、何しやがる!?」 ばのっさは、あわてた。 「だって、だってぇ・・・、バノッサずっと起きてくれなかったんだもん。」 夏美半泣きで言った。 「バノッサさん、お姉さんはずっとバノッサさんが心配で、毎日看病に来てくれてたんですよ。昨日言ったじゃないですか。」 「わかってっけどよ・・・。」 「よかったぁ、バノッサ起きてくれたもん。」 「心配かけてわるかったな。」 ぽすぽす、と夏美の頭を叩いた。 「じゃあ、朝ご飯でも食べようか、バノッサお腹すいてるだろうし。」 夏美は台所へ向かおうとした。 「はぐれ野郎、てめえ、飯作れたのか?」 「しつれいね、あたしだって作れるわよ。」 十分後、三人で、食卓を囲んだ。 「結構、美味いな・・・。これだったら嫁にもらうか・・・」 バノッサは、ぽそりと呟いた。 「ありがと。ごめん最後のほう聞き取れなかった。」 「なにもいってねえよ。」 「そう?」 「ごちそうさまでした。」 カノンは、いった。 「じゃあ、私皿洗い終わったら帰るけどいい?」 「かってにしろ。」 じゃーねー、を手を振って夏美は帰っていった。 半年後、夏美ととバノッサは、ファナンにいた。 もちろんカノンも。 「まったく、せっかくのナツミとの新婚旅行が、側近つきじゃあ意味ねえだろうが。」 バノッサは、ぶすっとふくれていった。 「まあまあ、別にいいじゃないバノッサ。」 「んー・・・。まあ夏美と一緒にいられるからな。」 バノッサは夏美を抱きしめた。 ―了―
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