どんなことでも。君にあげられる幸せ。
どんなことでも。君がくれる幸せ。
どんなことでも。君が関わるからこその幸せ。

どんなときでも。君が幸せであればと願う。

   ・・・・どんなときでも。ずっと。
   きみが、しあわせで、あれば・・・・・


 彼氏彼女の事情  - ツクロイ -


そして次の日・・・・・・・・・

トントン。と扉がノックされた音で水守は目を覚ます。
(・・・誰かしら・・・?)
ふと見れば隣に寝ているはずのかなみも居ない。
どうしたんだろうか?と思いつつ寝間着にカーディガンを羽織り、扉を開ける。
「・・・まぁ。」
「すまない。こんな朝早くに・・・・」
外には自分の見知った幼なじみが居た。
驚いて水守は思わずカーディガンを落とす。
「どうしたの劉鳳?とにかく外は寒いわ。中に入って?」
「いや・・・俺はすぐに戻るから・・・」
「そう、なの・・・・・?」
すまなそうに言う劉鳳を見て、水守は悪いことをしたと思い少ししゅんとなる。
そしてそれを見た劉鳳も罪悪感に駆られる。
「・・・・水守が、構わないのなら・・・・」
その言葉を聞いて、ぱっと顔を上げた水守の表情を見た劉鳳の気持ちは。
きっと言葉では言い表せない。


かなみは、なんとなく夜明け前に目が覚めて
こっそり隣に寝ている水守を起こさないように外に出ていた。
いや。偶然ではない。必然で目が覚めた。
そしてその必要があるだろうと思って外に出た。
夢で知っていたから。
いや、夢を見れなくても。きっと目覚めて外に出ただろう。
なぜならそこに自分が一番望む人が来ていたのだから。

いつもバイトに来る牧場。
そこにある干し草をまとめた大きな玉状の方に話しかける。
「・・・カズ君・・・・」
答えは、無い。
けれどわかる。
想いも、言いたい事も、何もかも。
そこに居る。それだけで全てが。
ぽすん、とかなみは干し草を背もたれにして座る。

カズマは実はこっそり来てこっそり帰ろうと思っていた。
そのついでに、かなみの寝顔でも見れたらと思ってこんな朝早くを選んだのだ。
けれど。
(ったー。バレバレっすか。)
干し草の影。かなみと干し草を挟んで背中合わせの状態に少し頭を抱える。
(・・・・格好わりー・・・)
心中でぼやく。
と、背後でくすっと笑う声がした。
(・・・・ッだぁ!!やっぱこーゆーのはなんか性にあわねぇ!!
 かなみにゃわりーけど戻る!!そんでまた来る!!)
ぐっと握り拳を作り、カズマは立ち上がってそそくさと立ち去ろうとする。

「・・・なおしておくから。それは置いていってね?カズ君・・・?」

その背中に、かなみの声が届いた。
少し唖然として。
そしてすぐににやりと笑って。
かなみが言う「それ」を置いてカズマは立ち去った。

(ちゃんと全部終わらせたら帰ってくっからよ!!)

そう心の中で呟いて。

かなみはカズマが去った後。
干し草の裏に回り、カズマが座っていた場所に座り直す。
まだ少し、温かい。
「・・・格好悪くなんか無いのに。カズ君ってば・・・・」
そうして、カズマが置いていった物を手に取り、またくすっと笑う。
(今日のうちに終わらせなくっちゃ。そしたらまたカズ君今日中に来てくれるかな・・・?)
そうして足早に家の方へと戻る。


「それで・・・どうしたの劉鳳?」
席に着き、お茶を飲みながら水守は劉鳳に訪ねる。
席に着いてからも、劉鳳は何かを言おうとしては口を開けようとするが、
何かあったのか。すぐまた口を閉ざしてしまう。
「・・・なにか。あった、の・・・?」
本土側の方でまた何か。もしかして自分の生家と何か関係しているとか。
「違うんだ。水守。その・・・・」
「え?」
「その。この前もらった腹巻きなんだが・・・・」
「え。えぇ・・・・・あの。気に、いらなかった・・・?」
本土側のことではなくて少しほっとするが、
もしかして何か不具合でもあっただろうか?と水守はドキドキする。
「そんな事は全然ない!」
思わず声を荒げて劉鳳はバンとテーブルに手をつく。
「そうなの?良かった・・・・・・!」
大きな声に少し驚いたが、それ以上に水守は嬉しくなってしまう。
(嬉しい。喜んで貰えたみたいで。作って良かった。)
そして劉鳳は逆にそんな水守を見て、また少し暗くなる。
「劉鳳・・・?」
心配そうに顔を向ける水守を見て、劉鳳はついに観念して目的の物を出す。
「これ・・・・」

それは少しどころでなく汚れて、所々ほつれてしまった腹巻き。
自分が劉鳳に贈った・・・・・・・

「す。すまない水守!その。あの馬鹿と、つい言い争いになって、ソレで・・・」
沈黙が恐くて、傷つけてしまう気がして。
傷つけたくなくて。つい早口で喋べる。
「・・・劉鳳・・・・」
「・・・違う。これではただの言い訳だ・・・・」
顔に手を当て、前髪をつかみながら劉鳳は溜息と共に呟く。
水守は、そんな劉鳳をただ見つめているだけで。
(俺はきっと、傷つけるのだけが嫌ではないんだ。
 嫌なのは、傷つけて、嫌われてしまうかもしれないと思う気持ちも、あるからだ。)
傷つけるのは嫌だ。
けれど、自分の印象も悪くなるのも嫌だ。
そんな自分の奥底にある感情はひどく醜い。
どうしたって、自分がした事に変わりはないのに。

「・・・すまない水守。せっかく君が作ってくれたものを・・・・」
そうして劉鳳は、居住まいを正し、きちんと水守に向き合って頭を下げる。
「いいのよ劉鳳。頭を上げて?」
にこやかに笑いながら、水守は尚も頭を上げようとしない劉鳳に声をかける。
「水守・・・・」
「だって。あなたは使ってくれたのでしょう?」
いまだすまなそうな顔の劉鳳に対し、水守はどこかうれしそうで。
「それはむろんだ」
劉鳳は当然だとしっかりうなずく。
「だったら。全然構わないわ。」
水守も満足気にうなずく。
使えば磨り減るのは当然の事だから。
「直すわ。だから、少し待っててくれる?」
そういって水守は笑う。
いわれた劉鳳も笑う。少し照れくさそうに。

「あぁ。君が許してくれるなら。」



そして。
かなみと水守は、腹巻きの修理を一日中していたとか、
それを劉鳳がのんびり見ていたとか、
それを知ったカズマが劉鳳にまた喧嘩を吹っ掛けたとか、
更にそれを見た橘が「馬鹿ですか!貴男達は!!」と言ったのは。

また別の話。




―了―



お、終わり、です。(パタリ)

つーかもぅ。長い話でした。書き終わるのも遅かったですし。
ギャグは短く軽快に。が読みやすいと思うのですがね〜。テンポが悪い。
最初は2話。長くて3話位のつもりだったのですが。(予定は未定)
個人的に橘に「馬鹿ですか!」と言わせたかっただけの話なんですけども。
どこかで思惑がずれた模様。あれー?

ところで、「この話の中で一番まとも?なのは水守だけじゃん。」
と言われたのはここだけの秘密です。(笑
でも、水守さんも毛筆体で名前を模様のように入れた時点で
変だと心の底から信じてる事も秘密です。(ぉぃ)

とにもかくもここまでお読みいただきどうもでしたーvvv

02/01/02

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