蒼い森の樹の下で<未完>



side:エリアス〜森〜

俺はラシェル達と別れた後、森へと向かった。
別に当てがある訳でも、深い考えがある訳でも無かった。
森で一人でいるような者はアカデミーに入っていない事が多いのを
知っていたから多少は都合の良い事も考えたけど、
そういった連中は、人付き合いが嫌いな者が多いって事も知っている。
だから、単に自分が森でゆっくりしたかったってのが本当の所だろうな?
まあ、森とか人気の無い所ってのは昔から好きだったからな。
あの時は気づかなかったけど、ラシェルの事が相当ショックだったんだろうな。
それで森の中を歩いて行って段々落ち着いてきた所であいつに会ったんだ。
森の中に少し開けた所があるんだけど、そこにあいつは居たんだ。
肩や手に小鳥が止まり、足元に野うさぎ等の動物達が座っていた。
まるで絵画を見ているような感じだったよ。
それで引き寄せられように俺は近づいて行ったんだ、
闘気は無意識でも制御できたけど、足元の注意までは無理だった。
俺は小枝を踏んで音を立ててしまたんだ。

「すまない・・・驚かせてしまって」

小鳥や動物達が驚いて逃げ出してしまった。
そして、森の中が日常の時間に戻ってしまったような感じがした。

「いえ、気にしないで下さい
十分気をつけて頂いたようですから」

そう言って、そいつは笑いかけてくれた。
どうやら気配を消そうとした事が判ったらしい。

「しかし、凄いな・・・。」
「何かですか?」
「剣いや刀か?それを二振りも持ってあれだからな」

小鳥や動物は鉄を嫌うものだ。
幾ら気配を消した所で刀、それも二振りも持っていては中々出来る事じゃない。

「それで今日はどうかしたんですか、エリアス先輩」
「えっと・・・悪い、はじめてだよな?」
「そうですが、有名人ですからね、先輩は。
あらためまして私は、紅 蒼紫、2ndです。
蒼紫って呼んで下さい。」
「一応念のために聞いておくけど、蒼紫はアカデミー入っているのか?」
「茶道部に所属していますが、それが何か?」
「茶道部だけ?もしかしてマスターかサブマスターなのか?」
「いいえ、そういった訳ではありません」
「じゃあ、アドベンチャー系に所属する事は出来るんだな?」
「ええ、所属する事は可能ですよ。それが何か?」
「実は・・・」

俺はこれまでの経緯を話し、ファイターズアカデミーへの勧誘を行った。

「しかし、そういったアカデミーの多くが馴れ合いのような物が多く、
剣の修行の妨げになりかねません」
「うちにかぎって、そんな事は無い!!確かになるべく楽しくって
気持ちはあるが、それだけじゃあ無いんだ。」
「まあ、ファイターズのうわさは聞いています。
ですから違うとは思いますが・・。」
「だったら・・・。」
「しかし」
「今後のアカデミーの方針は、どうのようにお考えですか?」
「今後のアカデミーの方針っていってもな・・・。
世のために役立つアカデミーってのが創立時からの基本方針だけど?」
「成程、それは確かに崇高な理想ですが、賛同しようという者は少ないのでは
ありませんか?」
「崇高って程な物じゃ無いよ。
少しでも困っている人の力になれればって所だよ」
「剣技を極めたいだけでは無いのですね?」
「剣を極めるってことは逆に使わないって事じゃ無いのか?
俺はそう思っているけど」
「剣を使わない事が極める事ですか?
・・・どうやら、一人での修行はそろそろ終りにする時のようですね」
「それじゃ?」
「以後、よろしくお願いいたします。」
「敬語なんていいよ。仲間なんだからな」
「そうか、ではよろしく頼む。」
「こちらこそ」

こうして蒼紫がファイターズアカデミーに入部することになった。

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これが俺と蒼紫の出会いだよ。
しかし、まさか・・・。
「まさか、若葉ちゃんが蒼紫の妹だったとわね。
確かにあいつが可愛いって自慢するだけあるな」
「え〜っ、可愛いだなんて、そんな〜(赤)」
「ふぅ〜ん、エリアスって若葉みたいなのが好みなんだ・・。」
「おっおい、レミット誤解されるような事言うなよ(汗)」
「・・・エリアスさん」
「だから、誤解だってアイリスさ〜ん(滝汗)」

本当にこうして蒼紫の妹と旅をする事になるなんて想像もしなかったよ。
あれから数年しかたってないのにな
・・・この出会いは、偶然などでは無く、より大きな流れの中での出来事に
過ぎなかった事に、俺はまだ気付いて無かった。
〜パーリアへの道中にて、エリアス・エレサール〜


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