ヒュッと空を切り、刃が素早く弧を描くと異形の化け物だというのに人間と同じ
赤い色をした体液は地面に散った。菊は懐紙を取り出して残りを拭い去り、吹く
風に任せてはらはらと汚れた白がどこぞに飛んでいくのを見送る。一連の儀式の
ようなそれが終わり、刀を鞘に収めて視線を遣ると生気を失った魔物はもはや
形状を保てずぼろぼろと崩れゆき、土くれが風化するようにして急速にただの
有機物となり果てた。死骸さえ残らぬ空虚な命に最初のうちは彼らの死に菊は
同情的な念を抱くこともあったが、戦いを重ねるうちそれも次第に薄れて今は
無感情に眺めるのみだ。気がつけばいつの間にか二通りあった銃声がひとつに
減り、遠くから断続的な銃声が聞こえる。アルフレッドはまだ戦っているようだ。
無人の廃墟に軽快な足音が響いて手を振りながら先に戦闘を終えたアーサーが
駆け寄ってくる。
「怪我は?」
「おかげさまで無傷です。あなたは?」
「あるわけないだろ」
「それならよかった」
 互いの無事を確認しながら瓦礫を踏みしめ、助太刀すべく銃声の鳴るほうへ
向かうあいだバックパックからそれぞれペットボトルを取り出し乾いた喉を潤す。
命の取り合いにも慣れた今、戦闘のほとんどはわずかな痛手すら負うことなく
終わるのが常だが、司令官クラスの強い魔物や未知の魔物にもまれに遭遇する
から気が抜けない。だがこの島の戦いにおいて何より問題だったのは魔物の数
だった。倒しても倒しても一向に終わりが見えてこない。一体どこからどうやって
これだけの魔物がやって来るのか?その意図は?菊たちはもちろん、政府も
全力を挙げてそれを探っているところだ。しかしいまだヒントの欠片さえつかめて
いないのが現状だった。移動の途中でアルフレッドの銃声が勝利の雄たけびと
共に上空に放たれて、安堵したようにアーサーはさらに携行食料のブロックを
取り出して口に含む。ただの飲料水は味気ないがこうすればいくらかマシだ。
アーサーとしては勝利のあとぐらい好物の紅茶を飲みたいのだが、敵だらけの
町中で悠長にお湯を沸かす余裕などない。彼らが本拠地とする市立高校跡に
戻るまで少しの我慢だ。そこは不思議な力が働き、常時結界が張られている
おかげで魔物は近づくことも出来ない。要するにこの島で唯一の休息地なのだ。
やがて崩れかけたビルの陰からいやー手こずっちゃったよと明るい口調で現れた
アルフレッドは怪我こそなさそうだが声とは裏腹に心なしかいつもより疲弊して
見えた。どうかしたんですか?と菊が尋ねてみれば身振り手振りも大きくあっち
からこっちからあいつらが次々に襲ってきて俺はああしてこうして云々と先ほど
見受けられた疲れはどこへやらとても元気に英雄譚を語ってみせる。どうやら
気のせいだったようだ。たまたまそちらに魔物が多く集まったのかもしれない。
元よりろくに話を聞いていなかったアーサーに代わり、まあまあ無事で何より
でしたねと菊は話半ばで中断させてそろそろ帰らないと、と西の空を指した。
日はすっかり傾いている。
「もうこんな時間か」
「今日も手がかり見つからなかったね」
「…ええ」
 アルフレッドが水分補給するのを待つ傍ら、三人で夕日で血のように赤く染まる
廃墟を見つめる。首都機能を担うべく期待を背負い、希望に満ちていた美しい
海上都市。かつてのその姿はもう見る影もない。感傷に浸る時間もなく三人は
休憩もそこそこに歩き始めた。日没に伴い魔物の凶暴性が増すため、その前に
高校跡に戻るのがいい、それはこの島にやって来て彼らが学んだことだった。
そのため魔物退治も謎の解明も夜は中断を余儀なくされる。人間がこの島を、
この町を取り戻す日はいつになるのだろうかと考えてなかなか寝付けない夜も
ある。そんなときに見上げるここの夜空は何物にも汚されず透き通り、星々は
どこよりもきれいに瞬いては菊の心を慰めるのだった。
「まあ、めげずに地道にやるしかないですよ」
 そうして菊は自身にもその言葉を言い聞かせ、さあ早く帰りましょうね、お腹も
減ったことですしと歩調を早める。明日は本土からの補給が届くことになっていて
気分転換にはちょうどいい。道すがら今週食事当番の菊が夕食の献立に悩んで
いると横からカレーがいいだのとんかつがいいだのと兄弟は好き勝手に横から
口を挟んでくる。なんせ彼らは成長期の大所帯だ。手間がかからず栄養のある
もの、なおかつ二人の希望に適うもの、それらの条件を考えてじゃあカツカレーに
しますかねと答えると子供のように無邪気な歓声が上がった。食事当番は料理
上手な数人が順番に役目を負っているが、真っ先に候補から除外されたこの
二人にその大変さはわからないだろう。ため息をつく菊の精神的な疲れをよそに
人間の話し声に集まってきたらしい不穏な気配を三人は敏感に感じ取り、各々の
武器に手をかけ不敵な笑みで目配せしあった。


近未来ファンタジーRPG妄想
舞台は近未来の日本のようなどこか。海上に人工島作って首都機能移転しよう
とした矢先にどこからか現れた異形の化け物によって島は占拠されてしまう。
国は早急に軍隊派遣するもまったく歯が立たず。国家を挙げての研究の結果、
人口島に創立されたばかりの市立高校の一部の生徒にだけ不思議な退魔の
能力が備わっていることが判明。国の命運は高校生に託された!魔物は一体
どこから現れるのか?その目的は?主人公たちは謎を解き明かし元の平和を
取り戻せるのか?
・行動時間は夜明けから日没まで。
・指令は三人一組で魔物退治しつつ一年以内に島の謎を解き明かすこと。
・全員市立高校跡で合宿生活。不思議な力が働いて魔物が寄ってこない上に
多少の怪我は一晩で回復する。
・必要な物資は月に二度本土から送られてくる。
・装備は学生服(ブレザー・学ラン両方あり)+各々具現化した武器。
菊たん:村正、ヨンス:匕首剣+体術、にーにと台湾さん:棒術+体術、メリカ:
サブマシンガン、イギー:ハンドガンかロングボウ、ドイツ:ツヴァイハンダー、
フランス兄ちゃん:レイピア、スペイン兄ちゃん:ハルバート、墺さん:いばらの冠
とか月桂樹とかの拷問用の鞭、ガリーさん:フレイル、スイスさん:クロスボウ、
スーさん:グングニル、フィンさん:メイスか狙撃ライフル、トルコさん:カラベラ、
ギリシャ:トライデント、プー:カッツバルゲル、ポー:シュチェルビェツ、伊兄弟:
ダガー。ロシア様:死神の鎌みたいなやつか水道管、リト:ロングソード、ラト:
エストック、エスト:エグゼキューショナーズソード。
・ソビイズ組は後に敵対する。





ブラウザバックでおねがいします。