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※処刑人パロ ※兄弟=メリカナ ロッコ=にほん 『死んでいくのは脳みそが足りないからだ』 物心ついたときにはゴミやゲロの入り混じったすえた臭いのする、とにかくクソ みたいな路地に生きていた。生き延びるためなら殺し以外クソみたいに何でも やったと思う。野良犬の群れにもリーダーがいるようにならず者にもリーダーが いて、すべての手段は彼が教えてくれた。クソみたいなセックスも含めて、私の 脳みそはすべて彼から教わった知識で出来ていた。奇跡的に大人になるまで 生き延びるとやがて彼と私はマフィアの一員となった。彼の言うことに私は何の 疑問を持たないでいた。私のすべては彼だったのだから。それに、クソみたいな マフィアに入ったって昔からやっていることと何も変わりはしなかったのだ。 『短気なのは脳みそが足りないからだ』 ちょっとしたことですぐに頭の回線が途切れてしまうクソみたいな短気を彼は そう言った。はじめにこの「クソみたいな」という口癖を咎めたのも彼だ。そのクソ みたいな口には別の用途があるだろう?と舌なめずりをして笑っていた。私は なるほど、と思っただけだ。ただ罪悪の概念は誰も教えてくれなかったのでこの 行為を含めてすべてのことにそれまで一度も感じたことがなかった。それらは すべて罪だと教えてくれたのは飲み屋で知り合ったとある兄弟だ。彼ら兄弟は 信仰深く、私のしていることはすべて罪だと言った。 『殺しをやらないのはいい、でも盗みと姦淫は駄目だ。神様に怒られちゃうよ?』 神様なんてものがいるなんて私は知らなかったのだ。誰も教えてくれなかった。 兄弟は言う。神様は人間を愛しているのだと。誰かが私を愛してくれていること なんて私は知らなかった。愛とは?罪とは?考える時間が増えた。仕事をして いるあいだにも、享楽に溺れるあいだにも二つの疑問がクソみたいな脳みその 中を大きく占める。愛とは?罪とは?私のしていることは正しいことか?違う、 そうではない。そうだ、むしろ私は今までずっと、この罪深い行いを嫌々ながら やってきたのではないか?もうけちなマフィアの下っ端なんて辞めたい。私の すべてだった彼は初めての反逆にため息をついてこう言った。 『俺の言うことが聞けないやつは死ぬべきだ』 別れの挨拶はしなかった。銃口を向けたのはあなたのおっしゃった通り、私が クソみたいな短気だからですよ。 「よくやった!よくやったよ菊!」 「あいつらは罪深い悪だ、君は正しいことをした!」 弾はもう空になったのに銃が磁石のようにくっついて手から離れない。初めての 殺しにぶるぶる震えているのに自分でも異常だと感じるほどの興奮が全身を 駆け巡って心臓は早鐘を打っていた。固まったままの指を一本一本銃から取り 外しながら私を抱きしめた温かな腕に心が安らいでいく。友人たちは新たな罪を 犯した私を糾弾するどころか褒め称え、迎えて入れてくれた。正直なところ私は いまだに神というものがよくわからない。けれど彼らは神の使いなのだという。 罪を犯した者を討つという使命を与えられた兄弟、彼らを通して私は彼らの神を 信じていけばいいのだ。そのためならばこの手をあと何度染めても構わない。 いつかその刃が私に還ってこようとも。これが正しい愛なんですよね?神様? |