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※菊以外みんなわんこです はじめまして、僕は本田家24番目の犬、金田(仮)といいます。金田さんと 呼ばれることが多いですが一応(仮)までが正式な呼び名です。他の犬たちは みんなカッコイイ名前なのになんで僕だけそんな変な名前なのかといいますと、 僕の前のご主人が僕の名前を教えないまま「この子をしばらく預かってくれ、 必ず迎えに来るから」と慌しく僕を今のご主人に押しつけていなくなってしまった からなのです。本田家に来る犬はまず最初に名前を呼ばれて反応できるか、 トイレのしつけはできているかなどをチェックするそうなのですが、僕は最初の 段階からつまづいてしまいました。なんせ呼ぶべき名前を知らないのですから。 仕方なく、ご主人は前のご主人の苗字である金田を仮の僕の呼び名としました。 ご主人の人をほにゃーっとさせる優しい表情と人柄の出た柔らかい声で金田 さん、と呼ばれるとなんだか嬉しくて僕はワンと返事をしました。それで、僕の 呼び名は金田(仮)となったわけです。ご主人の家や庭はとても広く、24匹も 犬がいるのにちっとも狭さを感じさせません。そこを僕らは自由に出入りできる 上に庭には柵もありませんので迷い犬になっても大丈夫なように連絡先を記した 名札を首輪につけています。そこにも僕の名前はちゃんと金田(仮)と書いて あります。そうして本田家にやって来て、まず最初に口を利いたのはアーサー さんという犬です。ウェルシュ・コーギーの彼は僕よりずっと小さな体をしていた のに態度はものすごく大きくて、曰く。俺はこの家に最初に来た犬だから一番 偉いんだ、だから俺の言うことは絶対だ、わかったな?だそうで。多頭飼いを うまくやるには犬同士の揉め事はとにかく先住犬の肩を持つことと耳に挟んで いますが、彼はそういった経緯で調子付いてるんだろうなあということはよく わかったのでした。その証拠にアーサーさんと同じ日にやってきたルートヴィッヒ さんというドーベルマンはそのような態度はまったくなく、最初こそ僕を警戒する 唸り声にガクブルしましたが新しいうちの子ですよーとご主人が紹介するや否や 途端に緊張感は薄れてそう固くなるな、ここはいいところだから安心していいと 人のよさげなかんじで、いえ僕を緊張させていたのはあなたですよとは言えなく なってしまったのでした。その言葉どおり本田家の暮らしはすこぶる快適です。 幼い頃、川で溺れていたところを近所で飼われていたさくらという柴犬が助けて くれたのをきっかけに無類の犬好きになったというご主人はこんなにたくさんの 犬がいるのに平等に愛してくれますし、ごはんも個人の体調や好みによって 全員違うものを与えてくれますし、毎日肉やレバーや野菜といったものをご主人 自ら調理してトッピングしてくれるのもありがたい限りです。それいいなあ俺にも くれよ!とか俺にも味見させるんだぜ!といったかんじで割り込んでくるアメリカ タイプのゴールデンレトリーバーのアルフレッドさんや珍島犬のヨンスさんをこれ! の一声で注意してくださるのも大変助かってます。僕らの一日はだいたい朝六時 ぐらいに始まります。それぞれ自分のクレートで目覚めて庭に用を足しに行ったり 運動したり毛づくろいをしたりだらだら過ごしているあいだに寝ぼけ眼のご主人も 起き出して、僕らの健康チェックやら身支度やら朝食の用意やらをします。その 邪魔をしたら僕らの朝食も遅れるというのにその足元をうろちょろするのは大抵 イタリアン・グレーハウンドのフェリシアーノさんです。ねえ!ねえ!ごはんまだ! ごはんまだー!とたぶん催促しているつもりなのですが、彼はいつになったら そのことに気づいてくれるのでしょうね。ご主人の朝食のあとにやっと僕らの 朝食を終えると僕らはめいめい二時間ほど家で庭で好きなように過ごします。 この時間帯、ルートヴィッヒさんやアーサーさん、それからこの家一番の番犬 グレータースイスマウンテンドッグのヴァッシュさんなんかはご主人のそばから 離れようとはしませんね。あっ、オーストリアン・ピンシャーのローデリヒさんが 外に出た!彼は家から遠いポストに新聞を取りに行くという芸を持っているの ですが、大抵行った先で何を取りに来たのか忘れてしまい、挙句家に戻るのも 忘れて迷子になってしまうのでとても厄介なのです。すかさず待ってローデリヒ さん!とご主人が追いかけました。今日はこれで大丈夫ですが、ご主人が目を 離した隙にこれをやられると三日は帰ってきません。一時は保健所の常連だった そうですが、名札のおかげで何とか帰還を果たし、最近ではローデリヒさんを 見かけるとご近所さんはすぐ保護するようにしてくれているとか。僕は保健所が どういうところか知りませんが、ローデリヒさんや以前保健所にいた他の方に よるとまったくもって忌まわしいところ、とのことです。病院よりもですか?と聞くと 病院よりも!と答えが返ってきました。そんなところに行くのは真っ平ですね。 この二時間に手早く家事を済ませるとご主人は重い仕事道具を持って出かけて いきます。写真を撮るのがご主人のお仕事です。毎日一匹、日替わりでその お供ができることになっています。今日はアクバシュのサディクさんのようです。 普段寝てばかりいるヘレニックシープドッグのヘラクレスさんはこのときばかりは 盛大に吠えあっています。この二匹、仲が悪いんですよね。収拾がつかないので ご主人は慌てて出て行きました。夕方ご主人が帰ってくるまで、僕らはちょっぴり 寂しく時間を過ごします。帰ってくると出迎えに群がる犬たちを一匹一匹撫でて くれて今度はシャンプーの時間。毎日一匹がそのシャンプーというおぞましい 行為の犠牲になります。僕らは大概水遊びが好きだけど、シャワーの勢いとか 気持ち悪い泡泡とかドライヤーの音とか、そういうのが苦手で終わると二時間は 走ったような疲れでぐったりしてしまいます。もちろん、そんなかんじで抵抗する 僕らを宥めすかして最後には実力行使を以って完了させるご主人もまた疲れで ぐったりしています。今日はアーサーさんのようですね。彼は足が短いので 浴槽に放り込んでしまえば出てくることはできませんから比較的楽なようです。 あとはご主人に絶対の忠誠を誓うルートヴィッヒさんなんかは抵抗が少なくて 楽ちんとご主人が誉めてましたね。ちなみにポメラニアンのギルベルトさんは シャンプーとかそんなんじゃなくても常に吠えててうるさいです。小さいなりして すぐケンカを売ってくるから困り者です。それが終わるとやっと夕食。朝とは トッピングが変わるので食事に飽きることはありません。その後二時間は仕事の 整理なんかをするためご主人の書斎から締め出され、僕らはまた好きなように 過ごします。サディクさんとヘラクレスさんがケンカの続きを始めたようです。 横ではペキニーズのヤオさんやリトフスカヤゴンサーヤのトーリスさんやラトヴィス カヤゴンサーヤのライヴィスさんやエストンスカヤゴンサーヤのエドァルドさんが ボルゾイのイヴァンさんに追いかけられていますが、僕は関わりたくないので 放っておきます。やがて書斎から出てきたご主人に真っ先に擦り寄ったのは 先程言ったご主人から離れない組を押しのけてのブリタニーのフランシスさん。 彼の場合、忠義心が強いのではなく恋愛対象としてご主人を見ているので ご主人の足にへこへこをかまします。僕知ってますよ、ご主人がフランシスさんは そろそろ去勢したほうがいいのかなあとぼんやりつぶやいてたのを。だからその 辺にしといたほうが無難ですよ。残りの家事とご主人の夕食も終わると待ちに 待ったご主人との遊びの時間。一匹一匹とじゃれつくのがご主人の一番楽しい 時間だとか。時にはカメラを向けられることもあります。最近巷で人気の猫鍋に 対抗心を燃やしているらしく、うちの子はもっとかわいいのに!うちの子をもっと 見ろー!とのことでなんだか僕ら、近々グラビアデビューするらしいですよ。 それが売れたらご主人に恩返しできるのかなーと僕らは目一杯かっこよさを アピールすべく張り切っています。でも「うは!その表情ギザモエス!」とその ときのご主人の言葉ばかりは謎めいています。一体何語なんでしょうか。楽しい ひと時が終わると、そろそろおやすみの時間。それぞれのクレートに戻った僕ら みんなにおやすみのキスをして、最後に僕とご主人の秘密の時間があります。 窓の外を眺める僕に大丈夫、あなたのご主人はきっと帰ってきますからねと 優しく撫でてくれるのです。窓際にいることが好きな僕が前のご主人を恋しがって いると思ってのことでしょう。でも違うんですよ。僕は鳥をおびき寄せたり前の ご主人の猟のお手伝いをしていたから、鳥を見るのが好きなだけなんですよ。 それに、僕知ってます。もう前のご主人は帰ってこないんですよね。どんな事情が あったかわかりませんし、こんな素敵なご主人に巡り合わせてくれたのだから 恨む気持ちもありません。ただ、僕の本当の名前を教えておいてくれなかったこと だけが心残りなんです。去り際に金田さんおやすみなさいとキスをしてもらって、 僕はいつか本当の名前をご主人に呼んでほしいなあといつも夢見ています。 ふわあ眠くなってきた。ではみなさん、いい夜を。 ※蛇足設定 菊は事情があってリタイアしたり、捨てられたり、保健所にいたりした犬を引き 取って北海道の広大な土地を利用して菊ゴロウ王国状態で可愛がっています。 ゴールデンレトリーバー(アメリカタイプ):アルフレッド ttp://www.dogfan.jp/zukan/sports/golden/index.html イギリス原産の元猟犬。アメリカタイプは普通よりやや細身のはずなんですが 筋肉がっしり気味。性格は俺様。 ウェルシュコーギー:アーサー ttp://www.animal-planet.jp/dogguide/directory/dir11000.html ウェールズ原産の元牧畜犬。断尾されてないので尻尾振りまくり。警戒心が 犬一倍強いのが厄介。 ドーベルマン:ルートヴィッヒ ttp://www.animal-planet.jp/dogguide/directory/dir05700.html ドイツ原産の元軍用犬。断耳・断尾済み。飼い主に忠実な優等生。 オーストリアンピンシャー:ローデリヒ ttp://www.petippai.com/dog/catalog/195.html オーストリア原産の元猟犬。のんびりマイペース。 イタリアングレーハウンド:ロヴィーノとフェリシアーノ ttp://www.dogfan.jp/zukan/toy/ItalianGreyhound/index.html イタリア原産の愛玩犬。臆病で寒さに弱いので服が欠かせない。弟はセンス いい服とおいしいご飯で素直に喜ぶが兄はやや態度が悪い。 クバーズ:エリザベータ ttp://www.animal-planet.jp/dogguide/directory/dir09000.html ハンガリー原産の元牧畜犬。すばしっこく強い!でも犬仲間には優しい。 ブリタニー:フランシス ttp://www.ilovepet.net/dog/dog.asp?dog_id=124 ブルターニュ原産の元猟犬。本来は運動好きらしいがもっぱら夜の運動に興味 がある模様。 ヘレニックシープドッグ:ヘラクレス ttp://www.mlahanas.de/Greece/Fauna/image/ixnhlath_01.jpg ギリシャ原産の元牧羊犬。とにかく寝ている。サディクと仲が悪い。 アクバシュ:サディク ttp://www.turkishdogs.com/akbash/ トルコ原産の元護羊犬。飼い主には従順だが警戒心が強くてちょっと攻撃的。 ペキニーズ:ヤオ ttp://www.cuddly.co.jp/zukan/1084_Pekingese.html 中国原産の愛玩犬。独占欲が強いので他の犬がどうやら嫌いっぽい。 ボルゾイ:イヴァン ttp://www.dogfan.jp/zukan/hound/Borzoi/index.html ロシア原産の元猟犬。温厚に見えて、時々本来の荒々しさを見せる。 イビザンハウンド:アントーニョ ttp://www.jkc.or.jp/modules/worlddogs/entry.php?entryID=91&categoryID=5 スペイン原産の元猟犬。散歩?シエスタせんと動けへんよ。 グレータースイスマウンテンドッグ:ヴァッシュ ttp://www.woofwoof.jp/reference/reference_detail.php?dogid=52&PHPSESSID=ca3ade65afb959b1c3f8db28368a0a0b スイス原産の元山岳犬。縄張り意識が強く、警戒心も強い。 シャルト・ポルスキー:フェリクス ttp://pets-kojima.com/zukan/dog/dog_details/windhund.html ポーランド原産の元猟犬。獲物よりちょうちょを追いかけるのが好きな気まぐれ マイペース。 リトフスカヤゴンサーヤ:トーリス ttp://www.dogbreedinfo.com/lithuanianhound.htm リトアニア原産の元猟犬。苦労症。 ラトヴィスカヤゴンサーヤ:ライヴィス ttp://www.thebreedsofdogs.com/LATVIAN_HOUND.htm ラトビア原産の元猟犬。ぷるぷるしがちと思いきや、予想外の黒さを時々 見せる。 エストンスカヤゴンサーヤ:エドァルド ttp://www.thebreedsofdogs.com/ESTONIAN_HOUND.htm エストニア原産の元猟犬。なかなかの優等生でいい子。 フィニッシュラップフンド:ティノ ttp://www.dogbreedinfo.com/finnishlapphund.htm フィンランド原産の元牧畜犬。賢くてタフでフレンドリー。 イエムトフンド:ベーさん ttp://pets-kojima.com/zukan/dog/dog_details/jamthund.html スウェーデン原産の元軍用犬。警戒心が強く、意識せずに威圧してしまう癖が ある。 珍島犬:ヨンス ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%B0 韓国原産の元猟犬。良くも悪くも怖いもの知らず。他の犬が食べてる物、 遊んでるもの、いいなーと思うと横取りするけど憎めないタイプ。 ポメラニアン:ギルベルト http://www.dogfan.jp/zukan/toy/pomeranian/index.html 元プロイセン領のポメラニア地方原産の愛玩犬。超吠える。 ヨークシャーテリア:ピーター イギリス原産の愛玩犬。超小型犬の割にプライドは高く活動的。 ノバスコシアダックトーリングリトリバー:金田(仮) http://www.dogfan.jp/zukan/sports/NovaScotiaDuck/index.html カナダ原産の元猟犬。明るく人懐っこいが地味。 |