たらふく朝メシ食って、腹ごなしに軽く散歩して、ちょっと汗かいたから洗面所で
顔洗ってさっぱりして、食器棚からコップ、冷蔵庫から氷と冷えたムギチャをゲット
して、日本語はさっぱりわからないが居間でテレビでも垂れ流しながらひと休み
しようとしたその瞬間、なんかむにょっとしたものが足の下にあった…というのは
正確ではない。元からそこに転がってたのを俺が気づかず踏んづけたというのが
正しい。途端にぬわ〜と芝居がかった断末魔が聞こえた。ぐでーんとした物体に
おお死んだかと思いきや覗き込んだ目が唐突にカッと見開き、ハイ死んだ!今
じじいの腰は完全に死んだよ!とハキハキと腰痛を訴える。生きてた。生きてる
ならいいけどよ。と思えばというわけで今日はもう起きれません〜完全な寝たきり
じじいの完成ですう〜とやたら間延びした付け足しはだらけきっててどうやら俺が
踏んだせいだから責任を取れと言いたいようだ。確かに踏んだのは俺だが大体
こんなところで寝っ転がってた本田も悪い。だって夕べギルベルトさんなかなか
寝かせてくれなかったからじじいは眠いんですよ〜うと口をタコみたいにされては
反論は喉の奥に引っ込んでしまう。そのじじい相手に朝まで盛ったのは俺です
その通りです。じじいの腰はもうだめなので今日の家事一切はギルベルトさんが
してくださいね〜と本田はもう寝たきりを決め込んで呼んでもうんともすんとも応答
しようとしなかった。仕方ない、潔さも男らしさのうちだ。まずは得意の風呂掃除
からかかる。殺菌が趣味のドイツ人の本気を見せつける絶好の機会だ。常日頃
丹念に掃除されているのは知っているが本田が見逃しているカビの根っこまで
殲滅せんとカビ○ラー片手に小一時間ほど奮闘する。フハハハ!たかがカビの
分際で俺様に歯向かうなど百万年早いんだよオラオラアアア!勝利の高笑いを
しながら腕まくり足まくりのまま居間に戻ってくると、こらあああまた足を拭かずに
上がってきましたね〜もおおお!とごろごろ転がってぐだぐだしたまんま本田は
ご立腹の様子だった。その後もなんで四角い部屋を丸く掃除機かけるんですか
ギルベルトさんのダメ嫁〜だの洗濯物干すときはちゃんと皺を伸ばしてからに
してください〜だのと説教じじいというより鬼姑だ。でもだらだらしてるから迫力も
クソもない。あーもう、まだ腰痛いのかよ?しょうがねーな。じゃあ昼メシはホット
ケーキでも焼くか。弟直伝だぞ?元気になるし幸せになるんだぞ?あーんして
食わせてやるから夜はまたいちゃいちゃしようぜ。ああなんてじじい思いの俺様。
オイコラ、変な顔してないで感謝しなさい。





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