●シーンN

 

マートン星域 セクタ621・・・

爆煙と悲鳴とが上がり、破壊の砲声が鳴り響く。

ここは戦場だ。

 

セクタ621が殖民都市としては比較的新しく、防衛設備を十全には備えていない点を考慮してもありえない戦闘だった。一方的で苛烈な攻撃の前に守備隊はなすすべも無く壊滅した。

「敵はいったい何人いるんだ!?」

防衛指揮官スキャッターショットは悲鳴をあげる。

燃え盛る炎のなかに黒い影が浮かび上がった。

「貴様ら!」

スキャッターショットの声に侵略者はゆっくりふり向く。

「ドレッドウィング!スモークスクリーン!お前たちだったのか!」

「・・・・・」

「なぜこんなことを!貴様らは戦いを避けて銀河の果てに去ったはずではなかったのか?」

「・・・すべてを終わらせる刻が来たのだ。すべてを」

「なに?」

「ダークサイドの意思により、すべてを終わらせるために我らはやってきた」

スモークスクリーンが宙に舞う。

続いてドレッドウィングもトランスフォームし上空へ舞い上がる。

「我らは黙示録の騎士・・・死の天使『DEATH』・・・そして『WAR』・・・消え去るがよい!!」

ドレッドウィングとスモークスクリーンは合体し防衛指揮官に無情の爆撃の雨を降らせた。

 

 

●シーンO

 

・・・惑星ジャール

累々たる屍の山が続いている。

金属製の肉体はすべからく破壊され、その機能を期待することの適わぬ姿と成り果てた。

かつて、宇宙の破壊者にして支配者を自称する一党が根城としたこの辺境の惑星はいまや彼ら自身の墓標となった。

ほかならぬ彼ら自身の主人の手によって。

半ばで砕け折れ、文字通り墓標となって大地に佇立する中央タワーにこの惑星に現在唯一の生命体が彼自身の座所たる場所に腰を下ろしている。

「ふがいないことよ。わが軍勢ともあろうものが・・・」

かつての腹心の一人であった者のヘッド・モジュールを手に『CONQUEST』は一人つぶやいた。

少しばかりの圧力を加えるとそれは砂糖菓子のように崩れた。

「つまらん。終焉とはかくもむなしいものか・・・」

 

 

●シーンP

 

 コンボイ率いるサイバトロンは惑星中枢・ベクターシグマを目指す。

ベクターシグマに至る道は険しく、その攻略は困難を極めた。

侵入者阻止レーザーの集中砲火に苦戦を強いられている。

また一人、サイバトロン戦士が倒れた。

「しっかりしろ!

すばやくパーセプターが助け起こすが返事はない。

「司令官!これ以上は無理です!一時撤退しましょう!」

「なにをいう、ここで退くわけには行かん!」

「しかし、損害が大きすぎます!」

「これしきのこと!」

「落ち着いてください。クロスヘアーズとゴングは至急リペア処置が必要です。さもなくば10.5サイクルのうちには92%以上の確率で回復不能の状態に陥る可能性があります。他の者たちも、緊急の処置が必要なものがすでに二十余名にのぼっています」

「司令官!」

ロードバスターが声を上げる。

「どうした?」

「トゲトゲの隔壁が迫ってきますぜ!ご丁寧に回転してやがる!」

「砲火を集中せよ!グリムロック!うちやぶれ!」

「了解、司令官!ダイノボット・アタック!」

鋼鉄の巨竜は咆哮を上げ突進する。

グリムロックのアタックでトラップは轟音と共にバラバラに破壊された。

しかしグリムロックも損傷を受けた。

「うう・・・」

「大丈夫かグリムロック。ひどい傷だ。おまえの装甲をこんなにするとは・・・」

「オレ、グリムロック平気。他のやつ大丈夫か?」

機能停止状態のサイバトロンがそこここに横たわっている。

「ああ、ひどい有様だ」

そう言うプロールも右腕を失っている。

「進むぞ!もうすこしだ!」

コンボイの声に前進が再開される。

「・・・・・」

「どうした?グリムロック」

「オレ、グリムロックなんか変だ、と思う」

「なにが?」

「オレ、グリムロック・・・よくわからない」

「なにいってるんだグリムロック、おまえらしくもない!頼むぜ、戦士のあんたがそんなんじゃ・・・」

「それだ!オレが心配なほどなのに、コンボイ、心配しない・・・」

「一大事だからな、ベクターシグマが狂うなんて」

「・・・コンボイ、振り返りもしない」

前進して行くコンボイの背中が小さくなってゆく。

 

 

●シーンQ

 

疾走するサイバトロン。

ホットロディマス、チャー、アーシー、スプラング、ロードロケットら。

アイアコン・オートベースに到着する。

トランスフォームする一同。

入り口には防衛用のシャッターが下り、硬く閉ざされている。

 

「いったい何が起こってるというんじゃ?」

「わからない。だが間違いなく、非常事態だ」

「おーい!だれかおらんのか!」

「いるようには見えねえな、とっつあん?」

「ロックされているでござる」

「しかたない。ぶちやぶるか」

 

スプラングとロードロケットがブレードを叩きつける。

しかし破壊には至らない。

二度三度と斬撃を加えるが・・・

 

「かあ!びくともしやがらねえ!」

「どいてろ二人とも!」

ロディマスのエキゾーストショットが発射される。

チャー、アーシー他、一斉に砲撃を加える。

轟音を上げてようやく破壊される。

「やれやれじゃな」

「いくぞ!」

 

 

●シーンR

 

コンボイ司令官指揮するサイバトロンの軍勢は多大なる被害を出しながらも、ついに聖地・ベクターシグマの間に到達した。

ドーム上の空間の中央に神々しい光りを放つほとんど球形に近い多面体が浮遊している。

ベクターシグマの本体だ。

「おお・・・」

期せずして感嘆の声が上がる。

彼らサイバトロン・・・いや全トランスフォーマーにとって神とも言うべき存在が、今、彼らの目の前に在るのだ。

 

ウルトラマグナスが一同を制する。

「皆、武器を下ろせ。ここに防衛設備はない」

ゆるゆると武器を置く面々。

惑星の中枢にしてセントラルサーキットコアの座するこの場所はいわば神の神経中枢。

この場での戦闘はまさに自らの脳髄を危険にさらすことに等しい。

神はむき出しの脳髄をさらしているのである。

彼らはそこにまで至った。

 

誰もが神を前に戸惑いを隠せずにいる。

それは無理からぬことで、ウルトラマグナスとてその例外ではない。

「司令官、本当に彼を、ベクターシグマを破壊するのですか?」

「・・・・・」

恐る恐る問うウルトラマグナス。

「破壊に前にまだとるべき道があるのでは?あるいは修復の方法が・・・」

「・・・そうだなマグナス。先に済ませるべきことがあった・・・」

胸をなでおろす一同。

コンボイはゆっくり振り返る。

「おまえたちの始末だ!」

 

 

 

  〜to be continued〜

                     

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<DARKSIDE SAGA>
 ●ACT.4 『GENOCIDER!!』