<破滅的に戦いが加速した世界>
トランスフォーマー クライシスウォー
昔のセイバートロンって星は銀河で最も美しく平和な惑星だったという話だ。光り輝く都市に溢れるエネルギー。美しくボディを飾ったロボットたちが喜びの歌を歌い、永遠の生命に感謝の踊りをささげていた。・・・話ってだけで、それが真実かどうかなんて、てんでわかりゃしない。少なくとも、俺が生まれてからこっち、そんなものにはお目にかかったことないな。数百万年なんて、数えるのもアホらしいほど昔の話なんて、実際・・・誰も信じちゃいないのかも知れねえ。それでも今の戦いの世界が、あるべき世界の姿だなんて思いたくはない。破滅を回避する術を何時の世にも求める者たちがいる。それは希望。・・・希望を信じられなくなったら、いよいよお仕舞いってワケさ。
おれたちは希望・・・それを教えた彼こそはおれたちの希望・・・ああ、コンボイ司令官・・・あなたの希望はおれたちの希望・・・
動体センサーが接近する熱源を捉えた。ひとつではない。広域フェイズに切り替えれば、無数といってひとまとめにしてもいいが・・・317と1体・・・318体とカウントできる。
このエネルギーパターンは奴らだ。
ひときわ大きいシグネチャーはもちろん、奴だ。
手持ちの火器は二挺のエネルギーブラスターだが、予備弾倉は二パック・・・。ミサイルポットの残弾数は右肩の50でラスト。・・・318体とやりあうにはお粗末過ぎるというわけだ。
言ってる間に周囲を取り囲む連中の光る目がオプティクセンサーで視認できるところまで来ている。
こいつは参ったね。追い詰められた。
ゲイザードローンどもは俺の周りを見る間に埋め尽くした。
完全に包囲した、というわけだ。
ドローンどもが道を開け、奴が現れた。
冷徹な視線が俺を捉える。
最近はそう名乗ってやがるのさ、エムの野郎は。
「降伏するかね、ブレイク?」
「馬鹿いっちゃいけないぜ。あんたの奴隷になるくらいなら、デストロンのほうがマシなくらいさ」
「無駄に感情的な意見だな」
「今のあんたを見て、司令官はどう思うかな?・・・コンボイ司令官の言葉を忘れたのか?自由意志こそがすべての生命に与えられた権利だと!」
「自由意志か・・・美しい言葉だ。しかし、そのようなものが戦いを生み出す元凶なのだ。善意も悪意も本質は同じ、無軌道な自由意志だ」
「あんた狂ってるぜ」
「狂っているのはこの世界だ。戦って、戦って、なお戦う。破滅を前にしても止まることのできない暴走列車だ。だが、私が立て直す」
「貴様が?」
「コンボイでさえ、この真理にたどり着くことが出来ず、飽くなき戦いに終始したではないか。崇高な理想を拠所に戦いを続け、その結果はどうだ?一時の平和さえ得ることが出来ないではないか!」
「それは・・・」
「単一の意思により、世界は安寧を得る。このことを理解できないのなら、やはり私の考えは正しいのだ。ゆるぎない単一の意思!」
「それが貴様だと?」
「他に誰がいる?この真理を理解したのが私一人だというのに。私はリバースコンボイ。世界を再生する者だ!」
「そいつはただのエゴだ!セイバートロンを征服したいメガトロンと同じだ」
「ブレイクよ。話は終わりだ。悲しいかな、貴様もまた真理に達することのないものであった・・・」
リバースコンボイが銃口をオレにセットする。
「オレを黙らせたところで戦いは終わらんぜ」
「一つ一つ潰していくさ。サイバトロンも。もちろんデストロンも」
「さしあたり・・・黙って潰されてやる気はねえよ!」
オレはエネルギーブラスターを地面に向けたままトリガーを引いた。
爆煙と粉塵が舞い上がる。
「ぬっ!?」
煙に紛れ、すばやく身をかわし、エネルギーパックを交換する。
目標を見失ったドローンどもが右往左往する。
「おのれブレイク!」
リバースコンボイの怒声が響く。
・・・勝機はある。
絶望するにはまだ早い。
要するにリバースコンボイを倒しゃいいんだ。
頭を潰しゃあ、ドローンどもは皆コントロールを失って無力化する。
ただ、たった一人でこいつを相手にするってのはいかにも厳しい・・・が、それでも諦めねえ。
自分を信じる。
希望を信じられなくなったら、いよいよお仕舞いってワケさ。
おれたちは希望・・・それを教えた彼こそはおれたちの希望・・・
ああ、アサルトコンボイ・・・
あなたの希望はおれたちの希望・・・
Fin。