DoNoR
ブランド アハン声 ちゅぱ音 運命
rouge 有り

忘れないで私の事を……、既視感溢れるサウンドノベル。

いつ果てるともしれない定期的左クリックの世界が、
こうして終わる日を迎えた訳ですが、
終わった瞬間に思わずつぶやいた俺の一言は、
このゲームをプレイされた皆さんのプレイ後感と、どれほどの差があるのでしょうか、
即ち、「やっと終わった」と。
書き込まれたテキストの割に、プレイ後は爽快感より開放感の方が大きいこのゲーム、
それは何故かを考える前に、ストーリーの簡単な解説から始めましょう。
というか、開放感の理由なんて長過ぎの一言で終わってしまうから。

護衛の依頼を受けた男探偵の物語と、
姉の行方を探す女探偵の物語、
この二つの物語を主軸にしてゲームは進んでいきます、EVE!?とか焦らないように。
男探偵の物語を見ないことには女探偵の物語には進めないから、どっちかと言うとDESIRE
いや、主軸になる物語は一つでも、
その物語は必ずしも探偵の視点で描かれたものではなく、
様々な登場人物の視点から、少しづつ時間軸を移動させて描かれているので、
現代ミステリー小説の構成という方が、しっくりくると思います。

視点変更の対象になるような、名前のある登場人物達は全員が伏線を貼られています。
そんなものテキスト読ませるゲームなら当然なんですが、
この伏線の内容は、全て、異性や親子や友情等の愛に繋がっており、
そう、愛という大義名分の元に個々の正義が存在しており、
正義と正義がぶつかり合う、勧善懲悪では済まされない人間模様が繰り広げられます、
これがポイント。
視点変更によって、今まで追う立場だったテキストが追われる立場になるのは日常茶飯事、
更には正義がぶつかり合うことから、追う側が追われる側になるのも当然の流れ。
そんな常に緊迫した、いつ誰が死ぬかもわからない状況のテキストがあり、
しかも、どんな悪人っぽい奴でも実は愛を抱えた善人というキャラ立てをしてることで、
お前の愛はこれまでかー!?と呟くような、
うれしはずかしシナリオへの没入感が味わえます。

個々が抱える愛の描写もさることながら、とにかくストーリーのロジックの立て方が見事、
頻繁に視点変更することで、一つ一つの行動に理由付けがなされており、
偶然という名のご都合主義を、出来る限り排除した姿勢が窺えます。
しかも、視点変更の為にプレイヤー側からしたらわかりきった伏線、
例えば、誰と彼が実は友人だったというような伏線を持ってきても、
凡百のストーリーなら一つの山場を作って、わかってるプレーヤーをうんざりさせるところ、
このゲームはそんなところに一々山場を作ったりしません。
予定調和という名の必要悪を切り捨てるテキストには好感度アップ、
というかこれ以上テキスト長くするのに危機感を持っただけかもしれませんが。

ただ一つ気になるご都合主義は、
名前のある全ての登場人物が何らかの天才性を持ってること。
カリスマがあったりの射撃が上手かったりの特殊技能は、
それに関してエピソードの一つでも書いてくれれば納得するものの、
ただ状況説明だけのキャラ立てでは、
今までの見事なストーリー構成とのギャップを感じざるをえません。
というかこれ以上テキスト長くするのに危機感持っただけかもしれませんが。

そう、これでもまだ足りないかのようにとんでもなく長いテキストは、
プレイ時間最低20時間はかかるんじゃないでしょうか。
このゲーム、ゲーム性は欠片も無く、
フラグ分岐を考えた上でのゲーム時間ならわかりますが、
選択肢すら無い、ただ読むだけゲームなのに20時間強です。
俺は途中から音声をカットしたんで、全部聞いたら30時間はいくんじゃないでしょうか。

ゲーム性が無いことを悪く言うつもりはございません、
ここまでの頻繁な視点変更は、紙のメディアじゃ物理的に不可能でしょうから、
サウンドノベル形式じゃないと出来ないストーリーと言っても差し支えないかと。
でもトータルプレイ時間にゃ一言言わせてください、いくらなんでも長過ぎるでしょ。
広げた風呂敷の面積を計算するのも忘れないで欲しい、
もっと言えば、さっきと矛盾しますが、
愛を抱えてようが悪人はとっとと死んで伏線の一つ二つ潰してれば、
ゲーム後にあるはずの爽快感がダルさに変わることなぞ無かったんでは。
DESIREタイプの基本構成なんで
片方のストーリーを終えて、その片方がまた登場するのはしばらく後になりますが、
しばらく後とは10時間後、
当然語られたテキストを反復するよな野暮な真似をしないテキストとは前述の通り、
そんな中で、誰がストーリーを忘れた俺を責めることができるでしょう。

ストーリー中の愛に溢れる描写とは裏腹に、とにかく愛が少ないエロシーン、
一回和姦を見たら次の和姦は七時間後なんてざら、
つーか本当に和姦と言えるシーンは、俺から見て二つしかありません。
まあどちらもCGが少なくエロ度は薄いんで、
和姦で抜きたい人は別のゲームを買うべきでしょう。

それで凌辱の方はというと、
中身以前の問題として、このゲームがサウンドノベルということが上げられます。
CGの上にテキストを重ねる仕様は、
CGを楽しむにもテキストを楽しむにもどっちつかずな印象があり、
俺の場合はノベルタイプというだけでマイナスなんですが。
個人的な趣味は置いといて中身を見てみますと、
まさに凌辱、愛あるテキストを書ける人なら愛の無いSEXも書けるということでしょうか、
イヤでも感じる女性の描写を、きっちりネットリ書いてます。
しかし、テキストの実力があるからこそあんまりにも「凌辱」に捕らわれすぎたか、
多人数の男対一人の女と、エロのパターンが決まってしまってます。
これには参った、なんせ全部の穴が埋まるよなプレイしかしないんで、
喘ぎ声のほとんどが「モゴモゴングングチュパンフー」な感じ、
ちゅぱ音ラブな俺でも、こんなんばっかじゃ熱も入らないわけで、
いい加減和姦が恋しくなります。

過去に褒めたエロゲーのテキストが、
所詮エロゲーの範囲だろ、と見くびって褒めてた部分があるのに対し、
このゲーム、普通に読むだけでも充分面白い、とはっきり言えます、
勿論俺のサスペンス好きという嗜好もプラスしてですが。
ただ、じっくり一日使ってテキストを読むのはあまりに長い、
幾日かに分けて楽しむのが正解でしょうけど、
そういった軽く楽しむ感覚は、基本的にエロを楽しむ人向けの感覚であり、
エロゲーにテキストを重視する人には向かないのかもしれません。
いや、テキスト長いと言っても、
その実「アメリカ同時多発テロ」+「EVE BURST ERROR」+「オチ」なんですが、
引き合いに出した例のメーカーがこのゲームを出したら、
きっと前編中編後編外伝ファンディスクぐらいに分けてユーザーに嫌われるだろうと思うと、
例え長過ぎようが、この形で出すのが正解なのかもしれませんね。

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