演奏会だより
赤ちゃん同窓会でのミニコンサート
2002年5月11日(土)
私達の職場の産婦人科病棟は、年に2回「赤ちゃん同窓会」という催しを行っています。この半年に出生した赤ちゃん達の同窓会ということなのですが、一緒にお産を乗り越えたお母さんたちが赤ちゃんを連れて集まり、久しぶりに顔を合わせて語り合う会です。毎回70〜90組の方が参加され、お産の時の思い出を語ったり、あるいは現在の子育てについて悩みを相談し合ったりしています。
スタッフとして産婦人科医の他、栄養士、保育師、看護師、助産師、薬剤師、小児科医、歯科医も参加して皆さんと交流します。とね弦楽四重奏団のメンバーの一部も、スタッフとして毎回この行事に参加していますが、最近はマンネリ化してきているので何か新しいことをやってみようという意見が出されていました。そんな中で、「ミニコンサートを開いてはどうか」という案が持ち上がり、私達が演奏することになったのです。
まずは曲の選定から始まりました。参加している赤ちゃん自身は一番大きくても10ヶ月児ですから、その子がコンサートを楽しむというのは無理かもしれません。むしろ、日頃は子育てに追われて演奏会に足を運ぶことが出来ないお母さん方を対象に、息抜きができるような曲を演奏してはどうかということになりました。それと同時に、赤ちゃんの兄弟(2〜3歳の幼児が多い)も参加していますので、その子達も一緒に楽しめる曲を選ぶこととしました。
そんなわけでクラシック曲はあえて取りあげず、アニメなど子供が楽しめる曲を選定しました。また、あまり長いコンサートになっても退屈するだろうと5曲に絞りました。
プログラム
・ドラえもんの唄
・シューベルトの子守唄
・エーデル・ワイス
・となりのトトロのテーマ
・It's a small world(アンコール)
当日は午前中に何とか仕事を終わらせて会場へ。すでにたくさんの赤ちゃんが集まっており、ちょうど月齢別に記念撮影をしているところでした。メンバーは別室にてチューニングと簡単な指慣らしをしていましたが、そのうち「お願いしま〜す」の声がかかりました。演奏する場所は、施設の玄関脇のホールです。「同窓会を行っている広間でやってはどうか」、との意見もありましたが、演奏を聴きたくない人もいるだろうし、強制的にコンサートを開くより、聴きたい人だけホールに出てきてもらい、また途中で退屈した人は適当に抜けられるようにしました。子供や赤ちゃんを伴った行事の場合、これは大切なことだと思います。子供は最初は楽しそうに聴いていても、5分もすると飽きてしまったり、あるいは赤ちゃんが急にむずがることもあります。
ホールへは約40人位の人が集まりました。まず一曲目、「ドラえもんの唄」です。冒頭のオルガンのような和音の後、テーマが始まると子供たちは手拍子を始めました。ところが、「おっ、楽しんでいるな!」と思ったのは束の間でした。最前列に座っていた幼児たち数人が、突然立ち上がり踊りだしたのです。ぐるぐると回転しながら踊る子供たちは、そのうちにチェロへと向かい、今にも弓が触れる距離まで接近しました。チェロの大塚は弓で子供を刺してしまいそうになり、途中で弾けなくなりました。そしてついに、、、弓が子供に当たったのです。それでも何食わぬ顔をした幼児は「ドラえもんの唄」の間じゅう元気良く踊りつづけました。
ところが演奏が終わると、その子達は自分の場所へ戻り着席したのです。「そうか、ただふざけていたのではなく、音楽に合わせて踊っていたんだ!」と嬉しい気持ちになりました。とはいっても、演奏する側としては内心ヒヤヒヤものであったことは事実です。そんな時、周囲の大人は子供を叱ったり連れ出したりしがちですが、誰一人としてそうしなかったのは、もしかしたら子供たちがあまりにも生き生きと楽しそうにしていたからかもも知れません。お子さんをお持ちの読者の皆様はどう思われますか?
二曲目は「シューベルトの子守歌」です。当初は静かなメロディーでお母さん達にくつろいでもらおうと思っていたのですが、曲が始まると今度は幼児たちが歌い始めました。まだ2歳くらいですので、子守歌を本当に歌っているわけでは全くないのですが、必死に何かを口づさんでいるのです。「これも楽しさの表現かな?」と勝手に解釈しました。
三曲目は「エーデルワイス」です。これは何故か大きなハプニングもなく無難に終わりました。続いて「千と千尋の神隠しのテーマ」でしたが、またもや子供達の踊りが再開、こちらも嬉しさ半分、ヒヤヒヤ半分の気持ちで演奏しました。しかし、どうも子供に気を取られて曲に入り込めませんでした。
そして最後の曲、「となりのトトロ」です。この時には幼児の踊りはピークに達し、前後左右と勢いよく踊り回り、会場はすさまじいものとなりました。それでも曲が終わると自分の席に戻るのには驚きました。次いでアンコールに答え「イッツ・ア・スモール・ワールド」を演奏しましたが、どこからともなく手拍子が沸き、先ほどの子供たちも手をたたく中、楽しく終了しました。
演奏会としてはとても異様な雰囲気で、私達もビックリした部分もありましたが、「やはりあの子達は楽しんでいたのかな?」と思うと嬉しくもありました。また同窓会終了後のアンケートでは「楽しかった」という意見も多数いただきホッとしました。。これまで医療施設を中心とした活動を続けている当団のメンバーは、普通の演奏会では味わえない貴重な経験をすることが少なくありません。しかし、今日のミニコンサートはこれまでになく印象的で、生涯忘れられない思い出となりました。




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