追加2003/3/6 e^xに関する公式の発見 その2
さらにいくつかの新しい式を見出しました。公式1をまず冒頭に書いておくことにします。
(「その1」とは項を移項していますが、同じことです。)
この公式の証明を少しひねると、次のような公式が成り立つことに気づきました。
いま∫∫を∫^2、∫∫∫を∫^3などと書くと約束すると、
このような面白い公式が成り立つのです。
証明は、公式1の証明を参考にすればすぐにわかると思います。簡単ですので考えてみてください。
さて公式1−2で、f(x)=sinxとおくと、
sinx=(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)(sinx+cosx) ------@
というきれいな式が成り立ちます。
この@の両辺を微分すると、「その1」の定理1−2を用いて、
cosx=(1-∫+∫^2-∫^3+∫^4-・・)(sinx+cosx) ------A
となります。
このAはじつは@と本質的に同一のものとなっています(すぐわかると思います)。
「その1」では言及しませんでしたが、公式1で、f(x)=sinxとおくことで、
sinx=(∫+∫^2+∫^3+∫^4+∫^5+・・)(−sinx+cosx) ------B
という式も出ます。
@+Bから、
(1+∫^2+∫^4+・・・)sinx=(∫+∫^3+∫^5+・・・)cosx ------C
となります。
Cの両辺を微分すると、「その1」の定理1−2を用いて、
cosx+(∫+∫^3+∫^5+・・・)sinx=(1+∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx -----D
がわかります。
Dをさらに整理すると、
(∫+∫^3+∫^5+・・・)sinx=(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx ------D′
となります。
C+D′を計算して、
(1+∫+∫^2+∫^3+・・・)sinx=(∫+∫^2+∫^3+∫^4+・・・)cosx ------E
という美しい式が出ました。
じつはEに関しては(@〜D′もそうですが)、このような大そうな導き方をしなくても、じつはこれが成り立つのは
当たり前なのですが、なぜ当たり前か考えてみてください。眺めているだけで気づく方もおられると思います。
∫+∫^2+∫^3+・・・=Λとおくと、Eは、つぎのように簡潔に表現することもできます。
(1+Λ)sinx=Λcosx
次に公式1−2で、f(x)=cosxとおくと、
cosx=e^-x+(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)(cosx−sinx) ------F
また、公式1でf(x)=cosxとおくと、
cosx=e^x+(∫+∫^2+∫^3+∫^4+∫^5+・・・)(−sinx−cosx) -------G
F+Gを計算して、
2cosx=e^x+e^-x+(∫+∫^3+∫^5-・・・)(-2sinx)+(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)(-2cosx)
両辺2で割って整理すると、
(∫+∫^3+∫^5+・・・)sinx+(1+∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx=coshx -------H
となります。
また、G−Fとして、同様に計算していくと、
(∫+∫^3+∫^5+・・・)cosx+(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)sinx=sinhx -------I
となります。
このような美しい関係が成り立つのです。
なおHとIを足すと、「その1」で導いたe^x=cosx+Λ(cosx+sinx)が導かれるのですから面白いことです。
確認してみてください。
sinhxとcoshxは、もちろん、双曲線関数sinhx=(e^x−e^-x)/2やcoshx=(e^x+e^-x)/2のことで、ハイパボリック
サイン、ハイパボリックコサインと読みます。
さらに、別の形に変形できることに気づきました。HとIを変形します。
まずIの変形を行います。Cより、
(∫+∫^3+∫^5+・・・)cosx=sinx+(∫^2+∫^4+・・・)sinx
となりますから、これをIに代入して、
sinx+(∫^2+∫^4+・・・)sinx+(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)sinx=sinhx
すなわち、
sinx+2(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)sinx=sinhx -------J
となります。”サイン”で統一されていて美しいことです。
Jの両辺を微分すると、「その1」の定理1−2を用いて、
cosx+2(∫+∫^3+∫^5+・・・)sinx=coshx -------K
と出ます。
このK式の両辺をさらに微分したらどうなるでしょうか?Jに戻ってしまいます。簡単ですのでご確認ください。
次にHの変形を考えてみましょう。 D′は、
(∫+∫^3+∫^5+・・・)sinx=(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx
ですので、これをHに代入して、
(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx+(1+∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx=coshx
よって、
cosx+2(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx=coshx -------L
と表現できます。これも”コサイン”で統一されていて美しい。
Lの両辺を微分すると、「その1」の定理1−2を用いて、
−sinx+2(∫+∫^3+∫^5+・・・)cosx=sinhx
この式をさらに微分すると、やはりLに戻ってしまいます。
上で導いた一連の式を公式としてまとめておきます。
Yさんが、sin(ix)=isinhx、cos(ix)=coshxという関係があることを教えてくださいました。
iはもちろん、虚数単位のiです。
とすると・・・・、上の公式(3)、(4)は、つぎのように表せることに気づきます。
cosx+2(∫^2+∫^4+∫^6+・・・)cosx=cos(ix)
これは、ほんとうの意味でサインはサイン、コサインはコサインで表示されていて、きれいな表示と思いますので、
これも公式として入れておきます。
Yさん、ご教示ありがとうございます。
昨日から、(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)e^xはどんな関数になるのかしら?と考えていました。
またそれを一歩進めて、g(x)を一般の関数とすると、(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)g(x)を簡単に求める便利な方法はない
ものかと考えていたところ、面白い手法を見つけました。
(以下、∫∫は∫^2、∫∫∫は∫^3などと略します。全ての∫の積分範囲は0〜xです。)
例えば、(∫+∫^2+∫^3+・・・)e^x
や(∫+∫^2+∫^3+・・・)x
や(∫+∫^2+∫^3+・・・)x^2・e^(-x)
や(∫+∫^2+∫^3+・・・)(x^2−3x+5)
や(∫+∫^2+∫^3+・・・)(cosx+sinx)
などは、最終的にどのような関数になるのかその正体はなかなかわかりませんね?
たとえば、
(∫+∫^2+∫^3+・・・)x^2・e^(-x)=∫x^2・e^(-x)+∫∫x^2・e^(-x)+∫∫∫x^2・e^(-x)+・・・
ですから、この右辺を延々計算していくというのはいかにも大変です。(注意:∫ydxのdxはすべて省略しています)
ところが、あっさりと求める手法があるのです。
まず一般的な場合を述べます。いま(∫+∫^2+∫^3+・・・)g(x)を求めたいとします。
f′(x)−f(x)=g(x) -----------@
という微分方程式を考えます。
@は、1回微分したものからそれ自身を引いたらg(x)になるような関数f(x)についての微分方程式です。
いま(∫+∫^2+∫^3+・・・)g(x)を求めるわけですから、@より、(∫+∫^2+∫^3+・・・){f′(x)−f(x)}を求める
ことと同じになります。
さて、f(x)は無限級数展開したとき収束半径が r となる関数であるとすると、このページ冒頭の公式1より、
f(x)=f(0)・e^x+(∫+∫^2+∫^3+・・・){f′(x)−f(x)} ---------A
が成り立ちます。
よって、(∫+∫^2+∫^3+・・・){f′(x)−f(x)}を求めることは、結局、Aより、f(x)−f(0)・e^x を求めることに帰着
されてしまいます。
あとは、f(x)という関数の正体さえ分かればいいわけですが、そのf(x)は@の微分方程式を解けばわかるわけです!
じつに簡単でしょう?なにかマジックを見ているような気がしますが、実際正しいのです。
例えば具体的に、(∫+∫^2+∫^3+・・・)e^xを上の手法で求めてみましょう。
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[解法]
いま、g(x)=e^xとしていますから、@の微分方程式に相当するものは、
f′(x)−f(x)=e^x --------B
となります。
f(x)=yとして、微分方程式らしく書き換えると、
dy/dx−y=e^x ---------C
となりますが、同じことです。
BまたはCの微分方程式を解くのは簡単です。この手の定数係数の微分方程式は解き方がパターン化されています。
まず右辺0の
dy/dx−y=0
の微分方程式を考え、その一般解は、
y=C・e^x
となります。Cは定数です。
さて、Cの特解(特殊解)を求めるために、定数CをC(x)と関数とみることにしましょう。
つまり、 y=C(x)・e^x ---------D
とおき、これをCに代入して計算すると、簡単な計算より、
C′(x)=1
となります。よって、C(x)=x+C (Cは定数です)
これをDに代入して、
y=(x+C)・e^x=C・e^x+x・e^x (Cは定数)
となり、これが、CすなわちBの微分方程式の一般解です。
さて、晴れてf(x)=C・e^x+x・e^xと求まりましたので、あとは、f(x)−f(0)・e^x を求めればよいわけです。f(0)=Cより、
f(x)−f(0)・e^x=C・e^x+x・e^x−C・e^x
=x・e^x
となり、(∫+∫^2+∫^3+・・・)e^xの正体は、x・e^x とわかりました。
(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)e^x=x・e^x ------E
ということが、初等的な微分方程式を解くだけであっさりとわかってしまうのですから、ふしぎです。
Eは美しいですね。ほんとうかなあと心配な人は∫e^x+∫∫e^x+∫∫∫e^x+・・・などと計算(検算)して
みてください(全ての∫の積分範囲は0〜x)。ちゃんとEが成立していることに驚かれることでしょう。
以上。
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いま述べたことを定理としてまとめますと次のようになります。
また上であげた(∫+∫^2+∫^3+・・・)x、(∫+∫^2+∫^3+・・・)x^2・e^(-x)、(∫+∫^2+∫^3+・・・)(x^2−3x+5)、
(∫+∫^2+∫^3+・・・)(cosx+sinx)などももちろん上の手法で簡単に求めることができます。
答えだけ書いておきます。みなさんも計算してみてください。
(∫+∫^2+∫^3+・・・)x=-x−1+e^x
(∫+∫^2+∫^3+・・・)x^2・e^(-x)=e^(-x)・(-x^2/2−x/2−1/4)+e^x/4
(∫+∫^2+∫^3+・・・)(x^2−3x+5)=-x^2+x−4+4e^x
(∫+∫^2+∫^3+・・・)(cosx+sinx)=e^x−cosx
以上。
一つ上で述べたことを、拡張しましょう。
冒頭の公式1−2上を使えば、上との類似から、(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)g(x)も簡単に求まることが分かり
ます。まず公式1−2をここで書いておきます。
上記「追加3/13」との類似から、公式1−2を見ることで、
例えば、「(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)e^xの正体は何か?」という問題も、
1階微分方程式f′(x)+f(x)=e^xを解き、その特解f(x)を用いて、f(x)−f(0)・e^(-x)を計算すればよい。
という単純な問題に還元されてしまうことが分かるでしょう。
定理としてまとめると、次のようになります。
では、実際には、(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5+・・・)e^xの正体はいったいなんなのでしょうか?
途中の計算は省きますが(簡単ですのでやってみてください)、その正体はなんとsinhxになってしまいました。
すなわち、
(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)e^x=sinhx
です。
また(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5+・・・)e^(-x)を計算すると、
(∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)e^(-x)=x・e^(-x)
となります。
また、「その1」で、sinhx=Λ(e^-x)
つまり、 sinhx=(∫+∫^2+∫^3+・・・)(e^-x) -------@
を導き出したことも覚えておきましょう。
一つ上の「追加2003/3/13」分の結果と@とを合わせて、ここで導いた式を公式としてまとめておきます。
これまでの類似の方法を用いると、∫^2+∫^4+∫^6+∫^8+・・や∫^3+∫^6+∫^9+∫^12+・・の場合にも容易に拡張で
きます。結論だけ書きます。
これから、「(∫^2+∫^4+∫^6+∫^8+・・・)g(x)の正体は何か?」という問題も、
2階微分方程式f´´(x)-f(x)=g(x)を解き、その特解f(x)を用いて、f(x)−f(0)・P(x)-f′(0)・∫P(x)dxを
計算すればよい。
という問題に還元されることになります。
さらにかなり複雑な計算になりますが(難しくはありません)、同様に類似の手法を用いて∫^3+∫^6+∫^9+∫^12+・・・
の場合に拡張すると、次のようになります。
これから、「(∫^3+∫^6+∫^9+∫^12+・・・)g(x)の正体は何か?」という問題も、
3階微分方程式f´´´(x)-f(x)=g(x)を解き、その特解f(x)を用いて、
f(x)−f(0)・P(x)-f′(0)・∫P(x)dx−f´´(0)・∫∫P(x)dxdxを計算すればよい。
という問題に帰着されることになります。
P(x)をどうやって求めるか?ということも問題になるわけですが、じつは、P(x)を求めるときもまた別の形の微分方程
式を解くことに帰着されます。どのように求めるか考えてみてください。
これまでの流れから、(∫^4+∫^8+∫^12++・・・)などの場合も、
f(x)=f(0)・P(x)+f′(0)・∫P(x)dx+f´´(0)・∫∫P(x)dxdx+f´´´(0)・∫∫∫P(x)dxdxdx
+(∫^4+∫^8+∫^12+・・・){f´´´´(x)-f(x)}
と表現でき・・・、さらに高次元の場合の一般化も容易にできるでしょう。高次元になるほどP(x)を求めることはややこ
しくなり(難しくないのですが)、時間がかかることになります。
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微分方程式と無限演算子との関連をもう少し雑多な形で見てみましょう。
まず、これまで導いたいくつかの公式を並べます。
f(x)=f(0)・e^x+(∫+∫^2+∫^3+・・){f′(x)−f(x)} --------@
f(x)=f(0)・(e^x+e^(-x))/2+f′(0)・(e^x-e^(-x))/2+(∫^2+∫^4+∫^6+∫^8+・・・){f´´(x)-f(x)} --A
また、つぎのような式も成り立ちます(導き方を考えてみてください)。
f´(x)=f´(0)・e^x+(∫+∫^2+∫^3+・・){f´´(x)−f´(x)} --------B
また例えば、
@+A×2を計算して、
3f(x)=f(0)・(2e^x+e^(-x))+f´(0)・(e^x-e^(-x))
+(∫+3∫^2+∫^3+3∫^4+∫^5+3∫^6・・){2f´´(x)+f´(x)−3f(x)}
となるので、(∫+3∫^2+∫^3+3∫^4+∫^5+3∫^6・・)G(x)は、微分方程式 2f´´(x)+f´(x)−3f(x)=G(x)に関連づける
ことができます。
このようにして様々な形の無限演算子をいろいろな微分方程式に対応させることができるのです。面白いもの
です。
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このようにいろいろと眺めてきて感ずることですが、
(∫+∫^2+∫^3+・・・)やら (∫-∫^2+∫^3-∫^4+∫^5-・・・)やら (∫^2+∫^4+∫^6+∫^8+・・・)また
すぐ上で出した(∫+3∫^2+∫^3+3∫^4+∫^5+3∫^6・・)など・・・・を眺めていると、積分演算子の級数とでも呼びたくなる
ような気がしてきませんか?
私には上が (x+x^2+x^3+・・・)やら (x-x^2+x^3-x^4+x^5-・・・)やら (x^2+x^4+x^6+x^8+・・・)また
(x+3x^2+x^3+3x^4+x^5+3x^6・・)と同じように見えて仕方がないのですが。
演算子というものにも、数と同じような級数的な世界が広がっているのかもしれません。
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