2003/1/12開設
予想2はねこまさんとYaさんのお二人によって独立に解かれました。なんと、予想2には反例があり正しくないという結
論になりました。一番下に解答を載せています。
ゼータ関数を調べていて、面白い事実を発見しましたので、これも予想として提示します。
ゼータ関数とは、つぎのようなものです。
ζ(s)=1+1/2^s+1/3^s+1/4^s+1/5^s+・・・・・
ゼータ関数は重要なもので、現代数学での要の位置をしめているともいえ、世界中で研究されています。
詳しくは述べられませんが、sが2, 4, 6・・・など偶数のときのζ(s)の値はわかっているのに、奇数のときのζ(s)の値は
ほとんどわかっていないなど、まだまだ謎に包まれている関数です。詳しくは、市販の数学書をご参照ください。
さて、その偶数のときの値を調べていて、ある奇妙な規則性を見出しました。
まず、各sでのゼータ関数の値を列挙します(πの累乗にかかる数字の分母、分子を素因数分解したものが最右辺です)。
ζ(2)=1+1/2^2+1/3^2+・・・=π^2・1/6=π^2・1/(2×3)
ζ(4)=1+1/2^4+1/3^4+・・・=π^4・1/90=π^4・1/(2×3^2×5)
ζ(6)=1+1/2^6+1/3^6+・・・=π^6・1/945=π^6・1/(3^3×5×7)
ζ(8)=1+1/2^8+1/3^8+・・・=π^8・1/9450=π^8・1/(2×3^3×5^2×7)
ζ(10)=1+1/2^10+1/3^10+・・・=π^10・1/93555=π^10・1/(3^5×5×7×11)
ζ(12)=1+1/2^12+1/3^12+・・・=π^12・691/638512875=π^12・691/(3^6×5^3×7^2×11×13)
ζ(14)=1+1/2^14+1/3^14+・・・=π^14・2/18243225=π^14・2/(3^6×5^2×7×11×13)
ζ(16)=1+1/2^16+1/3^16+・・・ = 略 =π^16・3617/(2×3^7×5^4×7^2×11×13×17)
ζ(18)=1+1/2^18+1/3^18+・・・ = 略 =π^18・43867/(3^9×5^3×7^3×11×13×17×19)
ζ(20)=1+1/2^20+1/3^20+・・・ = 略 =π^20・283×617/(3^9×5^4×7^2×11^2×13×17×19)
注意:上はζ(m)=(-1)^k・2^h・Bm・π^m/m!(ここで、k=m/2+1、h=m-1)を利用してベルヌイ数からもとめました。
以上、n=20まで調べました。
πの累乗にかかっている数字の分母と分子を素因数分解したものが、最右辺ですが、分母でのある規則性に
気付かれるでしょうか。
なんと、出現している素数は素数表上で連続しているものだけなのです!
例えば、ζ(10)の”1/3^5×5×7×11”の分母を見ると、3、5、7、11と素数が連続しています。
上のどれをみても、連続していないものはありません。つまり、3×5^2×11というような不連続なものはないということ
です。ふしぎなことですが、このような規則性をもっているようです。
以上の事実から、私は、次のような予想を提示しました。
注意:ζ(0)=”1+1+1+・・・”=-1/2ですがこれにはπが現れないですし、また素数が連続している複数性を強調したいので、0のゼータは
一応省きました。
ゼータ関数の本で、このような記述をみたことがないので、おそらくはじめての結果と思います。
ただし、もちろん、まだ予想であり、定理とするには証明しなければなりません。その証明は私の手に余ります。また反例
がある可能性もあります。
この予想は、予想1とも深いところで関係しあっているような気がします。
予想1でも示しましたが、じつは
m=2、4、6・・・・・・に対して
ζ(m)=(-1)^k・2^h・Bm・π^m/m!
ここで、k=m/2+1、h=m-1
という関係があり、ゼータ関数ζ()とベルヌイ数Bnは密接に関わっていますから関わりがあるのは当然なのですが。
(例えば、上式より、ζ(6)=2^5・B6/6!です)
ゼータ関数は、数学の中でも極めて重要なものですので、上の予想で提示した規則性をもっていてもまったく
ふしぎでないと思います。
解決へむけて、アマチュアの方、数学者を問わず、みなさんの積極的な参加をおねがいします!
知っておくと便利なサイト
次のようなサイトで素数表をみることができます。
さらに、n=28まで調べました。
ζ(22)=1+1/2^22+1/3^22+・・・=π^22・2×131×593/(3^10×5^4×7^3×11×13×17×19×23)
ζ(24)=1+1/2^24+1/3^24+・・・=π^24・103×2294797/(3^11×5^5×7^4×11^2×13^2×17×19×23)
ζ(26)=1+1/2^26+1/3^26+・・・=π^26・2×657931/(3^11×5^6×7^3×11^2×13×17×19×23)
ζ(28)=1+1/2^28+1/3^28+・・・=π^28・2×9349×362903/(3^14×5^7×7^3×11^2×13^2×17×19×23×29)
上の()の中をみてください。n=28まで予想2はきちんと成立していました。
例えば、ζ(24)では、分母の素数が3、5、7、11、13、17、19、23ときちんと連続しています。
なお最大素数23はn+1=25より小さくなっています(最大素数がn+1以下になるのは現代数学で知られているようです。
下の加藤和也さんの項参照)。
計算の感触から、予想は正しいような気がします。
それにしても、もしこの予想が正しいければ、ゼータ関数は恐ろしく美しい姿をうちに宿しているとみることはできないでしょ
うか。
みんさんも一度、手計算をやってみてください(例えばζ(6)=2^5・B6/6!として、B6を入れて計算する)。
計算中、ときどき「あれ連続性大丈夫かな?」とどきっとするような箇所がでてくるのですが、しかし、ゼータはなんとかぎり
ぎりのところで連続を保つようにしてくれているようです。
黒川信重さんらの言われるように、ゼータは調和の世界に生きているのかもしれません。
参考までに、2〜101までの素数を書いておきます。
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43
47 53 59 61 67 71 73 79 83 89 97 101
参考文献
「数学の夢」素数からのひろがり (黒川信重著、岩波書店)
「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)
京都大学教授で、数論幾何の権威である加藤和也さんの著書「解決!フェルマーの最終定理」(日本評論社)を
めくっていたら、上の予想2と同じようなことを言及している記述を見つけましたので、紹介します。
予想2は私が独立に見つけたものですが、クンマーもはるか昔私と同じところに、注目していたようです。
まずその記述をみてみましょう。
「解決!フェルマーの最終定理」p.10〜11
注意:赤線は杉岡が入れました。
はじめこれを見たときは、どきっとしました。
赤線のところは、ほとんど予想2と同じで、もう現代数学で完全に解明されているのか、と。
しかし、赤線のところをよく見ると、「r+1以下の素数のみ」と書かれているだけで、素数の連続性に関しては
何も言及がありません。また加藤さんの説明では、どちらかというと分子の方に重きをおかれているようです。
素数の連続性というのはきわめて興味深い事実なので、もし既に知られているならば本に書かれないことは
ないと思われますがいかがでしょうか。
以上より、予想2の後半部分の「その各素数の中で最大のものはn+1を超えないものとなる。」は現代数学で
すでに解決されているようなので、削除しました。また、ベルヌイ数での予想1−2もほとんど
同じことと思いましたのでその予想は外し、予想1−3を予想1−2と繰り上げました。
もし読者で、「連続性もすでに知られている」というような事実を知っておられたら、私にお知らせください。
その時は、素直に予想2は却下します。
追加2003/1/14 負のゼータ関数では、予想2は不成立
負のゼータ関数では、予想2はどうなっているのだろうか?と疑問に思い、調べてみましたが、こちらは
だめです。つぎのように、早々に破綻がでます。一応0も含めて、見てみます。
オイラーの見つけた ζ(1-m)=(-1)^(m-1)Bm/m (m=1, 2, 3, 4・・・・・)を利用します。
ζ(0)=”1+1+1+1+・・・”=-1/2
ζ(-1)=”1+2+3+4+・・・・・”=-1/12=-1/(2^2×3)
ζ(-3)=”1+8+27+64+・・・・・”=1/120=1/(2^3×3×5)
ζ(-5)=”1+32+243+1024+・・・・・”=-1/252=-1/(2^2×3^2×7)
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注意:B1以外の奇数のBmはすべて0なので負の偶数のゼータの値はすべて0になります。上では省きました。
上はふしぎとしか言いようのない式ですが、ゼータの世界ではこのような式がなりたつのです。詳しくは、数学書を
参照ください。正の偶数ゼータと違って、負のゼータではその値にπの累乗が現れないことも違っています。
正のゼータとこのような違いがあるとはいえ、その値の分母がどうなっているのか知りたくなり、素因数分解して
みたのですが、すぐに破綻が現れました。
上の赤文字のところです。素数の連続性は破れています(5が飛んでいる!)。
早々に不連続となってしまいました。
正の偶数ゼータで、連続性がどこまでも成り立つことの凄さをあらためて感じます。
なお正の偶数ゼータのことばかり申しており、正の奇数のゼータはどうなんだ?と思われるかもしれませんね。
これが、面白いことに奇数のゼータ値は、まだほとんどなにもわかっていないのです。
わずかにζ(3)が無理数であり、その値まで得られていますが、それ以外のことはなにもわかっていません。
つまり、
ζ(5)=1+1/2^5+1/3^5+・・・=?
ζ(7)=1+1/2^7+1/3^7+・・・=?
ζ(9)=1+1/2^9+1/3^9+・・・=?
・
・
と?がつづくのです!
これら級数の値が21世紀の現代でも全くわからないなんて、摩訶不思議なことですが、事実そうですから
しかたありません。
ζ(3)は、「無理数であること以外何もわかっていない」と一般によく言われますが、じつはそうではなく、
はるか昔オイラーがすでにその値までも求めていたことが、黒川信重さん(東京工業大学教授)の下記の
本で指摘されているのにはびっくりします(その値までものっている!)。
「数学の夢」素数からのひろがり (黒川信重著、岩波書店)
2003/1/16追加 予想2の解決
予想2は、ねこまさんとYaさんのお二人によって独立に解かれました。この予想2は反例があり正しくないという結論に
なりました。お二人に深く感謝致します。
ねこまさんの解答 予想2の反例
ζ(882)などというのは、気の遠くなるような数です。そんな遠くへいくと2個欠けるようなゼータも
現れるんですね。面白いです。
Yaさんの解答 予想2の反例
ほんとうに、数値実験をすると面白いことが見つかりますね。予想1の場合のベルヌイ数の
分母なども、摩訶不思議な性質をもっていましたし・・・
「円の数学」(小林昭七著、裳華房)に、歴史上もっとも有名な数学者ユークリッドの言葉が引用されて
いました。
「 ・・・ユークリッドについては2つの逸話が残っている。
プトレマイオスが「幾何を学ぶのに『原論』を読まずに済ます近道はないか」と尋ねたとき「幾何に王道は
ありません」と答えた。また、生徒の一人が最初の命題を習った後「こういうことを習うとどんな得があるの
でしょうか」と尋ねたので、ユークリッドは召使いに「この生徒は儲けるために勉強しているようだから3文
くれてやれ」と言った。」
註:色は杉岡がつけました。 最後の言葉は痛烈!
現代人もますますこの生徒のようになっている・・。役に立たないものこそ最も尊いのである!!
M.S. |